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プリシュティナ解放作戦-1

 4月1日 0100時 アドリア海


「発射10秒前・・・・・・・・・3、2、1、発射!」

 イギリス海軍潜水艦"アートフル"から次々とUGM-109Cトマホーク巡航ミサイルが発射された。標的はコソボ国内に建設されたセルビア軍の通信施設、駐屯地だ。巡航ミサイルは一旦海面から出て上昇した後、一旦降下してから海面スレスレ近くを飛行しながら標的へ向かった。このミサイルは、登場から既に40年以上が経っているが、誘導装置やターボファンエンジンのアップグレードを重ねながら、アメリカ海軍とイギリス海軍で運用が続けられている。


 イタリア海軍空母カブールから、8機のF-35Bが発艦した。兵装は、ウェポンベイの中のAMRAAMとJSMだけだ。JSMは対地・対艦攻撃両用のスタンドオフミサイルで、ミサイル自体がレーダーに捉えられにくい高いステルス性を持つため、場合によっては、敵が攻撃されたことに気づくのは、着弾し、重要施設が破壊された後だ。勿論、その頃には、F-35Bは飛び去ってしまっているため、後の祭りとなってしまうのだが。


 4月1日 0104時 アルバニア ティラナ・リナ空港


「始まったな。これから6時間が山場といったところか」

 イグリ・サビクが腕時計を見て言った。この攻撃が完了し、セルビア軍を完全にプリシュティナから追い払った後、コソボ共和国大統領ズロボダン・ストイコビッチが、コソボ治安軍部隊の兵士らと共に傭兵部隊のヘリに乗り、大統領府に乗り込むことになっている。勿論、セルビアによる報復攻撃に備えていない訳では無い。プリシュティナ周辺に駐屯しているセルビア軍への攻撃も行い、ロケット砲や砲撃、短距離弾道ミサイルによる攻撃を防ぐ作戦も、同時進行で行われるはずだ。

これから、傭兵部隊のトーネードECRが敵の防空網を破壊した後、イタリア海軍のF-35Bがプリシュティナ周辺に駐屯する敵部隊を殲滅し、地上部隊の突破口を開く予定だ。その後、上空援護のためにイギリス空軍、ポーランド空軍、傭兵部隊の戦闘機が続く。更に、セルビア領土からセルビア空軍機がコソボに侵入した場合、トマホークミサイルでバタイニツァ空軍基地を空爆する予定だ。そして、万が一、セルビアが再び化学兵器による攻撃を行った場合は、そのトマホークはベオグラードにも向けられることになる。


 "ウォーバーズ"と"サバー"の戦闘機が兵装の搭載と燃料の補給を受けている。彼らの今回の任務は制空権の確保のため、空対空ミサイルと増槽のみだ。空爆が完了し、プリシュティナを地上部隊が占領した後、敵の航空機による報復攻撃を防ぐのが彼らの役目だ。"ゴッドアイ"こと、スタンリー司令官らが乗るE-737ウェッジテイルも、今は地上で待機状態になっていた。

「下手したら、俺たちの出番は無いかも知れない。なにせ、正規軍部隊がやって来たからな」

 ミハイル・ケレンコフが相棒に話しかけた。"ウォーバーズ"の技術班が兵装の搭載をしているが、自分たちの目でチェックすることも忘れない。

「とは言え、化学兵器を使ったセルビアのことだ。次は焦土作戦に出ないとも限らない」

「だが・・・・そこまでやったら、次はベオグラードが空爆されるな」

「おーい」

 隣に駐機してあるミラージュ2000Cのチェックをしていたワン・シュウランがケレンコフに話しかけた。

「機体の調子はどうだ?」

「調べた限りは上々だ。上がったら頼むぜ」

「任せとけって。それより、どうだ?この前のボスの話。考えておいてくれたか?」

 ゴードン・スタンリーは、ケレンコフたちに"ウォーバーズ"に加わらないかと、提案していた。実際、これまでの作戦において、"ウォーバーズ"各機の僚機としての連携は、非常に上手くいっていた。

「うむ。だが、返事はこれが終わって、お互いに生きて帰ってからにしよう」

「だな。後ろは任せておいてくれ」

「ああ。頼んだぜ、相棒」


 佐藤勇はF-15Cの点検を、高橋正ら技術班の面々と共に続けていた。アクセスパネルを開いては閉じ、細かい部分まで徹底的に確認していく。

「いいぜ。後はエンジンを蒸かすだけだ。俺が保証してやる」

 高橋が佐藤に話しかける。

「ありがとよ」

「なあに、これでお前に死なれたりしたら、たまったもんじゃないからな。それに、万が一そうなったら、俺たち以上に最悪に悲しむ奴がいることだしな」

これには佐藤は無言で答えた。

「おいおい。そこは何とか言えよ」

「もう集中させてくれ。気が散る」

 佐藤はいつの間にかコックピットに座り、瞑想を始めていた。

「わかったよ。じゃあ、お前が殺されないようにしっかり援護しろと、コガワに言っとくぜ」


「大丈夫よ。何があっても隊長のことは守るから、任せておいて」

 レベッカ・クロンヘイムが原田景に話しかけている。

「うん。お願いするわ」

「隊長がいないと、困るのはみんな同じよ。ユウだけじゃない。私は誰も仲間を死なせる気は無いわ」

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