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No.S 〜数字が刻まれた部隊〜  作者: 鬼子
No.1 『現れた数字』
8/55

8 『戦闘訓練2』

 不動が俺の背中を何度も戦いながら言う。


「情けないなぁ!」


「うるさいですよ・・・」


 と言うのも、20代の成人男性が女子中学生に負けたのだ。馬鹿にされても仕方がない。


 皇にさえ腹を抱えて笑われるレベルだ。

 正直、自身はあった。 だが、再生能力が高いと言うだけで、痛みが感じないわけではないし。

 『痛み』と言う恐怖からの支配は逃れられそうにない。


 手も足も出なかった。 一歩及ばない。ではなく、幾つも、数えきれないくらいの何かが俺にはなかった。


「次、不動さんと皇くんですよ。 準備してください」


 そう言うと、ささっと準備運動を終え、歩いていく。


「不動さん、俺負けねぇっすから!」


「俺だって負ける気はないよ」


 ともに高め合う。これが青春か?

 俺が経験しなかったせいか、その後ろ姿は眩しく見えた。


 座りながら背中を見送る俺のそばに、有栖川が大きな端末を持ってくる。


「一緒・・・見よう」


 どうやら、観戦をしたいと言っているようだ。


「おう・・・」


 気まずい。

 あまり話さない子だし、今の若い子はどんな話をするのだろう・・・


 端末に不動と皇が映る。


「どんな闘いになるかな?」


「・・・皇には・・・勝てない・・・」


 有栖川はそう言った。

 見た目だけじゃわからない何かがあるんだろうか。


「あなたは・・・恐怖に・・・支配されすぎ・・・。死を・・・恐れないで・・・」


 有栖川が端末の画面を見ながら言った。


「人間は臆病くらいが長生きするんだよ、有栖川さんは強いね」


 俺がそう言うと、ため息をつきながら俺の瞳を覗き込むように見つめてくる。


「私は・・・怖くない・・・慣れてるから・・・」


 恐怖を捨てたと・・・そう言うのだろうか。

 死にたいしての恐怖は消えるはずがない。それが消えてしまっては、生物としての何かが欠落した状態になってしまう。


 刹那、訓練開始の合図のように銃声が鳴り響く。

 突然の音に身体が跳ね、端末をみると、不動がすでに走り出していた。


 一方の皇は目を瞑ったまま動かない。


「なんで動かない?」


「音を・・・聞いてる・・・」


 有栖川はそう言うが、障害物も多く、音は遮断されやすいはずだ。

 それに、かなりの距離が離れてる。

 叫び声ならともかく、足音は聞こえないはず。なんせ、俺には聞こえてない。


「さっきの銃声は?」


「あれは・・・皇の・・・音を・・・反射させて・・・地形を・・・把握したの・・・」


 なるほどなるほど、って出来るかい!

 聞けば聞くほど化け物じみてきた。

 皇の『聴力』はそこまで強力な者なのか?


「湊さん・・・不動さんが・・・捉えた」


 端末に目を落とすと、不動は皇の頭上にいた。

 距離にすると20メートルもないかもしれない。


 不動が落下の勢いに乗せるように皇に両刃剣を振り下ろす。

 かなりの速度、視認してからの回避は不可能。

 それでも、皇は目を閉じたままだった。


「何してるんだ⁉︎」


「見てて・・・」


 皇の脳天に両刃剣が叩き込まれる瞬間、皇が身体を逸らして回避をした。

 目を瞑ったままだ。


「なんで・・・」


 端末を見続ける。

 何が起きているのかを把握するためだ。

 不動はありとあらゆる角度からの攻撃を繰り返すが、それは一撃も当たらずに皇に回避される。


 だが、皇は回避しているだけだ。一向に反撃をしない。


「動く・・・」


 有栖川がそう言った瞬間、皇の身体がグニャリと曲がった。

 正確にはそう見えただけだ。

 そのくらい早かった。


 数発、不規則な皇の攻撃が不動を襲う。

 だが、見る能力は凄まじく、かなり余裕がある回避をした。

 だが、それでも不動は驚いている。


「なんなんだ今の⁉︎」


 不動の声が響いた。

 姿は見えない、表情は端末でしか確認ができない。

 だが、声だけで十分受け取れるほどの焦りが伝わってきた。


 動体視力・・・不動の目を持っても、驚きと焦りを感じさせる攻撃だったのだ。


「そこまで!」


 神宮寺から声がかかる。

 正直、これ以上やっても決着はつかないだろう。

 体力が尽きるまでの耐久戦になるのは目に見えている。


 フィールドから出てくる不動と皇を見る。

 汗一つかかずに、不動はあれだけの動きをしていた。皇は息を切らさずに不動の攻撃を全て回避した。


 番号は強さじゃないのか?

 ・・・まぁ、一撃必殺の銃も当たらなければ鉄の塊だ。 今の俺はそう言う状態なんだと・・・実感した。

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