枝野マキのキライなヤツ。
~マキ~
「いやぁ~、やっぱ戸部空馬様はサイコーですなぁ~」
「ちょっ、いきなり人ん家来てなに言い出してんのキモッ」
「うわっ、これだからマキは破局しまくりなんだよ~」
「あぁっ!?」
ガールズトークだかなんだかの分類に入るのかわからないが、こいつ・・・・・・親友の佐々木千鶴はいきなり恋愛話を始めた。
まぁ、こういう話にまっっっっったく興味がないあたしにしたって、何も起こらないが。
「っていうかさ、あの肉なしヤローのどこがいいわけ?頭いいからって授業中いい気になりやがって」
「いやぁねぇもうっ!数学の問題の答えを間違って戸部様に失笑されただけでそんなに怒るなんて。将来シワひどいでしょうねぇ~。ウフッ」
「・・・・・・マジクソキモイ」
「うるさい怒り女」
「黙れキモス」
千鶴は、オレンジジュース(100%と書いてあるがオレンジの味がまったくしない不良品)が入っているコップを持ちながら、
「そいでねそいでね。その戸部様の周辺に立ってた男子がつぶやいてたんだけど。
マキ、また告られたんでしょ?しかも結構なイケメンさんに」
「・・・・・・ノーコメでよろぴく」
「親友にはなんでも話す約束~。約束破りな女って嫌われやすいぞっ!」
こういう話がキライなわけ。
必ずあたしの恋愛事情が舞い込んでくるから。
「だれにされたの?」
千鶴はブクブクとジュースを口で泡立てながら聞いてきた。
「富永・・・・・・なんたら」
「とっ、富永ぁ~ッ!?グッ、ゴホッゴホッ」
千鶴が思いっきり口に含んでいたジュースをぶちまける。
「いきなり叫んで人の家のカーペットにしみを作るなバカたれーッ!!!!」
ギャボッと叫びながら、千鶴はあたしの鉄拳をうけてベットに転がる。
が、すぐに回復して、笑顔で聞いてきた。
「ねぇ!それって富永春斗でしょ!富永春斗!」
「あー、そんな感じの名前だった気がしなくもなくもないようです」
「つか、風見学園で富永っつったら、春斗としか変換つかないよね!」
「へえ。そんなに有名なの。なんかチョコレートみたいに顔茶色だったけど」
「知らない人はいないくらいよ!」
「現在ここにいますけどね」
「ウヒャー。つかありえないほどイケメンなあの顔をチョコレート呼ばわりするなんて・・・・・・」
ありえないヤツ。と、つぶやく千鶴。
しかし、こいつは唯一あたしの過去を知ってるヤツだし、口も頭も性格も最悪だがあたしのことは理解している(時々本気で吐きそうになるほどよく理解している。ストーカーか?)みたいなので。
あたしがなぜこれほどまでに、恋愛ごと――――いや、イケメンが嫌いなのかは、知っているのだ。
「まっ、どうせマキはまたこっぱみじんにフるんでしょ」
「よくわかってんじゃん。恋愛ごとだけは頭フル回転してるね。いや、それ以外に使えないからここだけしかフル回転しないのか」
「必殺!親指滅多刺し!」
千鶴の攻撃を受けつつ、あたしは、富永・・・・・・春なんたらに何と言ってあきらめさせようかと考えていた。