枝野マキの意外な一面というヤツ。
~皐月~
「ではぁ!学園祭の出し物を決めたいと思いまーっす!」
工藤先生を押しのけ、佐々木千鶴が教壇に立った。
「進行は1組の佐々木千鶴!よろしくですっ!」
「元気すぎてウザイわー」
ボソリと枝野マキがつぶやく。
一瞬佐々木は静まるが、瞬く間に笑顔になり、
「じゃ、みんなでユニークな出し物を考え・・・・・・」
「異議あり」
枝野がさっと手を挙げる。
冷血女VS熱血女。
「ユニークな考えを出し合うようなくだらないことに時間をかけず、シンプルなものにして完成度を上げることにつくすべきだと思う。
熱血過ぎてキモイよ、ジュースぶっかけ女」
「さんせー」
めんどうくさがり屋の勇樹と空馬が賛成意見を出す。
「・・・・・・サツキ、なんか居心地悪いんだけど」
木村が、ボソボソッとつぶやく。
「・・・・・・同感」
俺らは、何も口出ししないことにした。
「黙ってなさいマキ。さもないとこっちで勝手に出し物考えてあんたにコスプレさせるから」
「うわ、見てみた、い・・・・・・・・・・・すみませんでした」
ポロリと本音を言ってしまった勇樹は、枝野にものすごい目つきでにらまれる。
「あのぉ~~~、」
小谷が、縮こまりながら手を挙げる。
「なに?静香ちゃん。あなたぐらいしかまともな意見出せそうもないね」
「なんか、今回の議論のテーマは出し物についてなのに、いろいろずれちゃってるので、話を戻したほうがいいかと・・・・・・・・・・」
ナイス小谷。さすが小谷。
「そうね。
じゃ、まずは出し物を決めよう!クラスごとに集まって案を出して。
かぶらないようにねぇ!」
その号令と共に、がたがたと椅子を鳴らしながら集まるみんな。
大半の人は・・・・・・だるそうだ。
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~勇樹~
――――疲れた。
いやなんかもう、「なんも言えねぇ」だよマジで。
「1組の学園祭の出し物は、『妖怪の店☆ハヤシラーイス』で決定いたしましたー」
ホームルームの時間。
俺と枝野と佐々木は、黒板の前に立ち、クラスのみんなに発表する。
「・・・・・・・・・・・・・・・ごめん、なに言ってるか全然わかんねー」
いや、今のでわかったやつは透視の能力があるぞきっと。
「だから、『妖怪の店☆ハヤシラーイス』だってば」
「え、なに?それは、カフェなわけか?」
その声を発したヤツに向かい、枝野は、
「ハッ。発想がクズね、君」
うおぃ!いきなりクズ呼ばわり!
「カフェ?そんなもんつまんなすぎて客なんて集まんないわよ。
なに?女装カフェ的なのをやりたいつもり?
だったら他のクラスに行け。五クラスくらいはメイドカフェだから」
「・・・・・・・・・・・・えー、枝野がこれほどまでに言うには理由があるんだ。
クズ呼ばわりされたBOY、泣くな」
勇樹さん説明お願いしやーっす!と、佐々木が軽くウインクする。
「まず、俺たちはかったるい話し合いを始めた」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇ、1組どーする?」
「もうカフェとかでいいんじゃない?」
カフェの案を最初に出したのは、枝野だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「っておいおいおい!じゃあなんで俺はクズになるんだよぉ!」
クズ呼ばわりされたやつ・・・・・・いやもういっそ約してk君と呼ぼう。
は、机をバシバシ叩きながら抗議する。
「いや、最後まで話を聞け」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「カフェ?つまんなくない?」
佐々木が口をとがらせる。
「なんか他のクラス、メイドカフェとかやりそうじゃん。かぶるの禁止だからー」
俺は、ものっすごくめんどうくさかったため、投げやりで発言。
「じゃあもうメイドじゃない仮装してカフェやりゃあいいじゃんか。
妖怪とか」
「・・・・・・それだぁ!!!!!!!!それがいいそれにしようそれに決定ッ!!!!!!!!!!!!!」
が、佐々木が妙に気に入ってしまったため、そのまま案は通ってしまった。
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「あぁ。だから『妖怪』ね。
でもさー、『ハヤシラーイス』ってのはなに?」
1人の生徒が発言する。
「まぁ、これもいろいろとあんだよ」
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「じゃあさ、妖怪の仮装するんなら、可愛らしいカフェって感じじゃなくなるから、お昼ごはんとか出す店にしようよ!」
「いいんじゃねぇの?別に」
枝野は、窓の外を見ながら、会話をガン無視する。
「じゃあ、王道のカレーライスにでもするか。これで決定な」
「異議な~ッし」
俺と佐々木で話を進めていると、
「大きく異議ありッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ここで枝野が口を挟んできた。
「なによ。あんた『ライスにルーぶっかけてスプーンで食べるようなお子様定食いやよ』とか言うんでしょうね」
もうすぐ決定!というところで口を挟まれ、佐々木はふてくされた。
「ハヤシライス」
「・・・・・・・・・・・・・は?」
「だから、カレーよりもハヤシだっつってんのよ」
俺は、枝野の発言が理解できなく、数秒固まる。
「え、お前は、ハヤシライスがいいのか?」
「ハヤシライス好きじゃ悪い?あんたに悪影響及ぼしちゃう?」
「いやぁ、そんなに変わんなくない?ハヤシとカレー」
「ッハァ!?てめぇハヤシライスなめてんじゃねぇーよ!」
うわぁ地雷踏みやがったと佐々木が頭を抱える。
なんでも枝野はハヤシライスが大大大大大大大大大好物らしい。
俺と佐々木は、話し合いの時間の残り20分を、ハヤシライスのうまさを語る枝野に付き合わされた。
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「と、いうわけだ」
クラス全員、目がテンだ。
枝野に、そんな部分があったとは。。。。。。。。
「つかさー、お前中学からの知り合いなんだろ?なんで最初からハヤシライスにしなかったんだよ。してたら俺もこんなに苦労しなかったのによー」
「学園祭のことなんて一切口出ししないと思ってたの!こんなにハヤシライスに燃えるとも思ってなかったしぃ!」
まぁ、枝野が佐々木以上に燃えてしまったからには、このクラスの学園祭は成功するのだろう。
多分。