表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/101

フェリザイ奪還-6

 2月5日 0846時 コソボ上空


 "ウォーバーズ"の戦闘機が動き出したので、ケレンコは彼らについて行くことにした。どう考えても自分の援護が必用な状況であることは明らかだ。それに、敵がAWACSを用意しているとなると、敵の制空権内に飛び込むことになる。援護できる飛行機は、少しでも多い方が良い。

「"サバー"から"ウォーバード1"へ。奴を見つけたか?」

『ああ。AEWからのデータリンクと誘導だけで攻撃する。直前まで気づかれたくはない』

「だな。それで、作戦は?」

『真っ直ぐ、奴だけ叩く。他のやつは、邪魔なやつだけ攻撃する。そっちの持ち弾は?』

「R-77が6発ある」

『なあ、ちょっといいか?』

 その無線にシュナイダーが割り込んできた。

「何だ?」ボンダレンコが訊く。

『多分、敵にとってAWACSは虎の子だ。そう簡単に前線に出してこないだろ。そこでだ、敵の援護がいるかどうか、まず確かめたほうがいいんでないか?』

「確かにな。で、いた時は?」

『そうだな。AWACSを守るとなると、せいぜい3機か4機だろう。この規模の攻勢ならば、それ以上、援護に回すことはできないだろうからな。そこで、考えたんだが、全員で、中射程ミサイルを一斉に発射して、一気に叩くってのはどうだ?』

「飽和攻撃ってやつか・・・・面白いな」

 ケレンコフは、その話に乗り気のようだ。

『途中で編隊を2つに分けて・・・・・そうだな、奴の後ろと側面から攻撃するんだ。挟み撃ちは駄目だ。撃ち漏らして、そのまま飛んでいったミサイルが味方に当たるからな。どうだ?』

「わかった。やってみよう」


 KJ-2000の機内では、コソボに侵入した攻撃部隊の管制をする、セルビアに雇われた傭兵がキーボードを叩き続けていた。

「"ウォッチマン"よりバザード隊へ。敵が接近中。高度78、方位132、数は4機」

『了解。迎撃する』

「レーダーレンジ変更。長距離モード。レーダービーム出力最大・・・・・」

「敵機確認。距離142。高度89。迎撃せよ」

「"レオ1"、こちら"ウォッチマン"。今からアルバニア領内に侵入し、敵機を撃墜せよ」


 2月5日 0849時 アルバニア上空


「強力なSバンド波!ターゲットに再度指定。ロックオン!」

 E-737のESMアンテナのデータを表示していたモニターに大きな反応が出た。リー・ミンはタッチペンでそのアイコンをタップして、再びターゲットに指定した。キーボードを叩き、戦闘機に最適な迎撃コースのデータを送る。

「さあ、もう逃げられないわよ。観念しなさい」


 佐藤らは相変わらずレーダーを使わず、AEWからのデータリンクだけでターゲットへと向かっていった。すると、MFDに新たなターゲットのデータが表示された。

「"ウォーバード1"より全機へ。ターゲットを確認したか?」

『"ウォーバード6"、確認した。長射程ミサイルでやるか?』

「ああ。ミーティアとR-77で、時間差で攻撃を仕掛けてやれ。3段階だ。R-77を撃ったらミーティア、そしてAMRAAMの順でだ」

『了解だ。射程内に入り次第、攻撃を開始する』

『"ウォーバード5"、長射程ミサイル発射準備完了。ターゲット確認・・・・・レーダー照射』


 2月5日 0851時 アルバニア上空


「クソッ、Kuバンドレーダー照射!一体、どこから・・・・・」

 KJ-2000のパイロットは、突然、レーダー警報装置が警告音を出し始めたので戸惑った。一体、どうやって中射程ミサイルの射程範囲に入ったんだ?ここまで敵の航空機が近づいてくるのは、実質上、不可能なはずだ。

「くそっ!ECMだ!早く回復させろ!」

 コパイロットは、無線で後ろにいるはずのレーダー・オペレーターに文句を言った。戦闘機のレーダーにロックされるくらいまで近づかれたとしたら、とっくのとうにこっちのレーダーで捉えているはずだ・・・・・・。


 ジェイソン・ヒラタがF-16CJの胴体下に装着したAN/ALQ-184を作動させた。これで、敵のレーダーに妨害電波が届いているはずだ。更に、妨害効果を向上させるため、ワン・シュウランの提案で、チャフ・コリドーを作る事になった。

『タイミングが肝心だ。いいか、俺の合図で一斉にチャフをばら撒け』

 ミハイル・ケレンコフの声が無線から聞こえた。早すぎても、遅すぎてもいけない。完璧なタイミングで一斉にチャフをばら撒く必用がある。そして、多段階で攻撃をすることから、ミサイルを発射するタイミングも肝心だった。

『全員時計をあわせたか?では、30秒前・・・・・・マーク!』

 ヒラタはチャフ・ディスペンサーのスイッチを"オン"の位置に動かし、リリースボタンに指を置いた。後は、合図を待つだけだ。

『20秒前・・・・・10秒・・・・・5、4、3、2、1、今だ!』

 ヒラタはチャフ・ディスペンサーのスイッチを押した。


 10機の戦闘機から、一定のタイミングで、一斉にチャフがばら撒かれた。これでこの空域には数秒間、チャフが漂い続け、敵のレーダーは真っ白になっているはずだ。


 2月5日 0852時 アルバニア上空


 突然、KJ-2000のレーダーに真っ白な霧のようなものが映った。オペレーターは慌ててレーダーモードを切り替えるが、白い霧は消えない。

「敵のECM!レーダーが使えない!」

「ECCM作動!早く回復させろ!」

「くそっ!回復しない!これは一体何だ・・・・・・」


「レーダーロック!目標確認!」

 シュナイダーのタイフーンが敵機を捉えた。ミーティアを2発選び、発射準備を整える。

「発射準備完了。合図を待つ」

『発射10秒前・・・・・・5、4、3、2、1、発射!』

 ケレンコフの合図と共に、シュナイダーは立て続けにミサイルを撃った。


 R-77が6発、続いてミーティアが2発、発射された。ミサイルを発射した戦闘機は急旋回し、ターゲットから遠ざかる。F-15CやF/A-18Cはそのままターゲットへ接近し、発射のタイミングを待った。他の戦闘機は数秒だけ飛んだ後、まずF-15CからAAM-4Bが3発、続いて他の戦闘機からはAIM-120Bが2発ずつ発射された。全部で17発。それら全てが、敵のAWACSめがけて飛翔した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