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 2月22日 1256時 アドリア海上空


「こいつも外れ・・・・・。やっぱりダメそうだな」

 ケイシー・ロックウェルはJHMCSのバイザーを上げ、光学で40倍率の高倍率デジタルカメラを使って3時方向にいるB777を観察した。白い機体には、薄い青と紫のライン、尾翼にはピンク色の花が描かれている。

「おまけに、燃料も考えると、迂闊に遠くまで飛んで行って調べるわけにもいかない。一応、タンカーも飛ばしてはいるが・・・・」

 作戦開始から、既に30分が経過した。各空港や航空会社の時刻表とレーダーに映る飛行機の状況を照らし合わせて旅客機を除外することも考えたが、ターゲット選別に余りにも時間と手間がかかりすぎるため、諦めざるを得なくなった。トランスポンダーの発信信号から割り出すことも考えたが、偽の民間旅客機の信号モードを発信する方法などいくらでもあるため、識別は困難を極めた。


 そんな中、傭兵部隊のE-2Dのクルーが、レーダー画面上に不審な輝点を見つけた。民間航空路を外れ、普通では考えられない低空を飛んでいる。クルーはその目標をターゲットとしてタグ付けし、レーダーモードを切り替えた。

「おい、怪しいのを見つけた。方位243、距離243、高度6000だ」

 クルーはキーボードを叩き、タグ付けしたターゲットをロックした。データリンクを利用して、"ウォーバーズ"のE-737にも情報を転送した。

「"ゴッドアイ"へ、こちら"レッドウォッチャー"。不審な機影を幾つか見つけた。データを送るから、確認してくれ。必要そうなら、迎撃機を送ってくれ」


 2月22日 1259時 アルバニア上空


「"ゴッドアイ"了解。確認する」

 ゴードン・スタンリーは送られてきたデータを元に、レーダーマップを更新した。リアルタイムでデータリンクが繋がっているため、件の機影の動きは捉え続ける事ができた。

「"ゴッドアイ"から"レッドウォッチャー"へ。問題のターゲットを確認した。4つだな?」

『こちら"レッドウォッチャー"。その通りだ。最終アプローチには飛行場が遠いし、普通に飛んでいるには高度が低すぎる』

「了解だ。戦闘機を送り込んで確認させる」

 その傍らで、原田景はコンソールを操作して、件のターゲットを確認した。

「確かに、高度が低すぎます。ターゲットに指定して、確認させましょう」

「そうだな。"ゴッドアイ"から"ウォーバード1"、"サバー"へ。今から伝えるターゲットを確認しろ。機体は4機。方位と距離は・・・・・・」


「ターゲット確認。まずは目視するか?」

 佐藤が原田に訊く。

『目視確認してください。但し、交戦規定の通り、マスターアームスイッチを入れ、他の機体にはターゲットにロックオンさせてから確認してください』

「了解。"ウォーバード2"、"ウォーバード3"、目視確認をする。他の機体は、遠くから標的をロックオンして援護してくれ。但し、命令があるまで撃つな。繰り返す。援護を担当する機体は、命令があるまで交戦するな」

『4了解』

『5了解』

『6』

『7了解。命令あるまで射撃はしない』

『8、指示に従う』

『9了解』

『こちら"サバー"、命令あるまで射撃はしない、だな。了解』


 E-2Dのクルーはレーダーで件の不審な航空機の編隊を追跡し続けた。

「こちら"レッドウォッチャー"。不明機はそのままセルビアの方に向かっている。目視確認し、国際緊急周波数(GUARD)で呼びかけ、所属を確認してくれ」

『了解だ。まずは奴の所属を確認する』


 F-15C、F-16CJ、F/A-18Cが編隊を組み、ターゲットへ向かった。少し距離を離して、ユーロファイター、ミラージュ、グリペンが援護位置に向かった。Su-27、MiG-29、Su-30、F-15Eの4機は、更に後方から、不測の事態に備えられるような位置で待機する。

『ユウ、UAEで起きたようなのと同じような事が起きる可能性も十分考えられる。先にECMを作動させておこう』

 無線からジェイソン・ヒラタの声が聞こえてきた。佐藤は「了解だ」と答え、AN/ALQ-131を作動させた。ヒラタもF-16CJの胴体下に装着しているAN/ALQ-188を使い始めた頃だろう。"ウォーバーズ"は3機の戦闘機に防御用のECMポッドを搭載させていた。


 他の傭兵部隊も"ゴッドアイ"や"レッドウォッチャー"からの指示を受け、件の不審な機体へ向かっていた。最初は4機と報告されていたが、その後、複数の編隊が確認されたため、上空にいた傭兵部隊の戦闘機の編隊の多くがそれを確認しに行った。


「さて、蛇が出るか蛇が出るか。システムチェック・・・・・」

「システムオールグリーン。エンジン、フライバイワイヤ、兵装、航法、全て問題ない。いつでもいいぞ、ミシュカ」

 ミハイル・ケレンコフは、すぐ右隣で編隊を組んでいるMiG-29のコックピットに座っているオレグ・カジンスキーに手を振った。カジンスキーも手を振り返す。

「あちらさんも、いつでも大丈夫なようだ。行くぞ?」

 編隊を組んだ傭兵部隊の戦闘機は、ゆっくりとターゲットへと忍び寄っていった。

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