要撃戦闘-2
1月17日 0946時 アルバニア国内
F-16CGの主翼下のランチャー・レールからAMRAAMが発射され、真っ直ぐ正面へ飛んでいく。F-16のパイロットは暫く機首をそのままにした後、ミサイル本体が敵機をロックしたのを確認してから機体を旋回させた。AMRAAMは猛烈な勢いで敵機を目指し、撃墜した。
「スプラッシュワン!」
JH-7が機体後部から炎を上げ、流星のように地面へ向かった。コックピットから小さな火の手が上がり、パラシュートに吊られたパイロットが出て来る。このパイロットはツキに恵まれたようだ。
H-6Kが2機、レーダーを避けるために低空飛行して目標に向かっていた。護衛機として、J-8Ⅱが4機、前方と後方を守るように飛んでいる。そのため、地上のレーダー装置からは捉えられづらくなっていた。
Su-30が機関砲を放ち、JH-7の尾翼とエンジンの排気口、胴体を穴だらけにした。次の獲物を探すべく、旋回して上昇する。
『HQより"サバー"へ。低空飛行する敵機を確認。距離24マイル、方位034。数は6機。行けるか?』
「"サバー"よりHQ。了解。迎撃する」
Su-30の後ろからはF-16、トーネードADV、クフィルが援護に付いている。
「"サバー"より"ピジョン"へ。敵の位置は確認済みか?」
『こちら"ピジョン"。敵機確認。ターゲットはこの6機か?』
「そうだ。迎撃しろ」
『"ピジョン"より"サバー"へ。了解だ』
1月17日 0957時 アルバニア国内
2機のTu-160と護衛のJF-17が4機、編隊を組んで飛行している。レーダーに発見されるのを避けるため、低空飛行しているようだ。国籍マークは無いものの、セルビアから飛んできたのは明白だ。
「"ハーケン1"よりハーケン隊各機へ。攻撃準備せよ。徹底的に叩くぞ」
「"サバー"より"ピジョン"へ。敵機は爆撃機と護衛の戦闘機だ。確実に仕留めないと、基地が全滅だ。攻撃せよ」
『"ピジョン"了解』
ボンダレンコはレーダーを長距離探索モードに切り替えた。MFDに幾つかの"unknown"と表示された輝点が映る。
「敵機発見。11時方向だ。マッハ1.3で接近中」
「了解だ。まずは、先頭のあれから片付けよう」
「よし。レーダーロック・・・・・Fox1!」
R-77がランチャーから飛び出し、前方へと向かった。初めはセミアクティブレーダー誘導で飛んでいったが、やがてミサイル自体が敵機を捉えたのを確認した後、ケレンコフは別の敵へと機首を向けた。
「1機撃墜。次だ」
レーダースコープには敵機を示す輝点が1つ減って、今は5つ確認できる。
『ピジョン、Fox1!』
F-16からAMRAAMが発射され、はるか前方へと消えていく。他の僚機も次々と空対空ミサイルを発射していった。
JF-17のパイロットは、前方から飛んできたミサイルをレーダーで捉えた。点滅する輝点が、真っ直ぐこちらに向かって来る。そして、ミサイル警報装置がすぐさま耳障りな音を鳴らし始めた。パイロットはすぐにジャマーを作動させ、チャフをばら撒き、機体を急上昇させ左に操縦桿を切る。だが、AMRAAMを騙すことはできず、エンジン排気口にミサイルが命中した。幸いにも、彼はコックピットからイジェクトすることができた。
1月17日 1014時 ティラナ・リナ空港
SA-11"ガドフライ"やZSU-23、チャパラルなどの地対空兵器に兵士が取り付き、戦闘機が敵を阻止できなかった場合に備えての射撃の用意を始めている。また、待機状態だった戦闘機にも急ピッチで燃料の補給と兵装の搭載が行われ、出撃に備えていた。
1月17日 1023時 アルバニア国内
ケレンコフはかなりの低空を飛行している大きな目標を捉えた。どうやら爆撃機で間違えないらしい。
「"サバー"よりHQへ。低空で飛行する大型の目標を確認。爆撃機と思うがどうだ?」
『こちらHQ了解。警戒しつつ、敵機と確認でき次第、攻撃せよ』
「ミシュカ、IFFに反応が無い。おまけに、どう考えてもこれは民間機のトランスポンダーの反応じゃない」
ボンダレンコはSu-30の後席で、レーダーを操作しながら相棒に話しかける。
「"サバー"よりHQへ。対象機はIFFに反応なし。トランスポンダーも切っている模様。繰り返す。対象機はIFFに反応無し」
『HQ了解。確認し、敵と判明次第、交戦せよ』
「ミシュカ。敵機を捉えた。距離25マイル、方位010、高度6500」
ボンダレンコは後席のコンソールを操作し、レーダーモードを切り替えた。複数の敵機に対して、コンピューターが脅威度の高い順に優先順位を付ける。
「ミサイルの残りは?」
「11発。十分すぎるくらいだ」
『"クロウ"より"サバー"へ。援護する』
「"サバー"了解。まずは、正面の敵を片付けよう」
『"クロウ"了解』
やがて、味方のF/A-18Dが飛んできて、僚機の位置についた。まだ戦いは始まったばかりだ。




