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更なるターゲット-3

 2月13日 コソボ国内 1924時


 攻撃に気がついたセルビア空軍らの戦闘機が離陸を始めた。J-10、MiG-31、JF-17などが、滑走路から飛び立っていく。だが、地上のレーダーが破壊され、さらには離陸したと同時に、レーダーに酷いジャミングがかかっていることに気づいた。

「"サーベル1"からサーベル各機へ。ECCMを作動させろ。敵のジャミングが酷い」

『こちら"サーベル2"。あらゆる周波数でジャミングがかかっています。回復は難しそうです』

「仕方がない。ジャミングの元を攻撃しないとダメか」

 セルビア軍の戦闘機のレーダー画面には、白い点が幾つも映り、どれが正しいターゲットなのか見分けることも難しくなっている。

「仕方がない。レーダーは諦め、IRSTを使おう。探知距離は短いが、無いよりマシだ」


「上がってきたな。片付けさせよう」

 スタンリーはタッチペンでモニターを軽く叩き、離陸してきた敵の航空機をターゲットに指定した。

「"レッドモール"隊、敵機を排除してください」

 リー・ミンが指示を出す。

『了解だ、お嬢ちゃん。奴らを片付けてやるぜ』


 2月13日 コソボ国内 1934時


 兵器工場に空襲警報が鳴り響いた。セルビア軍の地域司令部は、敵の動きから、ここが狙われていると即座に判断した。隠されていたSA-6やSA-8が格納庫から自走して位置に付き、防空網を敷く。だが、ここを救うには余りにも遅すぎる動きだった。


 JSMやJASSMが兵器工場に飛来した。ミサイルが建物や格納庫に突っ込み、高性能爆薬を爆発させる。そのうち、1発が不発でそのまま建物にめり込み、2発がSAMにまぐれ当たりされ撃墜された。


 上空では空中戦が始まっていた。傭兵部隊とセルビア空軍の戦闘機が入り乱れ、夜空にアフターバーナーやミサイル、曳光弾の花火が上がる。MiG-21がR-73で撃墜され、MICAがクフィルを捉える。ここを破壊されれば、セルビアは継戦能力を大きく損なうため、死守するよう命令されているのか一歩も引く気配は無かった。


「敵機確認。方位、325」

 ケイシー・ロックウェルがレーダー画面を見て言った。だが、彼らのF-15Eは爆弾を多く抱えているため、空中戦には不利な状況だった。

「くそっ、爆撃開始まであと2分というのに」

 ウェイン・ラッセルが毒づいた。

「味方に任せるんだ。おい、ニコ!援護してくれ!」


「了解だ。任せておけ」

 ニコライ・コルチャックは兵装スイッチを操作し、R-77を選んだ。

「ターゲットロック・・・・・Fox1」

ミサイルは凄まじい勢いで真っ直ぐ飛んでいき、ターゲットに命中した。

『"ウォーバード1"より"ウォーバード4"へ。援護する』

「頼んだぜ、チームリーダー」

 Su-27SKMとF-15Cが一定距離を置いてF-15Eの後の位置に入った。こうなると、敵機が追撃することが難しくなる。


「爆弾投下まで15秒・・・・・5秒・・・3、2、1、投下!」

 F-15Eから細く、短い爆弾が次々と投下された。投下されたSDBⅡが翼を広げてターゲットまで滑空していく。爆弾を全て撒き散らしたストライクイーグルは対空兵器を避けるため、やや緩やかに上昇した。フランカーとイーグルはそれに続いて飛び去っていく。直後、精密誘導弾が管制塔やバラック、格納庫を吹き飛ばした。


 建物の殆どが壊された飛行場にトドメを刺すため、4機のトーネードIDSがアプローチを開始した。胴体下にはJP-233ディスペンサーが2基、翼には増槽とECMポッドが吊り下げられている。JP-233は滑走路破壊兵器で、HB-876対人・対車両地雷とSG-357子爆弾が搭載されている。やがて、ディスペンサーが黒い小さな物体をばら撒いた。SG-357が滑走路に突き刺さり、爆発して掘り返した。更にHB-876が爆発しないまま、滑走路上に残る。これにより、敵が滑走路を復旧させることを遅らせることができる。対人地雷禁止条約により、ドイツ軍とイギリス軍、イタリア軍はこの兵器を廃棄したが、傭兵部隊がトーネードを使うため、闇工場で生産が続けられ、取り引きされている。人権団体などはこれに対して抗議しているが、あらゆる交戦法規に縛られることがない傭兵部隊にとってはどこ吹く風だ。

「こちら"マッドペッカー"、任務完了。帰投する」

 トーネードはエンジンをミリタリー・パワーに入れ、携行式SAMの攻撃を防ぐため、フレアをばら撒きながら上昇した。


 ワン・シュウランのミラージュ2000がBLU-107デュランダル滑走路破壊爆弾の投射準備に入った。左側でケレンコフのSu-30SM、後ろではカジンスキーのMiG-29Mが援護している。滑走路はあと1本残っており、それも確実に破壊してしまう必用がある。

「投下5秒前・・・・・4、3、2、1、投下!」

 ミラージュから細長い爆弾が一気に投下された。ワンは戦闘機をミリタリー・パワーで一気に上昇させ、対空兵器から逃れる。デュランダルが三角錐の鋭い先端を下に向け、パラシュートを開いて少し滞空した後、弾体後部のロケットモーターに点火し、一気に降下して滑走路のコンクリートの下の地面までめり込んでから爆発した。


「Fox1」

 レーダーで敵機を捉えていたコルチャックが操縦桿のボタンを押した。R-77が真っ直ぐ飛んでいき、暗い空に炎の筋を引く。暫くすると、小さな光が一瞬だけ見え、レーダー画面から敵機のアイコンが消えた。

「1機撃墜」

 だが、味方も4機が撃墜され、うち2機のパイロットとの通信が途絶えていた。

『やられた!脱出する!』

 どうやら、味方がまた1機、落とされたようだ。今頃、救難隊が出動しているはずだが、この混乱の中、救出が確実にできるかどうかは不透明であった。

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