表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/101

空戦訓練と空中給油-3

 1月13日 1038時 インド洋 ディエゴガルシア島上空


 ラッセルはミラージュ2000Cに狙いを定めた。Su-27SKMの方は、グリペンとイーグルと2対1という圧倒的に不利な状態で絡んでいるが、負けてはいないようだ。一方のミラージュは、バレルロールに加えて急上昇、急降下、更にはブレイクターンを加えるなど、巧みな機動でF-15Eを振り払おうとする。ミラージュは小型、単発エンジンの機体のため、素早い動きでかわそうとするが、推力の差で負け、追いつかれてしまう。

「ちいっ、チョロチョロしやがって」

 ラッセルは苛立たしげに操縦桿を動かし、スロットルを前後に動かしながらミラージュを追いかける。その後ろで、WSOのケイシー・ロックウェルは6時の方向を警戒している。だが、コルチャックはどう見ても、こっちを狙う余裕は無さそうだ。


 クロンへイムはフランカーの後ろ姿を捉え続けているものの、ロックオンするまでには至っていない。現役の空軍パイロット―――と言っても、空軍には10年もいなかったが―――の頃は、カーリニングラード飛び地から飛んで来て、領空に接近してくるフランカーの姿を見ていた。彼女のヘルメットにはコブラという、シュナイダーのタイフーンにも搭載されているストライカーの発展型になっており、IRIS-TやAIM-9Xの照準をすることができる。1番機のF-15CはSu-27SKMの前でチョロチョロと逃げまわっているように見えるが、じつは、グリペンが要撃し易いコースへと誘い込もうとしていたのだった。


 コルチャックは、目の前でチョコマカと逃げるF-15を見て、2番機に自分を要撃させるつもりだと判断し、操縦桿を思い切って後ろへ引き、両方のラダーペダルを踏み込んだ。

 Su-27SKMは機首を持ち上げると、垂直を少し越えるくらいの角度に機体を傾け、上昇した。そのせいで、一気に抗力が増し、戦闘機にブレーキがかかった。後ろから飛んできていたグリペンが、そのまま自分の前方へ飛び去っていく。コルチャックはR-77を兵装選択画面から選んだ―――勿論、シミュレーターなので実弾を撃つ訳ではない。彼は、すぐ目の前のグリペンを無視して、遠方のイーグルにロックオンした。


 佐藤は舌打ちをして後ろを見た。もう少しでクロンへイムが良い位置につけるところだったのに、コルチャックに逃げられてしまった。しかも、レーダーロック警報が鳴り響いたため、ジャマーを作動させ、チャフを撒きながら機体を急降下させた。


 1月13日 1059時 ディエゴガルシア島


 KC-10Aが着陸してタキシングを開始した。直ぐ後ろではKC-130Rが着陸のための最終アプローチを始め、誘導路では予備機として待機していたKC-135Rが離陸待ちのためにホールドしている。エプロンでは、消防車と救急車が緊急事態に備えて待機している。幸いにも、それらは最終的には必要なかったようだ。


「どれ、何かトラブったか?」

 KC-135Rのコックピットで、ピーター・ギブソンが着陸するタンカー2機を目で追った。2機とも無事、着陸したが、KC-10Aのブームからは航空燃料が垂れ流しの状態になっているのか、滑走路にはJET-A1がぶちまけられている。

「ブームの故障か?どっちにしろ、これから技術班はてんてこ舞いだな。ディエゴガルシアタワー。こちら"バイソン1"、離陸許可をくれ」

『ディエゴガルシアタワー了解。"バイソン1"、"カンガルー2"の着陸後に離陸せよ』

「"バイソン1"了解」


 KC-130Rが着陸し、エプロンへタキシングしていく。駐機すると、すぐに消防隊のストライカーという消防車から消火剤を吹きかけられ、機体は真っ白な泡に包まれた。救急班が駆けつけたが、パイロット以下クルーは無事に降りてきた。更に、別の消防車からは水をかけられ、消火剤を洗い流していく。2機ともすぐに大きな格納庫にトーイングされ、技術班の点検を受けることになった。


 スタンリーはエプロンで、2機が無事に着陸したのを確認してから管制塔へ歩き始めた。トーイングカーが機体の前輪に接続し、格納庫へ引っ張っていく。今日の訓練は、ディエゴガルシア基地の管制空域内で行われていたため、E-737は飛ばしていなかった。轟音が鳴り、KC-135Rが離陸していく。その後、ヘリの羽音が聞こえてきた。滑走路の向こうを見ると、アパッチ、シースタリオン、オスプレイが編隊を組んでヘリスポットへ向けて降下してきた。


「おいおい、何があったんだ?アレ」

 ニールセンは白い泡がぶち撒けられた滑走路を見て驚愕した。2機のタンカーがトーイングカーで引っ張られている。

「燃えてはいないようね。ジェリーたちが無事ならいいけど・・・・・」

 ゲイツが機体を降下させていくと、ジェリー・クルーガーらKC-10Aのクルー3名が、タラップから降りてくるのが見えた。

「良かった。大丈夫みたい」


 1月13日 1109時 ディエゴガルシア島


 クルーガー、クレイグ、ハミルトンの3人が技術班の作業を眺めつつ、機体の周囲を歩きながら状態をチェックしていた。そこへ、ニールセンらCH-53Eのクルーがやって来た。

「どうした?」

 トーマス・ボーンがFN-Mk16 SCARから弾倉を外し、薬室を開けて5.56mm弾が銃に残っていないことを確認してから、ハミルトンに話しかけた。

「給油ブームがイカレて燃料漏れを起こした。ハーキュリーズにジェット燃料を派手にぶちまけてしまったよ」

 ハミルトンはお手上げだと言わんばかりの様子で肩をすくめた。

「なんとまあ。それで、どれくらいで復帰できそうなんだ?」

「それは技術班次第だな。まあ、明日からは暫くは予備機に乗ることになるな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