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 2月22日 1109時 地中海上空


 4機のY-20が低空飛行でバルカン半島を目指していた。周囲には、護衛のJF-17が6機、距離を置いて飛んでいる。この輸送機は密輸組織のものだ。この組織は、例え商売相手が国家だろうが、個人だろうが、国際テロリスト組織であろうが、報酬次第でどんなものでも、どこへでも運ぶ連中であった。この密輸機編隊は、民間航路から外れ、レーダーを避けるべく、可能な限り低空で飛行していた。


 Y-20のパイロットは、こちらが見つかるのを防ぐため、無線機のスイッチを完全に切っていた。また、密輸に使うための飛行機である故、最初からトランスポンダーの信号は発信しておらず、予め決めておいた空域に到達した時にスイッチを入れる計画である。これらの輸送機は北朝鮮からラオス、モルディブ、スーダン、リビアを経由して地中海からセルビアを目指していた。積み荷は、北朝鮮からセルビアへ運ばれるレーダーやミサイル、航空機の部品などだ。セルビアはNATOからの経済制裁を受けていたため、様々な工業製品やエネルギー資源の正規のルートからの供給を絶たれているため、密輸に頼らざるを得ない状況だった。

 この輸送機のクルーは、全員が薬物、武器、偽札など犯罪に関わる物を、どこへでも届ける組織に所属している。これらの密輸組織は、あらゆる国の軍や警察組織が、時には傭兵部隊と協力しながら取り締りをしているが、いたちごっこで殆ど効果を上げていない状態だ。よって、今は、密輸組織にとっては天下の世の中であった。


 2月22日 1116時 アドリア海上空


 傭兵部隊"ブルーバット"の編隊がゆったりと上空を飛び、周囲に不審な飛行機が飛んできていないかどうか確認していた。部隊内でのデータリンクは確立されて入るが、他の傭兵部隊との情報のやり取りが、ネットワークシステムの仕様上、スムーズにできないため、AEWや早期警戒レーダーからの情報を司令部を通して受け取るしかない状態だ。よって、それらの情報は、やや遅れて部隊に届くような有り様だった。

『"ブルーバット1"、こちらは早期警戒機"レッドウォッチャー"。現在のところ、不審な航空機は確認できていない。引き続き、警戒せよ』

「"ブルーバット1"了解。何か見つけたら知らせてくれ」

 幾つかの傭兵部隊は、お互いのデータリンクシステムを接続していたが、それぞれの傭兵部隊が使っているシステムがバラバラであったため、それは、お互いに互換性のあるシステムを持った傭兵部隊同士だけの話であり、そうでない部隊同士では、無線でやり取りをする他無かった。このため、イグリ・サビク将軍は、一時的に統一されたデータリンク・システムを全ての傭兵部隊とコソボ治安軍、アルバニア軍に導入しようと考えていたが、それには余りにも時間とお金がかかる事が判明し、結局のところ、それは諦めざるを得なかった。システムを搭載する作業をしている間に、アルバニアやマケドニアがセルビアに占領されてしまう。


 2月22日 1121時 アルバニア レーダーサイト


 アルバニア国内には、早期警戒のための防空レーダーが幾つか設置されているが、それは5日前までは、その半数以上がまともに稼働していないという有り様だった。その多くは中国製の旧式のもので、スタンリーから言わせると、化石そのもののシステムであった。傭兵部隊の協力もあり、今のところ、全てのレーダーサイトのうち7割が常時稼働状態になったものの、装置そのものの老朽化も相まって、出力を無理に上げることはできないでいた。そのため、地上の早期警戒レーダーはそれ程信頼性があるものではなく、結果的には、傭兵部隊のAEWやAWACSに頼らざるを得ない状況だった。


 2月22日 1134時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 "ウォーバーズ"のメンバーとケレンコフ、ボンダレンコはアルバニア周辺の地図をテーブルに広げ、哨戒飛行の計画を練っていた。

「敵は恐らくはトランスポンダーを切っているだろう。だが、所属を明らかにしない飛行機なぞ、世界中で無数に飛んでいるからな。そういったものから、密輸機を見つけ出すとなるとかなり厄介だな」

 ゴードン・スタンリーは地図にペンで書き込みを始めた。敵の密輸編隊の予想航路を幾つか書き記している。

「低空飛行すれば、早期警戒レーダーやAEWから見つかりにくくなる反面、対空ミサイルサイトや対空機関砲のクルーに目視される可能性がある。それに、密輸に使うのは、恐らくはB767のカーゴタイプかC-130くらいのクラスの貨物機や輸送機だろう。C-130やY-8、An-12のような輸送機であれば、低空飛行するにはあまり問題にならないが、旅客機を改造した貨物機やC-5やAn-124のような、戦略輸送機を使った場合は、低空飛行は燃費は悪くなるし、戦闘機から狙い撃ちされる。と、言うことは、ある程度身軽な輸送機を使っている可能性が高い」

 ケレンコフが、敵の密輸編隊の編成についての考えを話し始めた。

「それと、この状況だ。戦闘機の護衛を付けてくるのは明らかだ。攻撃するとなると、先に護衛機を排除しないとな」ハンス・シュナイダーが指摘する。

「まあ、護衛機さえ排除できれば、後は狙いやすいデカブツだ。とは言え、その護衛機を排除するのが一番難しいところだが」と、コガワ。

「さて、出撃の時間も近いな。機体の状態をチェックしに行こう」


 "ウォーバーズ"の整備員がそれぞれの戦闘機の調子をチェックし、燃料を入れていく。兵器整備員がタブレットでオーダーされた兵装の内容を確認し、兵装置き場からトラックでエプロンへ運び、ローダーで搭載していった。

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