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フェリザイ奪還-4

 2月5日 0829時 コソボ共和国 プリズレン上空


 セルビアが雇った傭兵部隊のJ-11BやSu-32、トーネードIDSが国境を越え、コソボに侵入した。既に制空権の殆どを掌握し、地対空兵器も破壊していたため、これらの飛行機は何の抵抗も受けること無く飛行し続けた。敵の地上部隊を攻撃するよう命令され、バタイニツァ空軍基地から離陸したとき、飛行隊長はやや耳を疑った。確かに、コソボとアルバニアも傭兵を雇ったが、これ程大規模な攻勢を仕掛けられるほどの戦力が集まっているという情報は把握していなかった。しかし、命令が下されて自分たちが出撃するまでの過程を考えると、司令部も相当混乱していたようだ。小耳に挟んだ程度ではあるが、どうやら敵は地上部隊で対空兵器の陣地を攻撃していたようだ。

「標的は敵地上部隊。発見次第、攻撃を開始する」

『了解。敵は上空援護をよこしているという情報は無いが、敵機と対空兵器に注意せよ』

 出撃の際に少々混乱はあったものの、武装は完全に整った状態で離陸できたことにパイロットは満足していた。それに、後続の戦闘機部隊も程なくやって来る筈だ。


 アルバニアが雇った傭兵航空部隊"ホバーリザーズ"が敵機がいるとされる方向へと飛行していた。

『"ホバーリザード1"、索敵中。上空を警戒する』

『"ホバーリザード2"。援護中・・・・・』

 突然、トーネードF.3のコックピットでミサイル警報装置が警告音を響かせ始めた。

『ミサイル!一体、どこか・・・・』

 1番機が爆発し、地上へと落下していく。

『ミサイル!ブレイク!ブレイク!』

 "ホバーリザーズ"の戦闘機が散り散りになりながら降下し、ミサイルを避けようとする。

『くそっ!4番機がやられた!』

『一旦離脱!交戦を避けろ!』

『敵機確認!1時方向!』

『"ホバーリザード3"、ミサイルロックオン・・・・・発射!』

 可変翼戦闘機の胴体下に埋め込まれたスカイフラッシュ空対空ミサイルが発射され、真っ直ぐ前の方へ飛んでいった。しかし、このミサイルはセミアクティブ・レーダー誘導のため、命中するまで敵機にレーダー派を当て続けなければならない。

『ミサイル飛翔中・・・・・ターゲットまで18マイル・・・・・』

 パイロットは戦闘機の機首を敵機がいる方向に向けながらも、いざとなったらすぐに離脱できるように準備していた。だが、向こうは既にこちらに反撃する準備を整えていた。


 2月5日 0829時 コソボ共和国 プリズレン上空


 KJ-2000"メインリング"が悠然と空を飛んでいた。この中国製AWACSは、セルビアが雇った傭兵部隊が装備しているものであり、航空部隊の指揮にあたっていた。

「"ウィンドローチ"へこちら"ウォッチマン"。敵機が11時方向からそちらに向かっている。全部で4機。迎撃せよ」

『"ウィンドローチ1"了解。迎撃する』


「敵機が動き始めたか。ここからが本番だな」

 E-737のレーダー画面で戦況を確認していたゴードン・スタンリーは頭の中で戦略を組み立て始めた。敵は、恐らくはかなり組織化されており、巧妙な戦術を使ってくるはずだ。先程、傭兵部隊の戦闘機のうち1機が撃墜されたことで、彼はそれを確信した。

「司令。先程、味方を撃ち落としたと考えられる敵が確認できません」

 リー・ミンがスタンリーの方を向いて言った。

「何?」

「先程、味方編隊のうち1機が撃墜されましたよね。それを撃ち落としたと思われる敵編隊が確認できません」

「ミサイルの射程外からだとすると、AA-12かAA-13だな。あれは射程が100kmを越えるからな」

「それにしては変ですよ。そうだとするなら、既にミサイルに気づいて回避行動をとってもおかしくないです」

「何が言いたい?」

「これは、あくまでも私の予測ですが・・・・・」

 そう彼女が言いかけたとき、原田景が悲鳴に近い声を上げた。

「ホワイトダッグ隊の反応が消えました!"ホワイトダッグ1"へ。こちら"ゴッドアイ"、聞こえますか?」

 沈黙。

「"ホワイトダッグ1"、"ホワイトダッグ2"、こちら"ゴッドアイ"、聞こえますか?」

 原田はレーダーのモードを切り替えて、画面を確認した。

「ホワイトダッグが消えたあたりに敵機の反応!全部で4機!」

「まずいな、味方が次々やられてる・・・・・」

 スタンリーは深呼吸すると、ヘッドセットの位置を直し、レーダー画面に集中した。

「こうなると、敵はかなり組織化された戦術をとっていますね。だとしたら・・・・・・」

 リー・ミンは呟くように言った。

「リー、何か心当たりがあるのか?」

 スタンリーが彼女の方を振り返ってい言う。

「ええ。あくまでも、可能性の話ですが・・・・・」

「この際、何でもいい。とにかく、思っていることを言ってみろ」


 "ウォーバーズ"と"サバー"は編隊を組み、状況を観察していた。味方が次々撃墜され、戦力が低下し始めている。このままでは味方の損害が拡大し、作戦を中止せざるを得なくなる。

『どうする隊長?このまま突っ込んで奴らを叩き潰すか?それとも、一旦引き上げてみるか?』

 ニコライ・コルチャックが無線で指示を出してくれと言わんばかりの口調で言った。

「まだ戦力はあるが、このままだと・・・・・」

『作戦空域から離れてみよう。何も無駄に突っ込んで死ぬことはない』

 ケレンコフが提案した。確かに、この傭兵が言うことは最もなことだ。

「そうだな・・・・、では護衛編隊を組んで、一度・・・・・」

『"ゴッドアイ"より"ウォーバード1"へ。聞こえますか?』

 無線からリー・ミンの声が聞こえてきた。

「こちら"ウォーバード1"。何か名案でも?」

『今からデータリンクのチャンネルを7.8に切り替えて、全部の機体のレーダーを切ってください』

「何?」

『データリンクチャンネルを7.8に切り替えて、レーダーを切ってください。"サバー"もです』

「待ってくれ。そうすると、ケレンコフたちは・・・・」

 "ウォーバーズ"とケレンコフらの戦闘機にはデータリンクが確立されていない。

『サバーはあなたの2番機で飛んでもらいます』

「了解だ。"ウォーバード1"から"サバー"へ。聞こえるか?」

『ああ』

「今から、作戦変更だ。君は僕の2番機の位置に来い。目視できる範囲でな」

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