第30話 夢を見る隙が無かった
昨日は本当に楽しかったわ。
仲間とキャッキャと歌って、振り付けを考えて……。
デビュー当時を思い出したわ。
やっぱり仲間はいいわ。と思い出しているところに田中が近づいて来た。
もちろんレッドはその背後にいる。
「ねぇねぇ知ってた?」
「うん? なにを?」
「今日から新キャラの人が来るらしいよ~」
「新人!?」
この現場に、新人が、来る!?
「ガセネタじゃないでしょうね!?」
「監督が言ってたからガセネタじゃないと思うよ~」
女の子!
絶対女の子がいい!
恋バナとかしたい!
恋している相手いないけど、妄想の相手とか今から作るから!
「誰!? どんな人か言ってた!?」
「敵役だって言ってたよ」
ダメかもしれない。
敵のバルガ帝国にいる女キャラは一人だけ。
そしてその役はキラキラ王子が兼ねている。
絶望的じゃないの!
この現場、女の子が増える日はくるのかしら?
「敵役って事はつまり四天王の誰かよね?」
女幹部はキラキラ王子。
あとは砂漠の自称最強と魔導師、あと黒騎士とかいたはず。
黒騎士役の黒い人、いつも収録現場にいるけど、アニメには未登場よね?
もしかして単純にキラキラ王子と一緒に居たいだけ、とか言うのかしら?
「声優が謎なのはあと二人、そのうちの一人かぁ。楽しみだねぇ」
「イケメンとか来ないかしら」
「来ねぇだろ」
そうよね。
私も言ってみただけよ。
下手にイケメンなんて採用して、白藤さんに言い寄ったりバカにしたりしたら、その場で監督が大暴れしてスキャンダルの完成。
……ここでモテる対象でピンク役の白藤さんが浮かぶ辺り、私もだいぶこの現場に毒されてるわね。
「楽しみだなぁ」
その時、スタジオの扉が開いた。
「あっ、来たみたいだよ!」
田中が入口を見る。
つられるように私とレッドも振り返った。
最初に見えたのは、大きな影だった。




