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朝チュンから始まる物語(仮)

作者:鍵屋

 目が醒めたら自分が裸で、身体には情事の後のだるさがあって、隣に男が寝てる――なんてのは、物語の中だけの話だと思ってた。

「ああ、目が醒めたんだね。身体の調子は大丈夫?」
 右隣の男が、そう甘ったるい笑みを向けて言えば、
「のど乾いてねぇか?」
 左隣の男が、気遣うような調子で言う。

 はっきり言おう、何がなんだか、さっぱり理解出来ない!

 記憶違いでなければ、昨日あたしは会社帰りに行きつけのバーに行った。
 駆け付け三杯。は冗談だけど、その勢いでバーテンのおにいちゃんにカクテルを注文。それもアルコール度数の低い女の子が飲むような甘いそれじゃなくて、がっつり来るそれ。
 それを一気に呑み干して、その後はだらだらバーボンをあおる。あおる。あおる。たまにスコッチやジンも。
 とにかく、呑んで、呑んで、呑んで。やっとほろ酔いになったそこに、店のマスターが特製のカクテルをつくってくれた。
 真っ赤な血みたいな色のその中で、死体のように沈むサクランボ。
 刺してある楊枝ごと救出して口の中に放り込み、甘酸っぱいそれを口の中でいじめながらカクテルを堪能。
 ああ、おいしかったわ。とっても。今思い出しても喉がなるほど。

 そこに声をかけて来たのが、見知らぬ男。右隣の男とも左隣の男とも違うことは断言できる。
 だって、両脇の男は思わず惚れちゃうような美男だけど、その男は好みを形にしたような平凡そのものの男。人込みに紛れたら絶対に見つけられなさそうな。
 平凡こそが正義!
 それが信念。だって、平凡であれば恨みをかうことも妬まれたりひがまれたりすることも少ないもの。
 更に呑みながらその人と意気投合。
 それでお持ち帰りされちゃったところまでは記憶がある。美味しくいただかれちゃったところまでは覚えてる。

 それがなんで、どうして!
 こんな美形な男共になってるのよ!




 元左隣の男があたしが現実逃避してる間に水を持ってきてくれて、元右隣の男が甲斐甲斐しく瑞々しい桃を剥いてくれた。
 冷たい水は美味しかったし、桃も甘すぎずあたしの好みだった。そのお陰か体力と気力が戻ったあたしは、改めて現実を直視する。
 元右隣の男はその一挙一動が洗練された、少し長めの髪と仮面のように張り付いた甘ったるい笑みがアイドルを彷彿とさせる男。対する元左隣の男は男らしいや偉丈夫と表現するのがしっくりくる、短い髪を立たせた精悍さ溢れる男。
 うん、やっぱり覚えがない。
「……ねぇ、あなたたち誰なの?」
 十代の小娘ではないあたしは比較的冷静に、でも美男に警戒しつつ訊ねる。
 男共は少し困ったように顔を見合わせたかと思うと、それぞれあたしの手を取る。
「わたしたちには名と呼べるものがないのだと、昨夜お話しした通りです」
「数多もの意識の集合体である俺らを、貴女は昨夜は愛しい人(ダーリン)と呼んだ。だからこれからもそれで構わない」
 手の甲に軽いキスを落としながら男共がいう。
 確かに、理想そのものの平凡男は「名がない」といい、あたしはその男のことを「愛しい人(ダーリン)」と呼んだわ。呼んだけどもっ!
「それはあなたたちのことじゃないはずよ。あたしを騙そうたってそうはいかないわ。
 あの人はどこ?」

 そうだ。
 なんでこの男共が知ってるのかは謎だけど、それよりあの平凡男の行方が気になる。
 一瞬嫌な光景が脳裏をよぎったけど、二十代も半ばを過ぎたあたしをどうこうしたところでメリットはそうないだろう。
 街角にいるちょっと可愛い子程度の顔と、肉付きの悪い骨と皮だけみたいな身体。あまり異性に好まれる体系じゃないことは自覚してる。告白した男の半数はあたしの身体を残念そうにちらりと見たあと、女として見れそうにないと告げてくれたほどだ。性格や関係的なものじゃないのは明らかだった。クソ喰らえ!
 因みに残りの半数は好きな人がいるとか、そんな感じの遠まわしの返事だった。

