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第17話:嫉妬する女の子?

【SIDE:速水悠】


 情熱と青春をかけたライバル西高とのサッカーの試合に勝利をした。

 本気を出した結果には満足している。

 しかし、俺には悩みの種は尽きない。

 翌日の俺はいつもに増してボーっとしていた。

 昼休憩の食事中にもかかわらず、パンの味すら感じない。

 自分がこのような状態になるとはなぁ。

 人生17年生きてきたがこんな風になるとは思いもしなかった。

 

「悠クン、頭の病気が悪化してる」

 

「あー、うん。そうかもな」

 

「……いつもみたいに反論がない。これはホントに変。大丈夫?」

 

 凛子が俺を本当に心配する、やめなさい。

 そこで心配されるのは人間としてどうかと思うが。

 残念ながら俺の思考は今はそれどころではない。

 どこか上の空っていうのには理由があるのさ。

 

「病気は病気でも違う病気だ。恋の病ってやつだ」

 

「……寒っ」

 

「ぐすっ、凛子の一言は本気で傷つくぞ」

 

 自分で言っても寒いセリフだが、他人に指摘されると本気で傷つくわ。

 それはおいとくとして、俺の悩みは舞姫さんの事なのだ。

 彼女と貴也の関係が恋人ではなく姉弟であったことは拍子抜けはしたものの、こちらとしてはホッとしている。

 だが、彼女が俺のファンだった女の子だという事にはびっくりさせられる。

 うーむ、本当に衝撃的だな。

 ということはこれをくれたのは舞姫さんというわけか?

 俺は自分の右腕につけているミサンガに視線を向けた。

 幸運のお守りと呼ばれてるミサンガは糸を重ね編んだもので、つけていて自然に切れると良いことがあるらしい。

 パっと見た感じはまだ切れそうにはないな。

 

「凛子、聞いてくれ。実は……」

 

 俺は凛子に昨日の大活躍について得意げに話す。

 大逆転劇を演じた俺の活躍は両校のサッカー部で伝説に残るであろう。

 

「どうよ、すげぇだろ。今なら俺に惚れてもいいぞ、凛子」

 

「……あはっ」

 

 めっちゃ可愛い笑顔で鼻で笑われました。

 くっ、凛子は美少女だけにキツイっす。

 続けて貴也と舞姫さんの関係や俺のファンらしいことも話しておいた。

 どちらが本題かわからんが、言いたい事はわかってくれたはずだ。

 話が終わると、彼女は何だか納得した様子をみせる。

 

「なるほど。それで舞姫さんって最初から悠クンの事を知ってたんだ」

 

「え?そうなのか?」

 

「初対面のはずなのに名前を知ってたから気になってた。他クラスの子なら、なおさら。悠クンみたいなのを知るはずない」

 

「一応、サッカー部のエースで学内の知名度は上級生や下級生にすらあるんですけど。そりゃ、小桃さんには敵わないが」

 

 言い方は気に入らないが言いたい内容は理解した。

 つまり、接点のない相手のはずなのに名前を知っていた事がおかしい、と。

 

「悠クンのファンであることが恥ずかしくて隠してたのかも」

 

「そこは素直にファン感情で照れたという事にしておこうぜ、頼むからさ」

 

 そうじゃないと俺の立場がないっての。

 ファンであることが恥ずかしいってどうよ。

 あんまりにも意地悪されるので俺は凛子の頬をぷにっと軽く引っ張る。

 柔らかさ抜群、本当にこの凛子ちゃんは可愛いね。

 

「……痛くないけど人の頬で遊ばないで」

 

「凛子が俺をバカにするからだ。口が悪いのは小桃さんだけにしておいてくれ」

 

 凛子に悪意のある悪口が出始めたら俺も泣く。

 今はほぼ悪意のない無意識の悪……やっぱり悪口って時点で悪じゃん。

 凛子の頬を引っ張って遊んでると、さすがに鬱陶しくなってきたらしく。

 

「むっ?あんまり触らないで。セクハラされたって姉さんに言ってやる」

 

「なんだと!?……どうせ死刑にされるならもっとエスカレートしたセクハラ行為をしてやるわ。覚悟しろ、凛子」

 

「わ、私を襲うな。姉さんの名前効果が逆効果に……」

 

