爪痕
新聞を開くと
重機の音が
腹の奥を揺さぶるような音が
聞こえてきた
叫びが
戻ってこい!
戻ってこい!
せっかく頑張ったんだろ!
と、叫びが聞こえて
耳を塞いでも余韻は残り
砂塵や泥の臭いまでしてきた
いくな、いくな、と
叫びはほとんど悲鳴となって
雨の音に消えていった
新聞を閉じて、窓の外に目をやると
絵に描いたようなアーチ型の虹が
かかっていた
つけっぱなしのラジオから聞こえた天気予報
先日より勢力の強い台風が接近中
おい、嘘だろ?
虹に向かって言ってみても
虹は張り付いた笑顔を見せるだけで
あっさり消えてしまった