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出発

 1月27日 0711時 ディエゴガルシア島


 まだ日が昇りきっていない薄闇の中、戦闘機や輸送機、AEW、貨物機などがエプロンでエンジンを点火扠せ始めた。佐藤勇はF-15Cのコックピットの中で計器をチェックして、機体に異常が無いことを確認した。地上の機付長が機体の周りを3回、丹念に見回った後、親指を立てる。準備完了だ。全ての戦闘機には、空対空用兵装と増槽が最大限に搭載されており、"ウォーバーズ"が保有する3機の空中給油機の他、フェリーの支援のためにやってきたPMCが持つB767やA330を改造した空中給油機が並んでいる。アパッチ、オスプレイ、スーパースタリオンは輸送支援のために飛来していたC-5M輸送機の中へ運び込まれていく。エプロンには多くの輸送機の他、地上クルーなどの人員輸送支援のためにB747-8Fも駐機している。この747を運行しているのは、人員輸送を専門とするPMCで、機体にはミサイル警報装置、電波・赤外線妨害装置、チャフ・フレアディスペンサー、曳航式デコイが搭載されている。ハンガーから引っ張り出されたそれぞれの戦闘機は燃料を最大限に給油され、可能な限りの数の空対空ミサイルが搭載されている。


 ゴードン・スタンリーはE-737の機内でレーダー機器の点検をしていた。

「システムチェック・・・・・異常なし。リー、そっちはどうだ?」

「こっちも問題ありません。いつでも飛び立てます」

「了解。後は離陸待ちだな」

 

『ディエゴガルシアタワーより"ウォーバード1"へ。離陸を許可します。風は西南西から2ノット。ランウェイ31へ移動してください』

「了解。移動する」

 佐藤はF-15Cのブレーキをリリースし、タキシングさせながら地上クルーに敬礼した。後ろからはSu-27SKMやMiG-29Kが続いている。ここからは空中給油を受けながらスリランカ、インド、サウジアラビア、トルコ、ギリシャを経由してコソボを目指す。バルカン半島までは迎撃を受ける可能性は極めて低いが、コソボ上空に入ると、セルビア空軍または傭兵と交戦する可能性は十分考えられる。そこで、トルコまではすぐに移動していくが、ブルハニエ飛行場に到着した後は、3日間の休養を取ることにしている。

「"ウォーバード1"、離陸」

『"ウォーバード2"、離陸』

 タキシングの後、滑走路上であまりホールドすること無く、戦闘機は次々と離陸していった。その後、KC-135RとKC-10Aがなど続き、最後に輸送機の集団が離陸滑走を開始した。


 1月27日 0734時 インド洋上空


『"ゴッドアイ"より"ウォーバード"各機へ。高度は25000フィートを維持。燃料はできるだけ節約しつつ、周囲の警戒は怠るな。以上』

 スタンリーの声が無線から聞こえてきた。各機のパイロットたちは一斉に無線のスイッチを2回動かして返答する。周囲を見回してみると、暗い藍色の空の東側が、若干、オレンジ色に染まり始めているのが見える。佐藤は機内でレーダーと、出発前のウェザー・ブリーフィングで受け取った資料を確認した。西アジア方面では若干低気圧が張り出し始めているが、海上の高気圧の勢力が強いようで、その殆どはイランやアフガニスタンの上空に留まっているようだ。先頭にいるのは佐藤の他、F-15Eに乗るラッセルとロックウェルのコンビ、F/A-18Cに乗るコガワだ。編隊の右側をF-16、タイフーン、グリペンが固め、後方はSu-27SKMとMiG-29K、左側はミラージュ2000Cが警戒している(編隊の左側はインド洋のため、敵機がそこからやってくる可能性は低い)。編隊内の各機の間隔が広いため、パイロットたちはデータリンクとGPSで時折、自機と僚機の位置を確認しながら飛行した。


 佐藤はコックピットの中で、各機とのデータリンクとGPSの情報と、備え付けのチャートを照らし合わせながら目的地へのルートを確認する。勿論、周囲に対する警戒も怠らない。輸送機やAEWは戦闘機に囲まれるように援護されているが、今のところは敵機が接近している気配は無い。が、目的地であるバルカン半島の近くに差し掛かれば話は別だ。最新の情報によれば、アルバニアやコソボが雇った傭兵部隊とセルビア空軍とそれと同盟を組んだ傭兵部隊との間で大規模な交戦があり、双方にかなりの損害が出ていたようだ。そこには、少し気になる情報があった。それは4日前にセルビアとコソボ・アルバニアの地上部隊が交戦した時のことだった。セルビアの地上部隊の戦力はかなり充実しているらしく、タイヤローラーよろしくあっという間にコソボの地上部隊を蹂躙したが、すぐさまアルバニアが雇った傭兵の航空部隊に壊滅させられたらしい。バルカン半島またはアドリア海の上空に差し掛かった途端、交戦の可能性もあるので、特に、トルコの飛行場に到達した時には入念に交戦の準備と護衛の計画の確認をしなければならない。佐藤はコックピットの中で純度100%の酸素を吸いながら、これから起きる可能性のある様々な状況について考え始めた。

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