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After Misson

 2月5日 アルバニア ティラナ・リナ空港 1451時


 CAPを終えた"ウォーバーズ"とケレンコフらが次々と着陸した。佐藤がF-15Cをエプロンに向けてタキシングさせていると、ふと、かなり巨大な機影が近づいてきているのが見えた。それは、近づくにつれて甲高い音を立てながら滑走路へとアプローチをする。それは、黒く、翼が長く、超音速で飛ぶ流線型のバケモノだった。B-1Bランサー―――それが、このバケモノの正体だ。


 B-1Bを持ち込んだのは、アイスランドを拠点に活動している傭兵部隊"スコーチイーグルズ"だった。この傭兵部隊は、アメリカ空軍のOB・OGで構成されている非常に大規模な部隊で、他にKC-10AやF-16、C-5Bを持っている。彼らはこの爆撃機を5機も装備しており、今、アルバニア入りしているのは3機で、他の2機はキプロスで待機しているそうだ。彼らは、先程、この爆撃機でジャコーヴァ近郊にセルビア空軍が建設していた飛行場を空爆・破壊したそうだ。隊長の話によれば『作りかけの4本の滑走路を全部掘り返し、建設中だった管制塔や格納庫を叩き潰した』そうだ。


「ひえー、こいつは参った。遂に爆撃機までご登場か」

 オスプレイから降りてきたイアン・コナリーは、整備を受けている巨大な黒い機体を眺めて言った。アルバニア国内の空港は、全て傭兵部隊が占拠しているような状況だ。そもそも、アルバニアの航空戦力は、陸軍のMi-8やKa-25といったヘリに限られているのが実情だ。それに対して、セルビアは主に中国やベラルーシといった国が生産しているMiG-29やJ-11を導入し、国内にも組み立て工場を次々と建設している。

「やあ、君らか。実は、次の作戦では、十分な対地攻撃能力がどうしても必用になったのでね」

 声をかけてきたのは、イザリ・サビク治安軍司令官だ。

「それで、一体何を壊すんです?」

「情報通りならば・・・・・・セルビアの国内に大規模な兵器工場があって、そこで、毎日、戦闘機だの戦車だのミサイルだのが、どんどん生産されているようでね」

「つまりは、敵の継戦能力を断つということですか」

「まあ、そんなところだ。まずは、そういった施設がどこにあるかを見つけないとな」


 2月5日 セルビア某所 1509時


 組み立てラインから出てきたJF-17が、エプロンにトーイングカーで引き出されていく。この工場では、主に作戦機やミサイル、爆弾を製造している。すぐ隣は急ごしらえの飛行場になっており、誘導路でエプロンや格納庫、滑走路と繋がっている。その工場に1機のZ-9が飛来し、中からドラガン・ジェヴィッチが降りてきた。


 ジェヴィッチは並んだ戦闘機を眺めた。今日は、大統領の命令で、この工場を視察に来たのだった。今のセルビアは、失ったスプルスカ共和国やコソボを手に入れようと躍起になっている。その遠因となったのは、世界各国の大規模軍縮と傭兵やPMCが幅をきかせるようになる原因を作った経済危機だ。

 セルビアは、内戦の傷跡を引きずっており、国力は低下する一方であった。その上での経済危機ともなれば、国が持つかどうかも怪しい状況となった。そんな中、政権を取ったのがヴラディッツァ・プレルヴォヴィッチだ。彼は、軍と軍事産業の強化に力を入れた。その流れの中で、国内では、失ったコソボやモンテネグロを武力でもって併合し、取り返すべきだという機運や世論も高まった。だが、軍の力が落ちたセルビアにそのような能力は無かった。そこで、大統領が目を付けたのが世界に散らばっている傭兵部隊だ。コソボを手に入れた場合、そこを拠点として提供するという条件で、かなりの数の傭兵部隊を雇うことができた。

 軍備が整ったところで、セルビアはコソボに侵攻を開始した。そこで問題となったのは、NATOがどう動くかであったが、これまでの在の所、NATOは全く動く気配が無い。そこに漬け込み、セルビアはコソボへの侵攻を開始した。だが、アルバニア軍が同胞であるコソボを救うためなのか、セルビアに即日で宣戦布告した。アルバニアは、セルビア同様、主に西側に対して協力的な傭兵部隊を雇い始めた。戦闘が激化した今でも、NATOや国連、EUは我関せずという態度を取り続けた。


 電話が鳴り、ジェヴィッチはポケットに手を入れ、ディスプレイを確認した。セルビア共和国大統領、ヴラディッツァ・プレルヴォヴィッチからだ。

「もしもし」

『やあ、ドラガン。工場の様子はどうだ?』

「生産は今のところ、順調のようです。目の前で完成した戦闘機が6機も格納庫へ入れられていきましたよ」

『ジャコーヴァの飛行場の件は聞いたか?』

「ええ。奴ら、まさか爆撃機まで持ってきていたとは」

『フェリザイまで奪われたのはかなりの痛手だ。これ以上失地するわけにはいかない』

「しかし、余りにも事態をエスカレートさせると、NATOが介入してくる危険性もあります。特に、アルバニアかマケドニアまで侵攻した場合、ギリシャが敏感に反応するでしょう」

『うむ。NATOを刺激しない程度の作戦でコソボを取り戻さねばならん』

「ええ。あくまでも、コソボだけを攻撃する程度に止めなければなりません」

『どうにかして失った土地を取り返さねばならない。以上だ』

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