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No.S 〜数字が刻まれた部隊〜  作者: 鬼子
No.1 『現れた数字』
2/55

2 『数字保持』

 鏡で自分の舌に刻まれた4の数字を見る。

 

「マジかよ・・・」


 焦った心を落ち着かせようと、温かい飲み物を用意する。

 ココアでいいよな?


 棚を開けマグカップに手をかけた瞬間、パキッと音を立てて取手が外れた。


「あれ・・・」


 自分の手右手に握られた取手を見て、握り込むと手の中からバリバリっと音が鳴り、開いた時には粉々になっていた。

 破片の過程で掌に傷が付いたのか、傷から赤い鮮血が滴るが、数秒で完治した。


「・・・マズイ」


 頭をよぎるのは研究者のモルモットになることだった。

 その日は焦りを無理矢理かき消す様に眠りについた。


 外から日差しが差し込む。

 今日は仕事の日だ。


「マスクしていけば大丈夫だよな・・・」


 玄関を開け、外に出る。

 住んでいるところはただのマンションだ。


「あ、湊さん。おはようございます」


 声をかけてきたのは隣に住む女子高生だ。

 特に接点はなく、こうして登校前にあったら挨拶をする程度の中だ。


「あ、うん。おはよう」


 そういうと女子高生は首を傾げた。


「何かあったんですか?」


「いや、ちょっと風邪気味でね・・・はは・・・」


 そう言い残し足早にその場から離れる。

 気分を悪くさせないといいが・・・


 会社に着くと、デスクに座りいつも通り仕事を始める。

 次々と社員が出勤してくる。


「あ、湊さんおはようございます」


「おはよう」


 後輩の女性に挨拶され、返す。


「マスクなんて珍しいですね」


「あー・・・ちょっと風邪気味でね」


 そういうと後輩がムッとした。

 何かまずい事を言っただろうか。


「今日ご飯行きませんか?って聞こうとしてたんですよぉ」


「はは、ごめんね。また今度・・・」


 また今度。

 なんならこのままなくなって欲しいとも思う。

 俺を誘う理由がないし、今は数字の事を隠したい。


 力を抜かないと今使ってる機材も全て破壊しそうだ。

 身体能力の向上だろうか。


 破壊するのは単純に筋力の上昇か?

 周りに数字保持者、いや今はナンバーズだったか。がいないから、何が能力かわからない。


 昼休憩になると、とりあえず1人になれる場所を探して昼飯を食べる。


 午後もいつも通りに仕事を進めては特に変わったことはなかった。


 勤務が終わり、帰路に着く。

 隠し通さなければと言う心を常に持っていたからか、今日は異様に疲れた気がする。


 帰りにスーパーに寄って夕飯の材料を買おう。

 それから・・・


 色々と考えながら歩いていると、爆発音が鳴り響く。


「なんだ・・・?」


 音がした方に行ってみると、車が山積みにされ近くの銀行が破壊されていた。


「何してるんだ・・・」


 人の目が集まる中心にいたのは、筋肉質の背の高い男だった。

 右肩に93の数字が刻まれている。


「な、ナンバーズか?」


 93・・・かなり下の数字だが、能力は怪力か?


「早く警察を呼べ!」

「動画撮ってんじゃねぇよ!」


 野次馬が増え始め、怒号が飛び交う。


 その野次馬の中を見ていると、見知った顔があった。


「町田さん!」


「え、湊先輩?」


 会社でご飯を誘ってきた後輩の姿をだった。


「こんな所で何してるんですか?」


「それはこっちのセリフだ。早くこの場所から離れるぞ!」


 瞬間、世界がスローになる。

 感覚が研ぎ澄まされるような、音が、空気が、風が、匂いが、全てを感じ取る。


 左腕が勝手に動き、パァンとデカい音がなる。


「先輩・・・?」


 俺の左腕は、左手は小石を掴んでいた。

 それはあのナンバーズが投げた物だろう。

 音からして、かなりの力、速度が出ていたと思う。


「イチャイチャしてんじゃね!」


 完全に嫉妬による攻撃だった。

 だが、今はそんな事どうでもいい。


 視界の外からの投擲、10メートル以上は離れているから感覚の外だろう。

 それでも、俺の体は無意識的に石を取った。


 防衛本能も強化されてる?


 ポタポタと血が滴る。


「先輩・・・血が・・・」


「いや、大丈夫だから」


 言葉通り、1秒もしないで傷が再生する。

 なんだ・・・なんだよこれ。


 投擲者を見ると、驚いた顔をしている。

 自慢の怪力が効かなかったからか。

 だが、野次馬の目もこちらに集中している。


 マズイ・・・逃げないと・・・


 一瞬頭の中に実験される風景が浮かぶ。

 

 いや、逃げるな。

 現代じゃネットリテラシーなんてない。他人の顔を面白半分で晒す若者も増えてきている。どこへ行った、プライバシー・・・

 でも、晒されることはもう避けられない。なら友好的な態度を取っておけば、モルモットになる確率は下がるんじゃないのか?

 

 少なくとも、逃げて怪しまれるよりいいだろう。

 確証はないが・・・


「町田さん・・・内緒でお願いします」


 あぁ、これで今の会社にも居場所はなくなる。

 就職を喜んでくれた両親になんで言えばいい?


「あの、先輩・・・」


 町田が俺に声をかける。

 俺はそれを無視して、ナンバーズの1人、93番の元にゆっくり歩く。


「君!離れなさい、危ないぞ!」

「お兄さん、近づかないで!」


 大丈夫。大丈夫。 俺も、ナンバーズですから。

 心でそう思った。


「先輩!」


 町田の声が後ろから響く。

 ゆっくりと振り返り、マスクを外す。

 口を開き、舌を出した。


 瞬間、周囲がざわつく。


「ナ、ナンバーズ・・・」

「4番⁉︎」


 舌をしまい、93番を見る。


「あー、やめませんか?こう言うの」


 正直戦いたくない。

 俺は喧嘩が嫌いだ。 テレビでよくやるブチギレドッキリ的なのも心が痛む。


「あ?ウルセェよ。 4番だからイキってんのか?」


 93番が嫌味のように言った。


「いや、そういう訳じゃないですけど。ほら、みなさん見てますし、子供とか・・・それに、ネットに顔は晒されると思います。俺も、あなたも。悪いことすると、ほら、ね?」


 俺がそういうと93番は衝撃的な発言をした。


「ならここにいる全員ぶち殺せばいい」


「は?」


 その言葉に声が出なかった。


「だから、晒される前にスマホも何も破壊すればいい。 それに、警察が来ても意味ないぞ。俺は負けない」


 こいつまじで言ってんのか?

 頭イカれてるだけか? デカい力を持って強くなった気でいるのか?


「いや、だから」


 俺が何かを言おうとするとわ何かが顔の横を掠めた。 瞬間、背後からバキっと音が鳴り、叫び声がする。


 振り返ると、壊れたベビーカーがあった。

 幸い、壊れているのはタイヤだけで赤ん坊に害はないみたいだ。

 母親は赤ん坊を抱えて、崩れ落ちる


「次は当てる。 俺は元野球選手でな、コントロールには自信があるんだ」


 そう言った93番は、車の装甲を剥がし、マシュマロを潰すかの如く簡単に小石サイズまで手で圧縮した。


「さぁ、ナンバーズ同士で戦うとどうなるか知りたかったんだよ。 ちょうどいい、やり合おうぜ!」


 93番はそう言いながら俺に鉄の塊を投げてきた。

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