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大規模攻勢-1

 3月18日 0603時 ティラナ・リナ空港


「さて、諸君。政府は先日のセルビアによるミサイル攻撃に対し、報復を行うことを決定した。コソボ亡命臨時政府と我が国の政府が協議を行った結果、今後は、セルビアは地上発射長距離ミサイルや航空機に搭載するスタンドオフ兵器によって、国境外から我が国を攻撃する作戦を取るであろうと結論づけた」

 イグリ・サビク治安軍司令官は一度言葉を切り、正規軍兵士たちと傭兵たちの顔を見回した。

「これは、我が国にとって、大きな脅威だ。政府は再び、NATOへの軍事的援助を求めた。が、全く期待はできない。よって、我々だけで何とかするしか無い。昨日の偵察作戦の結果、セルビア軍は、トゥティンに大規模な砲兵・ミサイル部隊を展開させていることが判明した」

 サビクの副官がキーボードを叩くと、スクリーンにセルビアの地図が表示された。トゥティン地方のエリアが赤く染まる。

「既に、陸軍特殊部隊が、現地に潜入。ミサイルの位置を探っている。また、セルビア陸軍の昨日深夜時点での防空陣地の位置は次の通りだ」

 地図上に黄色いアイコンが表示された。

「まずは、防空陣地の破壊だ。これは"フライング・タイガーシャークス"に行ってもらう。電子攻撃機があるから、うってつけだろう」

 "フライング・タイガーシャークス"は、ミラージュ2000C/Dの他、EA-6Bも保有している。

「彼らが防空網を破壊したら、無人偵察機を進入させ、敵地上部隊の更に正確な位置を探る。そして、後続部隊がターゲットを破壊する。以上だ。今作戦に失敗したら、今度こそコソボは終わりだ」


 3月18日 0617時 ティラナ・リナ空港


 ティラナ・リナ空港のエプロンに並んだ航空機が、出撃準備をしていた。が、そんな中、困り果てた顔をしたクルーが数名、CH-53Eを囲んでいた。


「クソッ、こいつめ。またグズつきやがった」

 ブライアン・ニールセンは、CH-53Eのコックピットの中で罵り声を上げた。ローターが回りだしたと思ったら、すぐに止まってしまう。数日前から、スーパースタリオンの調子が悪く、作戦に投入するには赤信号が灯っていた。

「ちょっと、勘弁してよ・・・・・・」

 相棒のキャシー・ゲイツも困り顔だ。その傍らで、スペンサー・マグワイヤ以下、技術部門のクルーたちが駆け寄り、機体の様子を点検し始めた。

「こいつは・・・・・・まずいな。部品を交換するとか、そんなレベルじゃない。もう機体そのものが老朽化してしまっている」

 このCH-53Eは、製造から既に35年は経過していた。部品は少数ながら手に入らないこともないが、既にこのヘリのパーツを製造しているメーカー自体がかなり少なく、手に入れるには、かなりの時間が必要だ。と、言うのも、CH-53系列のヘリは、性能と運用コストのバランスから、使用する傭兵部隊やPMCが非常に少ないのも原因だ。"ウォーバーズ"も、このヘリに関しては、ディエゴ・ガルシア島の整備工場にスペアパーツを保管していたが、値段のせいもあって、少数にとどまっていたのが現状だ。

「でもどうするのよ。私達が飛べないと、みんなが困るのよ」

 ゲイツが食い下がった。が、このヘリ自体を使うことが難しくなっている。

「仕方がない。今回は、ロバートたちに任せよう。ヘリのことは、司令官に報告して、後で考えればいい」

 ストークリー・ガードナーの方は、寧ろ冷静だった。そこに、ゴードン・スタンリーが歩み寄ってきた。

「話は聞いたぞ。スペンス、どうだ?」

「これは、ダメかもわかりません。だいぶガタが来ています。こいつは確か・・・・・・」

 マグワイヤは、ヘリのテールブームに残っていた、アメリカ海兵隊時代のナンバーを確認した。

「1988年か89年製造の機体ですよ。ここまでよく持ったと思います。うーむ・・・・・そうだ。二人は、他に操縦できるヘリはあるか?」

「俺は他にUH-1とジェットレンジャー、H-60なら操縦できるが・・・・・・キャシー、君は?」

 ニールセンは相棒の方を見た。

「私も同じ。それと、V-22の資格も持っていたわ」

「わかった。二人とも、60なら操縦できるんだな」

 マグワイヤはPCを猛烈な勢いでタップし始めた。そして、画面を開いて見せた。

「こいつはどうだ?HH-60W。値段も手頃だし、性能面でも問題は無い。司令官、どうです?」

「二人に決めさせてやれ。俺が口を出す問題じゃない」

「俺はこれで良いと思うが・・・・・キャシー、君は?」

「私も問題無いわ」

「よし。では、こいつを、予備も含めて・・・・・とりあえずは5機だ」


 3月18日 0708時 ティラナ・リナ空港


 AGM-88EとAN/ALQ-99、増槽を搭載したEA-6Bプラウラーが4機、タキシングを開始した。ところどころに積もっていた雪が溶けて、緑色と茶色の斑の地面がかなり目立っていたが、まだ気温は氷点下になる日が続いているため、パイロットたちは飛行服の下に耐水服に重ねて、フリース生地のズボンとセーターを着ていた。


 続いて、プラウラーを護衛する、MiG-29Sとミラージュ2000Cの部隊が離陸した。最初の飛行隊は、敵の防空レーダーを破壊して、後続部隊のための道を作る。しかし、彼らは最初の一撃を担う分、撃墜されるリスクもまた、非常に高い任務を担うことになっていた。

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