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Silent MidNight-2

 1月14日 0347時 ディエゴガルシア島


 エプロンに貨物機が4機並び、コンテナを下ろし始めた。エプロンではグランドクルーたちが貨物を集積区画へ運び、中身を点検し、銃で武装した警備兵たちが飛行機を周囲をぐるりと囲んでいる。パイロットは知るよしも無いが、この時、NASAMSやS-300が飛来する貨物機に狙いを定め、ロックオンしていつでも撃墜できる体制を整えていたのだ。グランドクルーは貨物を倉庫へ運ぶ前に、一つ一つ、全ての中身を確認していった。勿論、その間、航空機は動かすことを許されない。ゲパルト対空機関砲が砲身を動かして、駐機中の貨物機のコックピットにピタリと狙いをつける。いつも定期便でやってくる、スタンリーの友人が取り仕切っている、戦場での運送を専門にしている傭兵部隊からしてみれば、このやり方には慣れっこだが、この"インタースカイ・カーゴ社"のような、民間の航空運送会社にとっては、対空砲で狙われ、更に武装した男女に囲まれるというのは、生きた心地のしない経験だろう。しかし、ここにいる傭兵たちは、どこまでも事務的、紳士的で、こちらが非武装で、目録通りの物を持ってきたことを確認したあとは、燃料の補給に加えて、簡単な機体のチェックまでしてくれたのだ。


 インタースカイ・カーゴ社のAn-124の機長は、武装した傭兵に囲まれ、着陸時にミサイルや高射砲に狙われるという経験をしたことが無かった。それに気付いたとき、胃酸とともに、先程食べたサンドイッチが食道からせり上がって来るのを感じたが、なんとか堪え、胃袋に押し戻した。コックピットの窓から外の様子を覗うと、2つの砲身を持つ自走式の対空機関砲と6砲身の固定式機関砲がこっちをぴったりと狙っているのが見える。今はこっちを向いていないミサイルランチャーも、アプローチ中はしっかりこっちをロックしていたに違いない。あんなのに撃たれたら、機体もろともにハンバーグの材料になるのは明確だ。だから、機長はこんな島からは早くおさらばして、次の目的地であるスリランカのコロンボへ行きたかった。


 1月14日 0413時 ディエゴガルシア島


 機長の思いとは裏腹に、傭兵たちは貨物機に乗り込み、機内の隅々まで点検した。不審物がないかどうか、チェックしているらしい。彼らは拳銃とサブマシンガンで武装しており、空になった貨物室を丹念に調べあげた。外では、開けられたコンテナの中身を徹底的に武装した男女が調べている。この仕事を請け負った時に、説明はされていたが、いざこうなると、やはり驚く。やがて、コックピットのドアがノックされた。機長が開けると、UMP9サブマシンガンを持った黒尽くめの女がいた。

「機体のチェックが終了しました。補給と機体の点検が終了次第、離陸許可が出ます」

「了解した。感謝する」

 

 タンクローリーが数台、4機のAn-124の近くにやって来て燃料の補給を始めた。燃料代は前払いで、既に運送会社から受け取っている。今回運んだのは、飛行機のパーツ、兵装、食品、日用品などだ。この小さな島では、外から入ってくる物資だけが頼みの綱である。用が済んだら運送会社の人間も、とっとと離陸していくし、こっちとしても、部外者が早めに立ち去っていってくれるのは、安全上、理に叶っている。


 An-124がタキシングを始めた。武装した傭兵たちがエプロンに並んで、こちらを油断なく見ている。更に、対空ミサイルとAAガンは完全にスタンバイしており、こちらが妙な真似をしたら、即座に撃墜できる体制を取っている。更に、完全に扉が開いた、コンクリートで強化されているらしいハンガーには、ミサイルを搭載した戦闘機が2機、入れられているのが見えた。離陸後、事前に知らされた防衛空域で妙な真似をしたら、即座にこの戦闘機が追いかけてくるだろう。An-124、NATOコードネーム"コンドル"のパイロットたちはローリングテイクオフをリクエストし、すぐ許可された。アントノフは滑走路のエンドに入ると、少しもホールドすること無く、連続して離陸していった。


 オレグ・カジンスキーは連続して響き渡った大きな飛行機の音で目を覚ました。カーテンを開けて、窓の外を見てみると、丁度、最後のAn-124がエンジンの出力を上げ、滑走路を走っていくところだった。まだ外は真っ暗で、衝突防止灯の赤と緑の光が見える程度である。時計を見ると、だいぶ中途半端な時間に目を覚ました、と思った。二度寝をするか、このまま起きるか迷ったが、ふと、今日の早朝からのアラート待機に組み込まれている事に気づき、取り敢えず、軽い運動をして、シャワーを浴びて、着替えることにした。


 カジンスキーは自室のPCの電源を入れ、何か最新情報が入っていないかどうかを確認した。すると、『緊張が続くバルカン半島 開戦は秒読みか』という記事があった。それによると、セルビアとコソボの両国が傭兵を雇い始め、戦闘に備えているようだ。それぞれが様々な条件をダシに、傭兵を囲っている。それに対して、NATOは現地に偵察機を飛ばす程度以上のことはしていない。まあ、実際に戦闘になっても、NATOにできることなど、今ではたかが知れているのだが。

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