王野勇樹の変な気持ちのヤツ。
ここでいったん主人公達を整理。
枝野マキ 佐々木千鶴 王野勇樹 小谷静香 桜井佳奈 向井皐月 木村里穂
戸部空馬 富永春斗 野ノ村遼平
こいつ誰だっけ・・・・?ってヤツ、いるかも。
~マキ~
ガラガラッと教室のドアを開け、一組に入る。
(・・・・・・ん?)
今日の一組の雰囲気は、いつもと少し違っていた。
みんな、グループになってなにかこそこそとしゃべっている。
意味わかんないんすけど。
すると、
「あの、さぁ・・・・・・」
教室の端から、王野が出てきた。
朝っぱらからこいつの顔見るなんて気分サイアクなんだけど。
王野は気持ち悪い顔をあたしの顔に近づけ、
「佐々木が空馬んちに泊まったって、マジか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あーあ」
そんなことをみなさんで真剣に話してらっしゃったんですか。
「一組って、アホの集まり?」
「朝っぱらからなに悲しいこと言ってんだよお前はっ!!!」
「だってそうじゃない。詳しい事情すら知らないくせに真面目に討論しちゃって。
あれ?こーいうの、アホじゃなくてバカっていうんだっけ?」
お前なぁ・・・・・・と、王野はため息をつく。
「詳しい事情がわかんねーからあたふたしてんだよ!
まさか空馬とあいつがそんな密接な関係だったとは誰も知ら、」
「ブッ、みっ、密接なかんけー!?アハハッ、あんたバカチャンピオン世界一だわー!!!」
「バカチャ・・・・・・!?」
「千鶴があのエロ親父の家に行ったのはねぇ、」
「マァキィィィィィィィッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ガラガラガラッ!と乱暴に開く扉とともに、耳が痛くなるほどの馬鹿でかい声が響く。
この声は、
「いつもうっさいっつってんでしょーが声デカ女ぁ!!!!!!」
ウワサの千鶴だ。
「ちょっと聞いてよねぇ!」
人の言葉をまったく聞かすに、一人でしゃべりだす。
千鶴の目のしたには、ホラー映画に出てもおかしくないようなクマが。
「風呂に入って髪乾かそうかと思ったらドライヤーの場所がわからず!
隣のベットからは戸部様・・・・・・いや空馬君の寝息が聞こえ!
一階からは空馬君の両親の夫婦喧嘩が聞こえ!
びしょびしょに濡れた髪のまま一睡もできなかったぁ!!!!!!!!!!
助けてよちょっと!まったく元気が出ないんだけどぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「あんたなら大丈夫。殺したいくらいうるさい声出してんだから元気だよ」
千鶴とあたしの会話を、王野がポケェとした顔で見ている。
「うっわぁ、その顔キモイ。珍百景だよ珍百景」
「・・・・・・・・・・・ホントに空馬ん家に泊まったのか、お前」
「これからずーっとホームステイなのぉ!!!!!!!!!!!!」
うわぁーん!と泣きながら、千鶴は叫ぶ。
「ホーム・・・・・・?じゃ、密接な関係とかじゃ?」
王野の『密接な関係』に爆笑しながら、
「だから違うって!この顔と体型でこいつがあんなヒョロヒョロ野郎と付き合えるわけないでしょー?」
「朝からむちゃくちゃ失礼だよ!」
千鶴はふきげんな顔のまま、席に付こうとして、
「あっそうだ!ちょっと提案があるんだけど!」
キラッキラと輝く笑顔をいきなり見せながら、あるチケットをあたしと王野に渡した。
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~勇樹~
「遊園地に行くだぁー?」
俺と枝野は佐々木の言葉にいっせいに顔をしかめる。
「そっ!今週の日曜日に、『ウキウキランド♪』に!」
「ウキウキランドねぇ。ネーミングセンス悪っ」
「・・・・・・・。」
いやそこじゃねぇだろ枝野。
しかし、
「なんで俺ら三人で行くんだ?仲良くねーのに」
「そーよ千鶴。こんなやつと遊園地なんかいったらジェットコースターぶっ壊れる気がする」
「怪獣か俺は」
「怪獣以下よ。もっというと、食べかけのバナナ以下」
「ちょっと二人とも!仲いいのはわかるけどあたしの話を聞け!」
「「誰が仲いいってかぁ!?」」
声がそろってしまい、お互い眉間にしわを寄せながらそっぽを向く。
「あたしだって、できることならこんなむさい男と一緒に行きたくないのー」
「むさいってなんだよ、むさいって」
「でも、マキは知ってるでしょ?
この遊園地に、日本一おいしいハヤシライス店があるのと、怖いお化け屋敷があるのを」
「・・・・・・まさか、学園祭のため?」
そーよっ!と、佐々木は嬉しそうにうなずく。
しかし、学園祭ごときのためにお化け屋敷まで行かなきゃなんねーのか・・・・・・。
「二人とも、行く?」
「俺は、別にいいけど。日曜、デート入ってねーし」
そう言いながら、ちらりと横の枝野の顔を見る。
こいつは、行かないんだろうな。
――――待て。
そうだよ。俺はこいつがいないほうが気持ちよく遊園地を堪能できるんだ。
なのに、何だ?今のは。
ちょっとつまんないかも・・・・・・とか思ったか!?
いやいや思ってねぇ。思ってないぞ1ミリたりともぉー!
「行く」
「え?」
悶々としていたところで、あっさりと枝野は言った。
「行く。絶対行く。11時15分に駅前の花屋の前に集合。
一秒送れるごとに500円。
以上。解散」
そのまま、枝野はスタスタと歩いていった。
「あいつ、特製太郎ハヤシライス大盛り狙ってるな」
佐々木がつぶやく。
「とくせいたろうはやしらいすおおもりぃ?」
「ウキウキランド♪にしかないハヤシライス。
しかも、午後12時00分ぴったりに行かなきゃ食べられない特別なハヤシライスよ」
「・・・・・・・・・・なるほど」
俺は、枝野が「行く」と言ったことで、少し心が躍っていることに気づいていなかった。
だから・・・・・・・・・・・・・・。