「あれはわたしたちですよ」
「貴女と交わることで力を得、こうして分離することが叶った」
「未だ集合体であるわたしたちには名はありませんが、陰と陽、光と闇、聖と邪といった具合に分かれることができたのです」

 なにそれ? 余計意味わかんないんだけど!

「わたしたちは、ここではない世界の神々でした」
「神は人には計り知れない力があるが、万能ではない。
 それゆえに、俺らは神の力をより行き渡らせるために幾つにもわかれた。そのための弊害もあった」

 美形ふたりが説明してくれた内容をまとめると、こういうことらしい。

 ひとつ。幾つもの神にわかれたためにより手は行き届くようにはなったものの弱点も多くなったのだと。
 ふたつ。世界は幾つもあって、彼らは違う世界の神から急襲を受けたのだと。で、ひとつめの理由から歯も立たず、消滅を免れるためにひとつになっていったと。
 みっつ。最初のふたり――つまり、今の状態まで戻ったところでなんとか退けることは叶ったけれど力を消耗しすぎて神としてあれなくなったのだと。
 よっつ。力を取り戻すために眠りについたが、気がついた時にはひとりになっていて、自力では元に戻れない状況になっていたと。それがあたしとバーで出会った平凡男の姿だという。

「……わかったわ。あたしにはさっぱり理解出来ないってことが」

 この人たち頭おかしいんじゃないの。顔はいいのにもったいない。
 正直そう思ったのだけど、男共は拒絶の混じったあたしの言葉を見事にスルーしたらしい。

「それで何も問題ありません。ただわたしたちの側にいて、わたしたちの核であるその御霊ともに共にあってくれればよいのです」
「この世界風に言うと、神子として仕えるとでも表すのか。
 俺らを想い、俺らを受け止めろ」

 えっと。つまりどういうことかしら?
 頭が考えることを拒否してるのか、言葉は見事に右から左に流れ出た。

 男共は見事な笑みを浮かべると、それぞれあたしの手を取り手のひらにキスをする。

「わたしたちの乙女」
「どうか俺らと共に歩む道を選んでくれ」

 その懇願するような男共の声に、あたしは拒むことが出来なかった。




 結論を言うと、その後結果として朝っぱらから再びイタシテしまった。
 んで、気が付くと美形が増えていた。

 説明を求めたところ、手順を踏んでこの美形共とスると増えるらしい。

 わかったこと、いつつめ。
 私の魂はこの自称神な美形共の力の核であるらしい。だから側にいるだけで力を得られ、イタすことで一時的にだけど本来の力を取り戻せるらしい。
 その結果、美形が――神が増える。

 もう笑うしかないね。あっははー。…………はぁ。
朝チュンが書きたかっただけで、続きません。続きが書きたい方がいたら(まぁ、いないと思いますが)ご自由にお書きください。
公開するときに連絡くれたなら、画面の前でにやにや出来るので、大変歓びます。


毎度の事ながら、なんで「神」なんでしょうね。どうしてこうなった、です。

それはさておき。ほとんど出てこなかったけど一応は考えた設定としては、
「あたし」は二十代後半。お酒に半端なく強い。二次成長の前で成長をやめたような肉付きのなさ。トラウマがあって「平凡最高、世間に埋没最高」と、平凡が好み。
成長が止まったのは「核」のせいで、イタすことで女らしくなります。ひと月後くらいにAAカップからAカップ(または、Bカップ)になったと、歓ぶことでしょう。
「神」は……なんでもあり? 最初のふたりは慇懃系と武骨系。単に趣味です。

では。またお会いできることを願って。
     2011.04.06.

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