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大規模攻勢-4

 3月18日 0809時 アルバニア・コソボ国境付近上空


 セルビア空軍の迎撃隊と傭兵部隊制空部隊の空中戦が展開している最中、別の傭兵部隊が行動を開始していた。Su-24M2"フェンサー"とトーネードIDSが防空レーダーの復域を避けるために低空を飛び、ターゲットへ向かっている。胴体下には爆弾、可変後退翼にはECMポッドを吊り下げ、自衛用に短射程空対空ミサイルを搭載している。


「こちら"キャット1"、予定通りターゲットへ飛行中。"キャット2"、敵に見つかった様子はあるか?」

『"キャット2"より"キャット1"へ。レーダー警戒装置に反応は無い。おまけに、先行している奴らからの情報もな』

『"ゴッドアイ"より"キャット1"へ。無人機からの情報がやや遅れている。今から指定する空域へ向かえ。必要とあれば、空中給油機を手配する』

「"キャット1"了解。お前ら、聞いたな?」


 傭兵部隊"ヘブンキャッツ"は、一旦国境付近上空から離れ、アルバニア側へ向かった。攻撃に参加できないのは癪に障るが、事態が急変でもしない限りは、作戦通りに事を進めねばならない。


 3月18日 0813時 コソボ上空


 1機のガーディアンERが上空を飛び、地上の様子を探っている。この無人機は、攻撃部隊に先行し、ターゲットを探し出してネットワークを使って通知する役目を担っている。更に、それとは別の無人機も、コソボ上空に向かっていた。


 MQ-9リーパーが6機、アルバニアとコソボの国境地帯上空を通り過ぎた。翼のパイロンには、AGM-114Kヘルファイアミサイル4発とGBU-12/Bペイヴウェイレーザー誘導爆弾2発が搭載されている。これらの無人機は、有人機に先行して地上の対空兵器を排除する任務を担っていた。


 3月18日 0827時 ティラナ・リナ空港


「見つけた。ペーヤとジャコーヴァを結ぶルート107の中部に対空陣地」

 スペンサー・マグワイヤがMQ-9のコンソールのキーボードを叩き、トラックボールを動かして攻撃目標に設定した。

「どうする?今、やっちまうか?」

 コンソールの隣に座っている高橋正が訊いた。

「ちょっと待て。こちら"ドロイド1"、対空陣地を発見した。SA-11かSA-17が8基。座標は42.533683 20.301111」

 しばらくしてから、司令官から連絡が来た。

『こちら"ゴッドアイ"。その北にある機甲部隊が、航空部隊の攻撃目標になっている。排除しろ』

「"ドロイド1"了解」


 3月18日 0829時 コソボ上空


 MQ-9がAGM-114KとGBU-12/Bを次々と投下した。目標は、セルビア軍の対空陣地だ。だが、それと同時に先行していた無人機がセルビア軍の防空レーダーに捕獲された。セルビア陸軍の兵士が、猛烈な速さで地対空ミサイル(SAM)を操作し、発射した。


 武器を使い切った無人機(UAV)はあっという間にミサイルの餌食になった。ターボプロップエンジンで低速で飛ぶ上に、小型民間機の機動性しか無いリーパーがどんどん落とされていく。だが、誰も乗っていないので約1300万USドルの金属と炭素繊維のスクラップが出来上がっただけで済んだ。だが、既にセルビアの防空陣地めがけて殺到した対地ミサイルと誘導爆弾は防ぐことができなかった。


 SA-11とSA-17の発射機が次々と潰されていった。これでセルビア軍の防空陣地に大きな穴が空いた。


 3月18日 0831時 コソボ トゥティン上空


 傭兵部隊のSu-27UBM1の編隊が爆撃態勢に入った。目標は、正面に見える多連装ロケット陣地だ。後席に座るWSOが兵装の安全装置を解除し、RBK-500を投下する準備に入る。

「投下10秒前・・・・・・・3、2、1、投下!」

 フランカーから投下された対人・対装甲子爆弾は完璧に仕事をこなした。広い範囲に展開していたロケット発射機、予備のロケットコンテナ、トラック、装甲車を破壊し、敵兵を殺傷した。


 3月18日 0835時 コソボ国内


 傭兵部隊とアルバニア軍が侵攻を開始した時、セルビア軍側は大混乱に陥っていた。現場指揮官の大佐は焦るあまり、司令部との意思疎通が上手くできなくなり、それがさらなる混乱に拍車をかけた。

「ですから、空爆が始まったのです!この前設置した防空施設?そんなものは、もう無いですよ!・・・・・だから、空爆で破壊されたのです!もうここには、侵攻を食い止められるだけの資産はありません!・・・・・・・・いえ、もう戦えるだけの部隊が無いのです!おわかり頂けないのですか!」

 大佐は暫く、無線越しに相手の言うことに耳を傾けた。

「・・・・・・わかりました。では、部下に伝えます」

 指揮官は、無線を切ると、近くにいた中尉の方を見た。

「司令部から、今からスケンデライまで撤退しろとの命令だ」

「いくらなんでも遅すぎませんか?」

 中尉は信じられないと言った様子だった。

「ああ。司令部の奴ら、何を考えているのかさっぱりわからん。だが、命令は命令だ。俺たちは、それに従うまでだ」


 トゥティンに展開していたセルビア正規軍に撤退命令が発令され、機甲部隊や砲兵部隊、歩兵部隊は大規模な後方への移動を開始した。しかし、その命令が傭兵部隊にまで届くことはなかった。

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