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最後通牒

 3月27日 0913時 セルビア ベオグラード


 NATOから特使として派遣されたイギリス大使と駐在武官であるイタリア海軍大佐が、大統領府の門の前に立った。約束の時間の15分前だ。彼らは、このメッセージを伝えた後、ベオグラード・ニコラ・テスラ空港からチャーター機で帰国することになっている。


 15分後、大使らは大統領の執務室に通された。ヴラディッツァ・プレルヴォヴィッチは、とても機嫌が悪そうな表情をしていた。

「大統領。我々政府は、貴国の行動をこれ以上座視するつもりはありません。貴国の攻撃は、欧州全体の平和を乱し、無関係の市民の犠牲を多数生んでいます」

 大使は封筒から、書類を何枚か取り出した。

「我々の要請は次の通りです。まずは、セルビア、コソボ、アルバニア、及び傭兵部隊による武力行使の即時停止。そして、第三国での停戦交渉です。すでに、南米、アジア、アフリカのいくつかの国が仲介役として名乗り出ています」

「なるほど。イギリスとイタリアは、我々が土地を取り返すことに反対なさる。そういうことですな」

「コソボは独立国です。大統領。コソボ政府はバルカン半島における、いち独立国の政府である、という我々の考えに変わりはありません」

 イタリア海軍大佐が口を挟む。

「ならば、我々の立場は何も変わらない。コソボは正当なセルビアの領土であり、独立国だなんてとんでもない。我々は、反逆者に奪われた土地を取り返すだけだ」

「そうですか。そのためならば。化学兵器を使って民間人を殺傷するのを続けると、我々は解釈します。大統領の回答を本国に伝えましょう」

 イギリス大使はそう言って、立ち上がった。

「お時間を取らせました、大統領。では、我々は仕事があるので、失礼します」


 3月27日 1045時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 トーマス・フランクリン・オライリーは携帯電話で何やら話していた。どうやら、本国の司令部から連絡を受けているらしい。

「ええ。はい・・・・・わかりました。こちらで調整しておきます」

 オライリーは電話を切り、イグリ・サビクの方を向いた。

「プリシュティナの解放作戦の実行許可が出ました。これには、我々イギリス軍の他、ドイツ軍、ポーランド軍、イタリア軍、ノルウェー軍が実戦部隊として参加します」

 オライリーがサビクの方へ歩き出し、机にバルカン半島の地図を広げた。

「現在、我々はアドリア海に2個空母艦隊を配置しています。クイーン・エリザベスとカブールです。それぞれ、F-35Bステルス戦闘機を16機搭載しています。第一撃は、このステルス機が行う予定です」

「それで、他には」

「シチリア島のシゴネラ基地からドイツ空軍機とイタリア空軍機、ノルウェー空軍機が空爆を仕掛けます。そして、ポーランド空軍機は、敵戦闘機の排除を行います」

 オライリーが続けた。

「攻撃目標は、対空陣地と南部の戦車部隊の駐屯地です。これらを排除した後、傭兵部隊とコソボ、アルバニア軍の地上部隊が一気になだれ込み、大統領府と議事堂を占拠、解放するというのが我々の計画です」

オライリーが大型のタブレットのスイッチを入れ、プリシュティナの航空写真を表示させた。町並みの中に、戦車や装甲車、対空兵器が置かれているのがわかる。

「傭兵部隊との調整はこれから行います。どの部隊にどの作戦を担当させるのが適任なのか、リストアップをお願いします」

「わかりました。IFFの設定はどうするおつもりですか?」

「そちらの信号データをいただければ、こっちで設定します。また、航空作戦指揮のため、イギリス空軍がセントリーAEW.1を派遣する予定です」

「そうなると、我々の方との棲み分けを考えなければならないですね」

「と、言われると」

「傭兵部隊がAEWを持っています。E-737が1機とS-100アーガスが4機あります」

「なるほど。今まではどのようにして棲み分けていたのですか?」

「それぞれの空中管制機は、別々のグループの航空部隊を指揮しています。また、管制機が指揮するグループごとに作戦空域を区切って作戦を進めていました」

「では、我々もそうすることにしましょう。NATO機はイギリス空軍に管制させたほうが良さそうですな」


 それから、欧州有志部隊と傭兵部隊、アルバニア軍、コソボ治安軍との間で、プリシュティナ解放作戦の協議が行われた。

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