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フレイムボール作戦-3

 2月19日 1143時 アルバニア国内


 2機のB-52Hが悠然と飛んでいた。左右の翼の下には、それぞれ3発ずつ、計12発のAGM-129ALCMを搭載している。防空網がまだ破壊されていないので、アルバニア領内から長距離攻撃をすることになった。

「こちら"グース1"、標的を確認・・・・・」

 その爆撃機をぐるりと囲むように護衛のF-15CやF-14Dが飛んでいる。この爆撃機は、元々はアメリカのスクラップヤードに投棄されていたものだが、ある日、傭兵部隊があっという間に18機のB-52Hを持ち去ったのだ。アメリカ政府は、盗難事件として捜査していたが、結局、犯人は捕まらず仕舞いだった。しかし、そのB-52Hは、ケイマン諸島の登録番号を付けて再び飛び始めた(傭兵部隊は、法的な面から飛行機をケイマン諸島やバミューダ諸島、ヴァージン諸島、マーシャル諸島などで登録することが多い)。やがて、その傭兵部隊は、アメリカの友好国を支援する作戦を続けたため、アメリカ政府は彼らの活動を黙認し始めた。


 傭兵部隊とセルビア空軍の空中戦は続いていた。ミラージュF-1やJA-37ビゲンがG-4スーパーガレブを撃墜し、J-8ⅡにF-16Aが撃ち落とされる。だが、彼らの"爆撃機から敵の目を逸らす"という任務は成功しつつあった。


「"ゴッドアイ"より"ウォーバード"各機、"サバー"へ。敵機を排除せよ。また小バエどもが群がり始めた」

 スタンリーがレーダー画面を確認した。敵と味方が入り乱れ、次々と画面上に表示されているアイコンが消えていく。

『"ウォーバード1"了解。爆撃機はどうです?』

「もうすぐ攻撃位置につく。それまで奴らの足止めを頼んだぞ」


 2月19日 1153時 コソボ国内


「"サバー"より"ウォーバード1"へ。敵だ。方位327、距離140」

 ボンダレンコがレーダーで捉えた敵のデータを味方に送信した。この作戦の前に、スペンサー・マグワイヤがケレンコフの戦闘機を"ウォーバーズ"のネットワークシステムに組み込んだのだ。コソボ・アルバニア連合軍臨時司令部から、ケレンコフを"ウォーバーズ"の指揮下で飛ばすよう命じられての措置だ。

『"ウォーバード1"了解。2機だな』

 ボンダレンコはR-77PDを選び、発射準備を整えた。既に敵は射程内に入っているが、万全を期すべく、もう少し近づいたところで発射するつもりだ。

『"ウォーバード7"より"サバー"へ。もう1機は俺がやる』

 シュナイダーのタイフーンに搭載されているミーティアは100km以上の射程距離がある。

『データリンクを利用しろ。レーダーでロックするのは、撃つ直前にしろ』

 コガワが指示を出す。できるだけ、敵に気づかれないようにしておきたい。

「"サバー"より"ゴッドアイ"へ。データリンクでの要撃コースを出してくれ」


 スタンリーはケレンコフの要望を聞き、レーダー画面を見て少し考えた。今、現れた敵は2機。速度から考えて、間違いなく戦闘機だろう。

「"ゴッドアイ"了解。標的を確認した」

 スタンリーはレーダー画面の"UNKNOWN"と表示された2つの目標をタッチペンでつついた。赤い四角形の記号で目標が囲まれる。


 Su-30SMとタイフーンが編隊を組み、敵機の方へと向かった。バックアップのため、ワンが乗ったミラージュも後ろから付いて行く。共同交戦システム(CEC)のお陰で、敵機に対して先手を取りやすい。ボンダレンコらは、一度レーダーを切り、E-737から送信されるデータだけを頼りに敵を追跡し始めた。コックピットの多機能ディスプレイ(MFD)には、敵機の赤いアイコンが白い四角形で囲まれた状態で映り、更に自機のアイコンから曲線が伸びて、敵のアイコンと結びつけた。

「こちら"サバー"、コースを確認した。迎撃する」

 ケレンコフはMFDに表示されたデータを確認した。敵機はレーダーの覆域内だが、ミサイルの射程外だ。出来る限り接近してから、不意打ちする作戦だ。3機の戦闘機は、ぐるりと遠回りして、敵を後ろから撃つことにした。


 2月19日 1208時 コソボ国内


 B-52Hがようやく攻撃位置についた。爆撃手がコンソールのキーボードを叩き、AGM-129Cの発射準備を整えた。

「"グース1"、標的確認。ロックオン・・・・発射!」

『"グース2"、攻撃開始』


 爆撃機の翼の下のパイロンから巡航ミサイルが次々と投下された。AGM-129Cは少しだけ落下した後、翼を広げてターボファンエンジンに点火し、真っ直ぐに標的へ飛んでいった。

「"グース1"、全弾発射。帰投する」

『"グース2"、任務完了。帰りの護衛も頼んだぞ』

『こちら"ブロッカー1"、了解だ。敵機は全部こっちに任せておけ』


 8機のA-10Cが機甲部隊を排除すべく、低空飛行していた。ハードポイントには、AGM-65やCBU-97、AIM-9Xが搭載されている。A-10の飛行隊長は、MFDを確認し、ターゲットまでのルートを確認した。無人機が先行し、データリンクでターゲットを選定していた。

「ターゲット確認。攻撃する」

 A-10の周囲では、護衛のMiG-29が飛んでいた。今のところ、敵機が向かってきている様子は無かった。

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