更なるターゲット-1
2月13日 アルバニア ティアラ・リナ空港 0813時
An-124やIl-76、C-5、C-17Aなど種々雑多な輸送機が次々と着陸した。機内から航空機のスペアパーツ、兵装などが梱包されたコンテナが運び出されてくる。その全てが"ウォーバーズ"とケレンコフが使っている区画へと運ばれていった。
「恩に着るよ、ミスター・スタンリー。支払いはどうすればいい?」
スタンリーは自分たちのための飛行機のスペアパーツや兵装以外にも、ケレンコフたちのSu-30用の部品や兵装もまとめて調達していた。
「後で請求書を出しておくよ。なあに、同じ飛行隊で戦っているよしみで、少しは割引してやるさ」
"ウォーバーズ"の作業員が荷物を運んでいる間、パイロットと整備員たちは機体の状態をチェックしていた。物資管理をする作業員たちには、これから持ち込まれた荷物の状態をチェックする作業が待っている。次の作戦には、大量の対地攻撃兵器が必用になる。よって、スタンリーは兵器の調達に奔走していた。
「こいつは最高だな。どんなものでもぶっ壊せるぞ」
ハンス・シュナイダーは持ち込まれた兵装を見て言った。解かれた梱包から出てきたのは、JSM、AGM-158 JASSM、SDBⅡといった、最新鋭の対地攻撃兵装だ。おまけにAMRAAMやサイドワインダー、R-77といった空対空ミサイルやGBU-31、CBU-97、GBU-54などのいつも使っている兵器もある。
「これがあるのはありがたいわね。なんでも壊してみせるわ」
レベッカ・クロンへイムが指差したのはDWS-39だ。このスタンドオフ兵器は、言わば小さな巡航ミサイルであり、内部にはクラスター爆弾または、真下に爆風を向けて爆発する指向性弾頭を搭載できる。
「さてさて、おもちゃで遊ぶ時間はあとでたっぷりあるから、機体のチェックに戻ってくれ。次の出撃は大規模作戦になるんだ」
スタンリーが部下たちに声をかけた。
「それで、ぶっ壊すのは例の兵器工場ですか?」
ケイシー・ロックウェルが訊く。
「ああ。次の作戦もかなり大規模になるから、機体の調子やみんなとの連携をしっかり確認してくれ」
2月13日 アルバニア ティラナ・リナ空港 1056時
「では、次の作戦のおおまかな概要を説明する。それぞれの部隊で役割がはっきり分かれるから、しっかり確認しておくように」
イグリ・サビクが集まったアルバニア軍正規兵や傭兵たちの顔を見回して言った。
「目標はセルビア国内の兵器工場だ。無人機などによる偵察の結果、ここで大規模に航空機が生産されていることが確認された。はずはこれを見てくれ」
情報部の大尉がパソコンを操作すると、スクリーンに問題の工場の航空写真が映った。
「これは、無人偵察機で撮影したものだ。この建物から・・・・・」
サビクがレーザーポインターで指した部分が拡大される。よく見てみると、大きな長方形の建物から、J-10かラビらしき戦闘機が引き出さてているのがわかる。
「戦闘機が出てきているのが見えるだろう。更に、偵察した結果、頻繁に輸送機が離発着し、新たに生産された戦闘機がテストフライトをしたり、飛び立った後、戻ってこなかったことも確認されている。他にもこのような施設はあると考えられるが、ここを叩いておけば、セルビア軍の兵器生産能力を奪うことができる。勿論、近くの航空基地から迎撃機が上がってきたり、周囲に対空兵器が隠蔽されているだろう」
サビクは、一旦、そこで言葉を切った。
「それでは、作戦の詳しい内容とそれぞれの飛行隊の詳しい役割は、ミスター・スタンリーに説明してもらうことにしよう」
サビクが壇上から降り、スタンリーに場所を譲った。
「では、それぞれの部隊の役割を伝える。まずは、"レッドバジャーズ"のEA-6BとトーネードECRが敵の防空網をジャミングしつつ破壊。また、地上部隊も破壊工作によって敵の対空兵器を破壊する。敵機は護衛機で排除。AWACSはできるだけ後方で飛ばし、敵の攻撃を避けさせる。敵機が出てきたら、即座に排除。目標はスタンドオフ兵器で徹底的に破壊。現地の安全を確認した後、ヘリボン部隊で歩兵を送り込み、現地を調査する。最後は仕掛け爆弾や対戦車地雷、対人地雷を敷設して、工場の再利用を防ぐ。以上だ」
作戦開始は、奇襲効果を狙うため、日没直前に行われることになった。それまでは、各自で作戦概要を確認しつつ、待機することになる。今回は、長距離から目標を攻撃することが多くなるため、全てスタンドオフ兵器を搭載することにした。
「俺たちは全部GBU-39か。かなりたくさん積めるな」
ウェイン・ラッセルはF-15Eの回りを歩きながら言った。この戦闘攻撃機は、増槽と空対空ミサイル以外は、全部で16発のSDBⅡを搭載することになった。ラッセルたちの役割は、遠くから個々の目標を一つずつ潰していくことだ。
「ああ。今回は、敵の真上を飛ばないからな。多少は安心できるが・・・・気は抜けないな」
ケイシー・ロックウェルはタブレットとノートで攻撃目標を確認し、何から潰していくべきかを考えている。
「敵機が上がってきた場合のことも考えなければ・・・・・・兵器工場の近くのこの格納庫は、どう考えてもアラートハンガーだ。コンクリートで強化されているだろうから、SDBはこれを潰すのに使ったほうがいいんじゃないのか?」とワン。
「言えてる。滑走路を壊すのはお前か?」
ラッセルがワンに言う。
「ああ。ベルーガ滑走路破壊爆弾を持ってきた。作戦開始まで、あと・・・・・6時間と言ったところか。あまり色々調整している暇は無いな」
「機体と兵装の調子だけはしっかり確認しておこう。途中で不具合が起きて、敵地のど真ん中で緊急脱出だなんて願い下げだからな」
「ああ。ブライアンやキャシーの世話にはならんようにしないと・・・・・」




