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冬空のフクロウ-3

 トルクメニスタン上空 0345時


 ボンダレンコはレーダーとGPSを確認した。トルクメニスタンの防空レーダーを避けるため、かなりの低空を飛んでいる。周りの戦闘機は編隊を維持し、敵機を警戒している。

『こちら"ヴァラヴェーイ2"、レーダーに反応。敵機だ』

「こちら"サバー1"。"ヴァラヴェーイ2"、識別は?」

『反応は1機だけだ。警戒する。距離180。高度14。IFFには反応しない。トランスポンダーにも民間機では無いと出ている』

「了解。こっちでも確かめてみる」

 ボンダレンコはレーダーを長距離モードに切り替えた。IFFに反応しない目標が1つだけある。トルクメニスタン空軍は迎撃機を1機しか上げる余裕が無いようだ。交戦は想定していなかったが、必要とあれば交戦してもよいとされていた。

「"サバー1"より"ヴァラヴェーイ2"へ。監視を続け、必要とあれば撃墜せよ」


 トルクメニスタンのパイロットは国籍不明機の追跡を始めた。どうやら、ロシア軍のようだ。背後から接近し、監視を続けるが、この戦闘機はどうも整備が行き届いていないらしく、レーダーの長距離モードが作動しない。おまけに、レーダーサイトとのデータリンク装置も故障している。

「こちら"ツル"。目標を確認。距離は・・・・」

 トルクメン人パイロットは無線のスイッチを入れて話し始めたが、何かがおかしいを思い、再度確かめた。すると、無線機すら故障してしまっているようだ。周波数を何度か変えてみたが、なんと国際緊急周波数(GUARD)すら機能していないらしい。これでは、ロシア野郎に警告することはおろか、防空司令部に連絡をすることすらできないではないか。ふと、パイロットはエンジンのパワーがおかしいことに気づいた。左エンジンの出力が不安定だ。スロットルを何度か動かし、調節すると元に戻った。これはまずい。実際、飛行隊への予備パーツや消耗品の供給は滞りがちで、共食い整備でその場を凌ぐことで戦闘機をなんとか使えるようにしている状況だ。自分の部隊のように、飛行機のうち1機をなんとか飛ばすことができるのはまだマシな方で、飛行機はあるものの、飛ばすことすらできない部隊もザラである。


 ケレンコフは自分たちを後ろから追跡し始めた飛行機に注意を向けた。速度はマッハ0.9、レーダーはまだ作動させていないようで、レーダー警戒装置は反応していない。それにしても、戦闘機にしてはおかしい。急にスピードが下がったり上がったりしている。

「こいつは何者かな?トルクメン空軍機だとは思うが、隨分挙動がおかしい」

 ボンダレンコはレーダーに注意を向け続けている。今のところ、脅威となり得るのは件の機体のみで、地対空ミサイルの索敵レーダーや捕捉レーダーが作動している様子は無い。

「迎撃機で間違い無さそうだが・・・・・1機だけか?僚機がいてもおかしく無さそうだが」

 ケレンコフはレーダーを確認した。急に減速したり、加速したりしている飛行機が1機。

「整備不良のビジネスジェットかもしれんが・・・・・一応、IFFで確認してみろ」

「ふむ」

 ボンダレンコは、IFFを質問モードで作動させた。件の飛行機は反応せず、更に、民間機であるという表示も無い。

「ミシュカ、こいつは敵機みたいだぞ。反応しない上に、民間機でも無いみたいだ」

「よし、確かめてみよう。"サバー3""サバー4"、例の飛行機を確認しに行ってくれ」


 2機のSu-30が編隊から離れ、先程捉えた飛行機を目視で確認しに行った。その飛行機は挙動がおかしいものの、真っ直ぐ自分たちを要撃するコースを取っていた。トルクメニスタン空軍の要撃機で間違いはなさそうだが、飛んでいるのはやはり1機だけだ。


 トルクメニスタン上空 0349時


 ミグのパイロットは言うことを聞かない機体をなんとか操りながらロシアからの侵入者を追跡していた。エンジンのパワーが上がったり下がったりする上に、計器の表示も所々おかしい。更に、このパイロットは操縦経験も少なく、地上のレーダーサイトでこちらの様子を見ているはずの要撃管制官との連絡も、無線機の故障でできないという有様だった。レーダーを見てみると、侵入者のうち2機がこちらに向かってきているのが見えた。こっちの様子を見に来たようだ。無線機の故障で警告をすることすらままならないが、接近してきた時は必要とあれば、1発だけある短射程ミサイルと機関砲だけで戦わねばならない。だが、この分だと、それすらまともに機能するかどうかも怪しい。パイロットが目を凝らしてみると、2機の飛行機がこちらに向かってきているのが見えた。


 "サバー3"のパイロットはミグを目視した。翼の下にミサイルが1発と胴体の下に燃料タンクが吊り下げられているのが見える。おかしなことに、速度も上がったり下がったりしているように見え、エンジンノズルが開いたり閉じたりしている。

「こちら"サバー3"、例の機体を見つけた。トルクメニスタンのMiG-29だ。武装しているようだが、何か様子がおかしい。速度が上がったり落ちたりしている」

 "サバー4"はミグから距離を取り、様子を見た。暗くて編隊灯だけが見えるだけだが、動きから推測するに、機体がフラフラしていて安定していないようにも見える。上昇したかと思うと、急に右に傾いたり、左に傾いたりしている。

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