 凛子は身の危険を感じて震えている。

 かわゆい奴よのぉ、その反応が凛子をいじると楽しい理由でもある。

 

「凛子よ、気をつけろ。真の変態っていうのは後の事を考えず行動するんだぜ。だからこそ、怖いのだ」

 

「……悠クンを見てはっきりと理解した。変態は死ねばいい、社会のゴミめ」

 

「俺、変態と違うから!?たとえばの話だ、たとえば!!」

 

 凛子さんに報告されるとそれはそれで厄介になる。

 話をまた戻すと凛子は興味なさそうな顔をして言う。

 

「舞姫さんが気になるなら行動すればいい。どうせ、ファンってだけで悠クンが好きというのと違う話だというオチを期待する」

 

「そのオチ、俺的に一番恥ずかしい展開なんで想像もしないでくれ」

 

 もしも、そんなオチなら俺は凛子に言葉にできないセクハラをしまくってから小桃さんにやられて死ぬぜ(自爆)。

 

 

 

 

 舞姫さんとはクラスが違うために学校ではあまり会わない。

 バイト先である喫茶店マリーヌでは仲間として働いている。

 しかしながら、俺がウェイターになることはあまりないので、ウェイトレス姿を見ていることしかできないのだが。

 

「はぁ、やっと皿洗い(本日3回目)が終了した。次は何だ、店長」

 

 雑用係にも慣れてきた、というか、仕事が他に回ってこないぜ。

 店長に文句を言いたい気持ちはあるが、これでお金をもらってる以上、強気でいけない。

 悲愴感店長は今週の売上データをパソコンで眺めながら嬉しそうだ。

 

「おおぅ、赤字経営を脱出できそうな見通し。これほど短期に黒字経営に戻れるとは……にやにや」

 

「おい、そこでパソコンを見てニヤニヤする怪しいおっさん。エロ動画でも見てるのか」

 

「誰がおっさんだ、しかも変な動画は見てない。店内で誤解を生む発言は……マリーヌに聞かれたら殺されるからやめてくれ。ホントにお前は人の気分を害する天才だな。ちょいと待て。仕事が別にあったはずだ。おーい、瀬能」

 

 店長は何かを思い出したらしくキッチンフロアへと出ていく。

 事務所に残された俺はこっそり、お店の方を見る。

 凛子も頑張ってるが、舞姫さんもお店に華やかさを演出している。

 くっ、俺もウェイターとしてフロアに出ることができれば……。

 非常に残念だが、俺の活躍は滅多に来ないのだ。

 ちくしょー、俺って本気でこの店にとって雑用係でしかないのか。

 

「……何を頭を抱えてへこんでるんだ、速水。ほら、次の仕事だ」

 

 戻ってきた店長が俺に手渡してきたのは一枚のメモ。

 そこにはそれなりの数の品物名が書かれている。

 

「……グラニュー糖?糖ってことは砂糖のお仲間か?」

 

「お前は有名ケーキ店の店長の息子だろうが。一般的なケーキに使われる材料系の名前ぐらい知っておけ。親父さんが嘆くぞ。で、ケーキ関係の材料の在庫が切れ気味でな。すぐに買ってきてくれ」

 

「何と、それはいわゆる“お使い”というやつか!?最重要任務が来た。人生初めてのお使いだぜ。任せてくれ、俺が任務を果たしてやる」

 

「“はじめてのお使い”ってお前はいくつの子供だ。うちの娘のリリー(4歳)だってひとりでお使いくらいできるぞ。それがまた可愛くてな……と、話がそれた。僕は暇がなくていけないから、代わりに行ってきてくれ」

 

 そのパソコンで売り上げ表を見てニヤニヤする暇はあるのか。

 店長は事務作業で忙しいようなので、俺がお使いをすることに。

 

「駅前にある菓子専門の材料を売ってる店があるのは知ってるか?」

 

「あぁ、あの店か。凛子の姉がお菓子作りが好きでよく行ってるから知ってるけど。そこでこの注文通りのモノを買ってくればいいんだな。任せてくれ!」

 

「そんなに意気込む事でもないんだが。まぁ、いい。最悪、分からないなら店員にそのメモを渡せ。そうすりゃ、変なものを買ってくることもないだろ。あと、金は着服するなよ。レシートを見れば分かるんだからな」

