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 2月22日 1209時 セルビア上空


 密輸組織の輸送機が4機、セルビアの領空に入っていった。暫く飛んでいると、MiG-29とJ-10が4機ずつ、正面から接近し、エスコートの位置についた。

『こちら"アクーラ1"、我々に従い、飛行場へ向かえ』

「"ジャンカイ1"了解。それにしても、安全航路が限られすぎだ。どうにかならんのか」

 地中海からセルビアへ向かう航空路は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ内のスプルスカ共和国上空に限られてしまっている。そこ以外は、敵対しているアルバニアかコソボ、または中立の立場を示し、セルビア、コソボ、アルバニア、更には傭兵部隊の航空機が領空を通過することを禁止すると宣言したモンテネグロの上空しかない。モンテネグロは、戦争当事者の航空機が上空を通過した場合は、警告した上で地対空ミサイルで攻撃すると宣言していた。

『我々が指定した航路以外は、攻撃される可能性がある。持ってきてもらった積み荷を危険に晒す訳にはいかん遠回りになるが、我慢してくれ』


 2月22日 1218時 アドリア海上空


「おっ・・・・こいつは」

 E-2Cのクルーがレーダーに映った数個の輝点を確認した。先程まではレーダースコープには現れていなかったものだ。

「IFF質問信号を送信・・・・・。信号モードは民間機のようだが、果たして・・・・・」

 レーダー操作員はこの不審な輝点をロックオンして、ターゲットに指定した。

「"レッドウォッチャー"から"ブルーバット"各機へ。不審な航空機を捉えた。高度11エンジェル、速度マッハ0.7、方位327」

『"ブルーバット1"了解。327へ向かう。全機、燃料の残りを知らせろ』

『"ブルーバット2"、あと5時間は飛べる。まだまだ行ける』

『"ブルーバット3"、残り燃料は十分だ』

『"ブルーバット4"、こちらも問題無い』

「了解、"ブルーバット"。対象機へ誘導する。民間機の可能性もあるから、目視で確認し、攻撃はこちらの指示があるか、相手が敵対行動に出るまでは禁止する」

『"ブルーバット1"了解』


 2月22日 1223時 ティラナ・リナ空港


 哨戒飛行を終えた4機のF-15Cと6機のF-16CMが次々と着陸した。誘導路では、"ウォーバーズ"の戦闘機とケレンコフのSu-30SMが待機している。

『こちらティラナタワー、"ウォーバード1"、"サバー"、離陸を許可する』

「了解、"サバー"離陸」

『"ウォーバード1"離陸』

 F-15CとSu-30SMが同時に滑走し、離陸した。ミラージュ2000CとMiG-29Kも続き、全ての"ウォーバーズ"の戦闘機が空に上がった。

『ティラナタワーより"サバー"及び"ウォーバード"各機へ。方位235へ向かい、哨戒飛行せよ。戦闘空域での管制は"ゴッドアイ"に引き継ぐ。周波数は132.76。以上』

「"サバー"了解。132.76、と。スタンリー司令官、聞こえるだろうか」


 2月22日 1224時 アルバニア上空


「こちら"ゴッドアイ"、感良好。指揮を引き継ぐ。"ウォーバード1"、聞こえるか?」

『"ウォーバード1"、感良好。方位、235ですね』

 スタンリーはタッチペンでパネルを突き、哨戒飛行する予定のエリアのデータを表示させた。傭兵部隊が設置した移動式早期警戒レーダーとのデータリンクにより、かなり広い範囲の管制データを見ることができる。

 "ウォーバーズ"と"サバー"は4機ずつの編隊と2機の編隊に分かれ、南西へと向かった。哨戒飛行する区域は、アドリア海の公空とアルバニアの領空の境界の周辺だ。

「今のところ、所属がわかっていない飛行機が飛んでいる様子は無いですね」

 リー・ミンはレーダー画面に映る機体の所属を確認していった。今、この時点で飛んでいる飛行機は、アルバニアに雇われた傭兵の飛行機と地中海に展開しているアメリカ海軍の空母艦載機、公空を哨戒飛行しているNATO所属の哨戒機や戦闘機、AWACSなどだ。

「NATOの飛行機と民間機はターゲットから除外する。これで、だいぶわかりやすくなったはずだ」

 スタンリーがキーボードを叩くと、所属が明らかになっている航空機のアイコンが青くなった。つまり、味方(又は非ターゲット)としてこれらの機体は表示された。

「それで、何を探せばいいのですか?」

 原田景が司令官に訊く。

「そうだな。敵が密輸に使う飛行機を、どのようにして飛ばしているか次第だな。取り敢えずは、編隊を組んでいたり、妙に低空を飛んでいる中型から大型の飛行機を探そう。しかし、怪しまれないように、こっそり民間の航空路に紛れ込ませて飛ばしている可能性もある・・・・・・。セルビア国内に向かう飛行機を虱潰しにするしか、方法は無さそうだ」


 佐藤勇は、レーダー画面を見て唸った。と、言うのも、民間機のフリをする密輸機と普通の民間機を区別する具体的な方法が思いつかなかったからだ。恐らくは、敵は民間機のトランスポンダーを使って、こっちの目をくらませてくるだろう。だからと言って、行き当たりばったりで攻撃して、関係のない飛行機を撃墜するわけにはいかないのだが、この空域を通過する飛行機を一々目視確認するのは骨が折れる。

『何かいい方法は思いついたか?隊長さんよ』

 オレグ・カジンスキーの声が無線から聞こえてきた。

「トランスポンダーだけでは、何とも判別し難い。かと言って、セルビアに向かう飛行機を全部調べるのは難しい。一部の国際線は運行が続いているからな。こうなったら、ローラー作戦しかなさそうだな。民間のトランスポンダーであろうが、セルビアへ向かう航空機は全部目視確認する」

『おい・・・・それだと日が暮れちまうぞ』

「他にやり方があるなら、聞くが・・・・・取り敢えず、ボスに提案してみよう」

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