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フレイムボール作戦-1

 2月19日 0946時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 現在はブリーフィング・ルームとして使われている運行管理室に、傭兵たちとアルバニア軍の兵士、コソボ治安軍の兵士が集まっていた。扉から一番離れた場所には、コソボ治安軍司令官イグリ・サビクが立っている。

「諸君、ようやくNATOが動き出してくれた。だが、戦闘部隊の派遣は行われず、後方支援部隊の派遣と無人機や偵察衛星による偵察情報の提供のみが行われる事になった」

 サビクは一旦、言葉を切った。

「セルビアの方だが、依然として軍は強化されつつある。そして、これはアメリカの偵察衛星が撮影した画像だ。NATOを経由して提供してもらったものだ」

 サビクがパソコンを操作すると、スクリーンにセルビアの飛行場の画像が映し出された。AWACSや輸送機、戦闘機、爆撃機などの航空機がエプロンに並んでいる。

「一方、ロシアの方だが、こっちはバルカン情勢に関しては、それほど目立ったアクションを起こしていない。偵察機を接近させたため、ギリシャ空軍とトルコ空軍が緊急発進し、監視した程度の動きしか無い」

 サビクが更にパソコンを操作する。アドリア海には、アメリカ、イタリア、スペイン、ギリシャの駆逐艦やフリゲートが展開を始めた。更に、イタリア海軍は空母にF-35BとH-101を搭載して、派遣しているようだ。

「しかし、セルビアがNATO加盟国であるスロベニアを攻撃した場合は、直接的な軍事行動に踏み切ると昨日、アメリカとフランス、ドイツ、イギリスが相次いで声明を出した。そうなった場合、セルビアは、ほぼ完膚なきまでに攻撃されるだろうから、そこまでのリスクを奴らが負うというのは考えにくい。そこで、我々は自分たちでなんとかする必用がある」

 サビクは言葉を切り、全員を見回した。

「コソボは、今、フェリザイ、ジャコーヴァ、プリズレンの3地域を解放したが、それ以外の地域は依然として、セルビアに占領されている。今回、我々は、北東部のペーヤを奪還する。首都のプリシュティナは最後だ。今後は外堀を埋めて、コソボ国内のセルビア軍を包囲、殲滅することにする」

 サビクがパソコンを操作すると、ペーヤ周辺の地図が拡大表示された。

「敵はここに、砲兵部隊や歩兵部隊、機甲部隊を置いている。また、セルビアは失地に伴い、再占領をするために、金を使って傭兵をかき集め始めたようだ。それは、何としても阻止しなければならない。

以上だ。尚、この作戦名はフレイムボールとする」


 2月19日 1107時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 傭兵部隊の航空機が一斉にエンジンを回し始めた。今回は、まずは砲兵部隊が砲撃を行い、航空部隊の脅威となる敵の対空兵器を叩く。その後、機甲部隊が攻撃し、航空部隊が上空から援護するという作戦だ。既に傭兵部隊の火砲や地対地ミサイルが攻撃位置についていた。


 2月19日 1112時 アルバニア国内


 傭兵部隊のATACMSやスカッド、玄武2といった短射程弾道ミサイルが発射された。攻撃目標は敵の砲兵陣地や対空陣地、後方支援部隊だ。


 MLRSやTOS-1Aといった多連装ロケット砲も射撃を開始した。これは精密な攻撃では無く、広い地域を制圧するためのものだ。弾頭はサーモバリック弾やクラスター爆弾だ。


 2月19日 1119時 コソボ国内


 セルビア陸軍の対砲レーダーが、アルバニアからの砲撃を捉えた。レーダー操作員は、素早く攻撃目標と考えられる地域へ無線で警告を出した。


 スカッドミサイルやATACMSがセルビア陸軍の駐屯地に飛来した。スカッドの弾頭が戦車の格納庫に突っ込み、クラスター爆弾がジープやトラック、兵士を切り裂く。生き延びた兵士は何とか無線で司令部に連絡しようとしたが、無線機のスイッチを入れた直後に力尽きた。


 MLRSのクラスター爆弾とTOS-1Aのサーモバリック弾が軽歩兵大隊の駐屯地に飛来した。テントやバラック、車両が破壊され、兵士を殺傷する。僅かに生き延びた数名の兵士が、攻撃されたことを連絡した。


 攻撃の兆候を捉えたセルビア軍は、即座に反撃の準備を始めた。機甲部隊が前進を始め、航空部隊が離陸を始めた。Su-24やJ-11B、J-10が滑走路から飛び立っていく。


 2月19日 1126時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 戦闘機、AEW、爆撃機が滑走路から次々と飛び上がった。偵察部隊からの情報で、一部の防空レーダーが再始動したことが確認されたため、再び破壊する必用があった。その任務を任されたのは、トーネードECRの部隊だ。

「"サンダー1"、敵のレーダー波を確認。ミサイル発射準備・・・・・・」

 EWOがALARM対レーダーミサイルの発射準備をした。このミサイルは、敵のレーダー波を捉え、その発信源へ向かって飛んでいく。やがて、火器管制装置がミサイルがロックオンしたことを知らせた。

「発射!」

 ALARMが次々と発射された。しかし、それと同時に敵もミサイルを発射していた。トーネードのコックピットでレーダー警報装置が耳障りな声を上げる。

「くそっ、ミサイル!ミサイル!」

 トーネードがECM装置を作動させ、チャフとフレアをばら撒く。しかし、SA-11"ガドフライ"地対空ミサイルはしつこく電子攻撃機を追いかけてくる。

「チャフ!フレア!」

 トーネードの機体後部から、アルミメッキされたグラスファイバーの破片や火球が断続的にばら撒かれる。

「くそっ、ミサイルはどこだ、相棒?」

 ECMOが後ろを見て、ミサイルの位置を確認する。まだミサイル警報装置は鳴り止まない。

「後だ!まだ付いてくる!」

 青空に白い煙の筋を曳きながら、ミサイルは電子攻撃機を追いかけ続ける。パイロットは機体を急上昇さえ、ループ機動でミサイルをかわそうとした。ミサイルはそのまま上昇し、爆発した。

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