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インターセプト-1

 2月2日 0823時 マケドニア上空


 雲一つない青い空が広がり、冬場の太陽が眩しくコックピットのキャノピー越しに戦闘機乗りたちを照らしている。"ウォーバーズ"の編隊は、B737AEWや輸送機を中心に戦闘機が周囲を囲むようにして防御するといういつもの編隊を組んでいた。あと数十分程で目的であるアルバニアの上空に差し掛かるはずだ。佐藤勇はF-15Cの計器盤に追加されているMFDを見て、レーダー画面とデータリンクの情報を確認した。今のところ、周囲には他の飛行機はいないようだ。この空域は、民間の旅客機などは通過することを避けているため、他の航空機は飛んでいないようだ。


「レーダーを確認・・・・他の飛行機はいないようです。今のところは」

 リー・ミンはレーダー画面の状況を注意深く見ていた。時折、近距離、中距離、遠距離とレーダーのモードを切り替える。

「いよいよ戦場だ。ここは基本的には飛行禁止空域になっているが、NATOもロシア軍も監視をしていない。マケドニアとコソボの状況だが、セルビア軍と傭兵は好き放題領空に入っては、空爆したり、民間機だろうが軍用機だろうが好き勝手に撃墜しているらしい。各自、いつでも交戦できるようにしておけ」

 ゴードン・スタンリーは戦闘機乗りたちに注意を促した。戦闘機は前後左右に、高度も少しずつずらして編隊を組ませている。ギリシャの飛行場を出発した時、一部の戦闘機には兵装の切り替えをさせておいた。セルビアが地対空兵器を配備していおいた場合に備え、F/A-18とF-16、ミラージュ2000Cに対レーダーミサイルを搭載させておいたのだ。


「こんな時にレイヴンかプラウラーがあれば便利なんだけどな。追加のECM装備じゃ心配だな」

 ウェイン・ラッセルはレーダー警報装置の画面を注意深く見ていた。AEWは空からの脅威に対する反応に優れるが、この辺りでより注意しなければならないのは、寧ろ地対空ミサイルの方だ。だから、"ウォーバーズ"の航空機は全て中途半端な高高度を避け、可能な限り低高度を保っている。

「しかし、マケドニア軍は機能しているのか?レーダーはすっかり黙っているし、他の飛行機は影も形もない」

「前の戦闘で破壊されたとかか?それにしても殺風景だな」

 キャノピーから下の様子を見てみると、雪のかかった岩山が見えるばかりで、人が生活している様子は無い。

「できるだけ市街地を避けているからな。だが、目的地はもうすぐのはずだ」


 2月2日 0825時 マケドニア上空

 

 8機のJ-8がセルビアからマケドニアへと侵入した。どの機体にもセルビアの国籍マークが描かれ、増槽と空対空ミサイルが搭載されている。セルビアは警戒監視と称して、マケドニア、アルバニア、コソボへの領空侵入を日常的に行っており、それらの政府はその度にセルビアに対して抗議をしているが、当のセルビア政府はその抗議を完全に黙殺してる状況だ。


 そのJ-8をこっそり追尾している航空機が1機だけいた。レーダーは極力使用せず、IRSTだけで機影を確認している。

「まだレーダーは使うな。奴らが何をしようとしているのかを確認しないとな」

「了解だ。速度はそのままで」

『HQより"サバー"へ。聞こえるか?』

「こちら"サバー"。感度良好」

『監視対象の状況はどうだ?』

「今のところはいつもの動き以外のことはしていない。情報によれば、あんたらが雇った連中がそろそろ新たに到着するんだっけ?」

『その予定だ。君らには彼らの援護もしてほしいのだが、頼めるか?』

「了解だ。敵の数は多いから、まだ気づかれる訳にはいかない。監視を続ける」

『了解だ』 


「司令、レーダーに反応です。目標8、マッハ0.9、方位357、距離350、高度21です」

 原田景がゴードン・スタンリーに不明機が現れたことを伝えた。レーダー画面には8つの輝点が表示されている。

「中距離ミサイルを用意させろ。マケドニア政府とコソボ政府はエスコートをよこすとは言っていなかったから」

「了解です・・・・・もう一つ目標が現れました。マッハ0.7、方位359、距離467、高度29です」

「何だ?別働隊か?」

「可能性はありますが・・・・・高度を変えず、速度を上げたり落としたりしています。まるで、最初に現れた目標を追跡しているような・・・・・。おまけに、おかしなことに、これは1機だけのようです」

「何?ウィングマンがいないのか?」

 スタンリーは驚き、レーダー画面を自分でも確認した。確かに、8つの輝点を追跡するように1つだけ、離れている輝点がある。

「なんだこいつは?こんな所で何をしているんだ?」


「"ウォーバード1"、スタンバイ。マスターアームスイッチオン、セイフティ解除・・・・・」

『"ウォーバード2"、AMRAAM発射準備完了』

『"ウォーバード3"、戦闘準備完了』

『"ウォーバード4"、援護位置に付く』

『"ウォーバード5"、スタンバイ』

 戦闘機は大型機を護衛する態勢を取りつつ、敵機を迎え撃つ準備を始めた。

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