 

 それこそ、俺はそこまで子供ではないのだが。

 とはいえ、専門用語の材料とか想像もできないのがある。

 バニラエッセンスって何だ、シナモンなんとかって、もはや名前すら分からん。

 俺は不安になりながらも店を出て、駅前通りを歩きながら目的地を目指す。

 喫茶店マリーヌから徒歩5分、同じ通りにある目的地に到着。

 お店の中はそれなりに人がいる、女性ばっかりだな。

 

「いらっしゃいませ」

 

 店員の女性がいたので、俺はさっそく、メモを渡して持ってきてもらう事にした。

 自分で探すより楽なので、その間に適当に店の中を見てみる。

 ふーむ、小麦粉ってこんなに種類があるのか、用途によって使う種類が違うようだ。

 砂糖も無駄に種類豊富、見てるだけで俺には違いなど分からんが。

 

「――あら?悠ちゃん?何をしてるの、こんな場所で」

 

 俺に声をかけてきたのは学校帰りの小桃さんだ。

 今日も見事なスタイルのご様子、揺れるEカップの胸は健在です(目の保養)。

 

「……アルバイトのお使い中。小桃さんこそ、ここには材料を買いに?」

 

 小桃さんはこー見えても、お料理上手なうえに菓子作りが趣味なのだ。

 小さい頃は俺も小桃さんの菓子を作ってもらうのが嬉しかったな。

 

「凛子ちゃんが私の手作りシュークリームが食べたいって言われて、作ろうと思ったら材料を切らしていたから買いに来たの」

 

「へぇ、凛子がね……。凛子は今、バイトで頑張ってるぞ」

 

「あの子もよくやるわ。正直言えば、性格的に合わないとすぐに辞めちゃうんじゃないかって心配だったけども、そういうこともないみたいね?最近は自分から話をするようになってきたし、いい感じね。凛子ちゃんはもっとかわいくなるわよ」

 

 小桃さんはくすっと微笑しながら言った。

 妹の事は心配なようだが、成長していく事を望んでもいるらしい。

 

「……そうだ、悠ちゃん。昨日、西高でサッカーしてたでしょ。偶然、私も水泳部の関係でそこにいたの。見たわよ、久しぶりに全力プレイしてたわね。結構、カッコよかったわよ?逆転ゴールも決めちゃってやるじゃない」

 

 小桃さんが俺を褒めるなんて珍しい。

 いつもがいつもだけに俺は照れくさくなる。

 

「そ、そうかな。あははっ……照れるなぁ」

 

「ホント、やる時はやるんだって見直したわ。悠ちゃん」

 

 いきなり小桃さんが俺をぎゅっと抱擁して、頭を撫でる。

 うぉ、な、何ですの!?

 思わぬ展開に動揺する俺、Eカップの胸が俺に……これ、どんなイベントですか?

 香水の香りと幸せたっぷりの膨らみが当たる、密着されて俺は天国へ行きそうだ。

 にへへ、いつの間に俺はそんなフラグを立てていたのだ。

 はっ、これって、もしや小桃さんルートフラグ!?

 だが、そのルートフラグを進むと結末に待つのは悲愴感店長とマリーヌさんみたいな関係だという事は容易に想像できるのが悲しい。

 なんて冗談めいた事を考えて抱きしめられていると、

 

「……悠……さん……?」

 

 呆然とした顔でこちらを見つめる舞姫さんがそこにいた。

 ウェイトレス姿のままで店内に浮いてる、というか、何で彼女がそこにいるんだ?

 俺は彼女の前で小桃さんとの抱擁シーンを見られて身動きできない。

 

「ま、まさか……?」

 

 俺は抱きつく小桃さんの顔を見て、愕然とさせられる。

 

「――ふふっ、悠ちゃんはそう簡単に恋人なんて作らせてあげないわよ」

 

 その顔は史上最悪の悪魔のような顔をしていた。

 ちくしょうっ、やられた!?

 この人、舞姫さんの“ルートフラグ”を見事に“フラグブレイク”するつもりだ!?

 このフラグブレイカーめっ、何だかいろんな意味で大ピンチの俺。

 どうする、どうなる!!?

 

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