戸部空馬の苦手なヤツ。
~マキ~
『風見学園 学園祭執行部
1組 2組 3組
枝野 マキ 富永春斗 小谷 静香
佐々木 千鶴 木村 里穂 野ノ村 遼平
王野 勇樹 向井 皐月 戸部 空馬 』
サイテーだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでこうなんのよ」
再来月に控えた学園祭のために、風見学園では執行部を作ることになっていた。
候補で決めるのだが、もしもいなかった場合はくじ引きとなる。
あたし・・・・・・1組の候補者は千鶴だけだったから、それ以外の人は全員くじを引いた。
そして、
あたしは、見事だいっきらいなヤツとはずれくじを引いた。
「俺は静香がいるから超満足」
廊下に張り出された紙を見つつ、王野はにやりと笑った。
「あーっもう!何でこんなクソ気持ち悪いショートケーキ男と一緒なのよ!」
「まぁまぁ。あたしと一緒なんだし」
と、なだめる千鶴の顔も、少々こわばっている。
千鶴の目は、3組の名簿に釘付けだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで戸部様が」
ボソリとつぶやく千鶴。
「うっわー、こりゃあ気まずいメンバーだわ」
あたしたちの横では、「キャア!三大美男子全員がそろってるわ!」「立候補すればよかった~」などの黄色い声が上がる。
代われるもんなら代わりたいわ女子共。
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~空馬~
めんどくさい。
めんどくさすぎる。
なんであのくじを引いたんだろ、俺。
3組は、野ノ村と小谷が立候補した。
あと1人・・・ってとこで、くじ引き。
別に、執行部に入ったことは問題ない。ただずっと座ってればいい。
でも、
「佐々木千鶴ちゃんもいるー!安心だね」
小谷が笑顔で言った。
そう。
佐々木千鶴がいなければ、俺はこんなに憂鬱じゃない。
昨日、母さんが突然、
『うちに再来週から女の子がホームステイするから。
空き部屋ないし、空馬の部屋にいれていいわね?』
戸部家では、母さんの命令は絶対だった。
『・・・・・・・・・・でも、俺、一応男なんだけど』
女の子って・・・・・・・・・・・・・・・・と、戸惑うと、
『ホームステイする子、あんたと同じ学校の佐々木さんよ。家庭の事情で1人になったの。
同じ学校の子だったら、手も足も出せないでしょ?』
佐々木千鶴。
熱血タイプで、騒がしくて、明るすぎ。
俺の一番苦手なタイプ。
そんなやつと、学校でも、家でも一緒なんて、うんざりすぎる。
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~皐月~
俺が木村と隣同士で座っていると、
「と、いうわけで。
みんな、学園祭執行部になってくれてありがとー!」
工藤先生(男性・独身・趣味、1人鬼ごっこ)が、涙を流しながら教壇に立った。
「去年はくじ引きで決まった生徒が激怒して執行部ごと消されたんだよ~ッ!
でも!今年はそんな生徒がいないっ!ハッピーだ!」
「すいませーん」
枝野が手を挙げた。
何を言うつもりだ冷血女。
「去年そういうことあったんなら、今年もそれ、やっていいですか?
かったるくてやってらんない。
つか、工藤センセーが気持ち悪すぎて見てらんない」
こらマキ!と、隣に座る佐々木が枝野を静めながら、
「では、あたしが進行を勤めます!」
嵐の学園祭の、幕開けであった・・・・・・・・・・・。