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空戦訓練と空中給油-4

 1月13日 1113時 ディエゴガルシア島


「わかった。それでは、全員無事なんだな?そうか」

 スタンリーは管制塔に戻ってきてから、事故の状況を聞いた。窓の外を見てみると、着陸したヘリがエンジンをカットして、パイロットたちが降りてくる。滑走路では清掃車が既に掃除を始め、点検が始まっている。管制塔から基地を見下ろすと、それら以外にもホークやチャパラル、S-300(NATO名SA-12B"ジャイアント")といった地対空ミサイル(SAM)のランチャー、ゲパルトやVADSといった対空機関砲が見える。

「この分だと、他のみんなが戻ってくるまでには片付きそうですね」

 原田景が滑走路の様子を見ながら言った。ハンヴィーが何度も滑走路と誘導路をグルグルとゆっくり回り、地上クルーも滑走路上を歩き、更には腹ばいになりながら何度も状態を確認している。万が一、滑走路上に破片か何かが落ちていた場合、FODを引き起こす危険性もあるため、入念なチェックを要求される。やがて、3台のスイーパー車が滑走路の掃除を開始した。一応、この縦長に潰れたドーナツ型をした島の東側を埋め立てて、3500メートルの補助飛行場を作ってあり、そこには滑走路とILSマーカー、誘導路、ささやかなエプロンがあるが、ハンガーや整備施設は無いため、あくまでも緊急用である。そのサブの飛行場には、Jet-1Aが入ったタンクローリーのみが置いてあり、他に必要な物はボートかヘリなどで持ってくる必要がある。

「そうじゃないと困る。もうすぐ演習も終わる時間だ」


 エプロンでは定期パトロールのためにS-3Bヴァイキングが離陸準備をしていたが、滑走路でのトラブルで待機状態になっていた。パイロンにはAGM-84ハープーンとMk.50魚雷が吊り下げられている。滑走路上をスイーパーが何度も往復して掃除を行い、その後ろから3台のハンヴィーがゆっくりと滑走路上を走行し、時折、技術員が降りて、何度も目視したり手で触れたりしながら、点検をしている。

『ランウェイ13から北半分、チェック完了。異常無し。続いて、南半分をチェックします』

 ハンヴィーが滑走路の南側へ走ったのち、6人の作業員が降りてきて、しゃがみ、時には腹ばいになりながら滑走路を点検する。点検が終わった区画でも、再度、スイーパーが掃除を行っていた。


 1月13日 1118時 インド洋上空


 自分たちの家が大変なことになっていることは露知らず、戦闘機パイロットたちは模擬空戦を繰り広げいていた。青く、透き通った海には、サンゴ礁でできた環状の島が浮かび、まるで南国のリゾート地といった雰囲気ではあるが、それに似合わないジェットエンジンの爆音が上空で響き渡る。が、やがて、管制塔から無線交信が入った。

『ディエゴ・ガルシアタワーよりウォーバード全機へ。ディエゴ・ガルシアタワーよりウォーバード全機へ。滑走路でトラブル発生。全機、燃料を節約しつつ、上空で待機せよ。繰り返す、滑走路でトラブル発生。燃料を節約しつつ、待機せよ』

 スタンリーの声だ。何事か起きたらしい。

「"ウォーバード1"よりディエゴ・ガルシアタワー。何事です?」

『タンカーがドローグを壊して、燃料をばら撒いた。滑走路の点検と掃除をしている』

「了解。待機します。」


 戦闘機は訓練を中止し、編隊を組み始めた。燃料を節約するため、巡航速度で飛びながら、高度を上げていく。基地の南にある、予備の滑走路に降りることも考え、佐藤はタブレットで気象データを確認した。低気圧は無く、安定した天候が数時間は続くようだ。

『戦闘機で遊覧飛行か・・・・・悪くない』

 シュナイダーは回りの景色を見た。こうして自分たちの"家"の周囲の景色をよく見たことが無かったため、時折、機体を傾け、海いっぱいに広がるサンゴ礁を眺めた。

『私は初めてこういう所に来たけど・・・・故郷の夏の森もいいけど、ここも気に入ったわ』

 クロンへイムは、生まれ育った環境とはまるで違う景色を見て、感激している様子だった。

『そいつは良かった。退屈だけど、いいところだぞ、ここは』

 ラッセルも会話に加わる。

『さて、レベッカ。アゼルバイジャンとUAEでの話はしたっけか?』

 カジンスキーはそれを話したくて仕方がない様子だった。

『面白そうね。でも、また今度にするわ』

『そうか。ところで、ユウ。この後どうする?』

「まあ、回りの様子に注意しつつ、遊覧飛行で良いんじゃないか?ただし、燃料計には気を配れよ」

『了解だ。まあ、いざとなったら、東側の予備滑走路を使おう』

「そうなったら、昼飯をヘリで届けて貰わないとな。今日のオススメランチを知ってる奴いるか?」

『さあな。だが、非常食のパワーバーやドライフルーツとかじゃ味気無いからな。俺は、あれが嫌いなんだよ』

 ワンは、半ば食い気味に言う。

「最悪でも、白い飯と沢庵は欲しいな。それと、味噌汁」

『どうしてこうも日本人は調理性が最悪なのに、米を食いたがるんだ?』

 ヒラタは呆れ返っていた。

「ジェイソン。君だって、日本人の血が入っているだろ」

『見た目は日本人でも、俺は生粋のアメリカ人だ。ハンバーガーとコーラ、ピザで育った』

 ヒラタはそう言うと、コガワも彼に同意した。

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