フェリザイ奪還-10
2月5日 1014時 フェリザイ市
傭兵部隊とコソボ治安軍、アルバニア陸軍の連合部隊が雪崩を打って市郊外付近に突入した。が、即座にセルビア陸軍や敵傭兵の手荒い歓迎を受けた。AT-4"サガー"対戦車ミサイルがBMP-2に直撃し、操縦士が即死した。だが、そのまま黙っている連中ではなく、傭兵部隊のレオパルト2A4の主砲が火を吹き、クルガネツ25歩兵戦闘車を破壊した。装甲車両が撃ち合いを展開している中、コソボに雇われた傭兵の航空部隊が到着した。
Su-25が6機、地上部隊の援護のために低空を飛び始めた。翼と胴体の下には、2本の増槽、Kh-29空対地ミサイルとS-13ロケットポッドを搭載している。
「こちら"ターキー1"、これより攻撃する。目標を指示してくれ」
『"ターキー1"へ、目標をスモークで指示する。よく狙って撃ってくれ』
「了解。スモークは何色だ?」
『グリーンのスモークだ。間違っても味方を撃つなよ』
傭兵部隊が81mm迫撃砲M252の発射準備を始めた。射手が照準器を覗き込み、敵部隊の丁度真ん中あたりに着弾するように調整した。
「ようし、半装填しろ!合図を待て!」
「発射準備完了!」
「撃て!」
射手は砲弾を迫撃砲の砲身へ落とした。ポン!という音と共に、砲弾が飛び出した。砲弾は放物線を描いて飛んでいき、着弾と同時に破裂して緑色のスモークを撒き始めた。他の砲弾も数発着弾し、グリーンの煙で敵部隊をマーキングした。
「スモーク確認。攻撃開始!」
Su-25のパイロットは、まずは近距離用SAMに対抗するために、赤外線ジャマーを作動させた。続いて、機首を下に傾け、タイミングを見計らってフレア投射設定を"自動"に切り替えた。不格好なアヒルのような攻撃機が、フレアをやや長い間隔で投射しながら、地面に接近してくる。
パイロットが操縦桿に付いている引き金を引くと、翼下に搭載されたロケットポッドから130mmロケットが矢継ぎ早に飛び出した。対人クラスター弾頭のものと対装甲成形炸薬弾頭のものが混載されている。対人クラスター弾はセルビア軍の兵士や傭兵を殺傷し、対装甲弾がBTR-60やWZ-551といった軽装甲車両を破壊する。
「ターゲットロック・・・・・発射!」
Kh-29が99式G戦車やT-80を破壊する。生き延びた地上部隊の兵士たちは慌てて逃げ出したり、反撃の準備をしようとした。冷静にSA-16のランチャーをトラックから取り出した者もいれば、空に向かってAK-74Mをフルオートで撃つ者もいた。
「任務完了。帰投する」
Su-25は、フレアとチャフを再び撒き散らしながら最大速度で青空目指して上昇していった。1人の敵兵が、なんとかSA-16を撃ったものの、既にフロッグフットは最大射程圏ギリギリのラインを越えていた上に、ミサイルはまんまとフレアに騙されて、あらぬ方向へと飛んでいった。
2月5日 1028時 アルバニア ティラナ・リナ空港
佐藤がエンジンを回したままエプロンに駐機されているF-15Cの機体のチェックを入念に行っていると、滑走路にヘリの大群が次々とアプローチしてきた。その様子を見てみると、Mi-8やUH-60などの中に、仲間のアパッチとオスプレイ、スーパースタリオンが混ざっているのを確認した。後ろでは、"ウォーバーズ"の整備クルーたちが燃料をタンクローリーから注ぎ込み、ローダーでランチャーにミサイルを搭載している。ドッグファイトにはならなかったため、3つの予備の燃料タンクはそのままだ。
「あと10分で再出撃の準備が完了します」
整備クルーの一人が後ろから話しかけた。
「わかった。すぐ行く」
佐藤はタラップを昇り、コックピットに座った。先程の整備クルーが座席のハーネスを取り付けるのを手伝う。右隣を見てみると、ジェイソン・ヒラタがF-16CJのコックピットに座って、計器のチェックをしているところだった。
『ティラナタワーよりウォーバード各機及び"サバー"へ、離陸を許可する』
最初にタキシングを始めたのは、MiG-29KとSu-27SKMだ。今回はコルチャックとカジンスキーが先鋒での警戒を務める。続いてSu-30SMとF/A-18C、F-16CJが上がり、残りの戦闘機も程なくして全て離陸した。
「ようし、負傷者を運び出せ!まずは重傷者からだ!」
オスプレイの近くで、ジェームズ・ルークが衛生兵たちに指示を出していた。トーマス・ボーンとバック・コーエンは応急手当を施していた兵士をストレッチャーに載せ、衛生兵に引き渡した。この戦闘で5機の戦闘機と7機の攻撃機、2機のヘリが撃墜され、1人が死亡し3人が行方不明となった。
2月5日 1056時 フェリザイ市郊外
セルビア軍は未だに抵抗を諦めていないのか、フェリザイへ向けて機甲部隊を差し向けていた。国道25-3にはセルビア国内からやって来たBMP-3やZDB-03などが続いている。その部隊が前進している最中、8機のトーネードIDSが飛来し、CBU-97を投下していった。弾体の外殻が外れると、中からパラシュートの付いた筒が4つ、飛び出した。その筒は、一瞬だけ空中を漂ったのち、鋭い音を立てて回転し、4つのやや平たい缶詰のようなものを放出した。その缶詰のような弾体1つ1つには赤外線センサーが取り付けられている。センサーは、装甲車両のエンジンの熱を感知すると、中の火薬を発火させた。爆発した弾体の金属製の外殻自体が溶けた金属の矢となり、装甲車の天井を貫き、乗員をやすやすと殺傷した。何発かは目標を捉えられなかったが、地面に落下する前に自爆装置が働いた。




