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Su-35S"フランカーF"

 2月26日 1219時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 "ウォーバーズ"の戦闘機が次々と着陸した。対地攻撃兵装は使い切っていたため、既に前線に留まる意味を無くしていたので、このまま今回の作戦を終了することとなった。


 佐藤はF-15Cをタキシングさせている間、アルバニア軍と"ウォーバーズ"の警備部隊が銃を持って、6機の輸送機をぐるりと取り囲んでいるのを見た。戦闘機を駐機させ、機外に出る。ちょうど、タラップからは、両手を頭の上に乗せたパイロットらが降りてきたところだった。彼らは、アルバニア空軍兵たちに手錠をかけられ、その場から尋問のために連行された。


「さーて、中身は何かな・・・・・と。それでは、オープン・ザ・ドア!」

 カート・ロックがAn-124のカーゴランプを開くスイッチを押した。ゆっくりとそれが開き、中からは、防水シートで覆われた、巨大な昆虫のようなものが現れた。

「お、出てきた出てきた。さーて、これは・・・・・・」

 ロックが防水シートの一部をめくりあげ、荷物の正体を見て、その目を皿のようにした。

「これは・・・・・フランカー!?フランカーだと!?しかも、かなり新しいな。しかし、こいつは・・・・・」

 ロックは、技術部の仲間に手伝ってもらい、防水シートを少しずつ剥がしながら、機体の正体を明らかにしていった。

「まさか・・・・・そんな・・・・・こいつは、Su-35Sじゃないか!」

 彼は機体の近くにあった脚立を立て、それによじ登ってコックピットの中を見た。コルチャックが載っているSu-27SKMのようにバックアップ用のアナログメーターは無く、スッキリとしたデジタル式のモニターが2つ、並んでいる。

「カート、まだあるぞ!」

 技術部仲間が、別の輸送機のカーゴランプを開けたところだった。その中身も、Su-35Sだった。


 2月26日 1245時 ティラナ・リナ空港


 格納庫の中でSu-35Sの組み立てが始まった。まだ塗装がなされていない、黄色い機体の地色のみの色だ。"ウォーバーズ"の技術者たちは、組み立ての過程に於いて、全ての部品の材質のデータと精密なCADデータを採取した。いずれ、ディエゴ・ガルシア島の整備施設で増産するための措置だ。


 2月26日 1338時 ティラナ・リナ空港


 傭兵部隊の航空機が次々と着陸し始めた。航空優勢をほぼ確保したため、ティラナ・リナ空港を拠点とする部隊は帰還し、上空哨戒(CAP)を担当するのは、ジャデル航空基地から離陸した部隊だ。発見された短距離弾道ミサイルは破壊されたが、セルビア側はまだミサイルを隠している可能性はあるし、報復として、航空部隊を差し向ける可能性もある。よって、上空哨戒は未だに必要な状況であった。


 2月26日 1407時 セルビア ベオグラード


 ヴラディッツァ・プレルヴォヴィッチ大統領は苛立っていた。ロシアから密かに提供―――それも、大金と引き換えにだ―――してもらうはずだった、4機のSu-35Sを傭兵部隊に強奪された上に、リピャニの防空施設を破壊されてしまったのだ。急遽、地対空ミサイルや自走対空砲の部隊を移動させ、防御を固める指示を出した。

「クソッ、輸送部隊は何をしていた!?せっかくロシアが提供してくれた戦闘機を奪われた挙げ句、リピャニの航空優勢を失っただと!」

「大統領。只今、リピャニの航空優勢を再度確保する計画を立てています。ただ、奪われたSu-35Sは少数なので、そこまで脅威になるとは思えませんが・・・・・・」

「いや、傭兵部隊を見くびるな。奴らの中には、戦車でも戦闘機でも、平気でリバース・エンジニアリングして、量産する奴らがごまんといるだろ」

「確かに・・・・・・・その通りです」

「くそっ、このことをコルシュノフ大統領になんと言ったらいい」

「向こうから何か言われるまでは、黙っているのが得策かと」

「そうだな・・・・・」


 2月26日 同時刻 ティラナ・リナ空港


 ニコライ・コルチャックは、格納庫の中で組み立てられつつあるSu-35Sを見上げた。ぱっと見た目は、大きさもシルエットも、現在の愛機であるSu-27SKMと変わらない。が、操縦システムは油圧操作からフライバイ・ワイヤとなり、対地攻撃兵装も搭載できるマルチロールファイターとなっている。

「組み上がったらシステムチェックをする。マニュアルをダウンロードできたから、読んでみろ」

 カート・ロックがコルチャックにタブレット端末を渡した。

「ほう。基本的には、27と変わらんだろうが・・・・・・・確認しておくことに越したことは無いな」

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