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No.S 〜数字が刻まれた部隊〜  作者: 鬼子
No.3 『絶唱の歌姫』
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1 『虚構の太陽』

 医務室から出ると、ちょうど神宮寺と鉢合わせた。


「湊・・・」


「神宮寺、帰ってきてたのか」


 透華の母親を送ってから帰ってきて、多分様子を見るために医務室に足を運んだ・・・と言ったところだろう。


「ご苦労だったな」


「いや、別にぃ? 医務室に来るなんて初めてだしワクワクもあったな。 夕日を見ながらだから痛みは忘れられた」


 俺がそう言うと、神宮寺は眉を歪めた。


「何を言っているんだ。ここは地下だぞ? 夕日があるわけないだろう」


 あれ、本当だ。

 この基地は地下にある。夕日が見えるはずがない、じゃああれは。


 俺は医務室の扉を開け、夕日に似た何かの光を指差す。


「じゃああれはなんだ?」


「あ、あぁ! 溶鉱炉のことか」


 溶鉱炉? 普通は黒い筒状の変なやつじゃないのか。


「そんな顔をするな。溶鉱炉と呼んでいるだけだ。特に名前はないからな」


 俺が理解していない顔をしていたのか、指摘される。


「まぁ、あれはお前らの武器を作るためだ。必要なんだよ」


「熱は感じないな」


「そう設計してあるからな」


 なるほどなぁ。

 溶鉱炉モドキというわけか。 あそこから俺たちの武器が出来上がるんだろうか。


「武器がないと、お前らはナンバーズと戦えないからな」


 生物兵器としても導入されているらしいからな。

 武器は必要だろう。


 そこで、ある奇妙な事が頭をよぎる。

 神宮寺が言っていた軍では太刀打ちできないと言っていた点だ。

 神宮寺との初対面は、ナンバーズを撃ち殺すシーンだ。それは通常通りの武器での殺害も可能にすると、俺は勝手に思っていた。


「なぁ、神宮寺」


 俺の呼びかけに軽く視線をこちらに向ける。


「神宮寺は最初、ナンバーズを殺害したよな? 軍が動かせるなら、ナンバーズの四方を囲んで、銃を打ち込めばいいんじゃないか?」


「ナンバーズに普通の銃は効かない・・・」


 いや、そんなわけないだろ。

 俺の質問に神宮寺は険しい顔をする。


「効かないってのは語弊があるな・・・効きにくいが正解だな。ナンバーズは身体能力が上がる。これは一般的に言う身体能力が高い人ではなく、字の如く『身体の能力』が高い。 そして、お前ほどではないが治癒能力も桁違いに高い。 骨折は数時間で完治するだろう」


「マジか・・・」


 神宮寺が通路の壁に体重を預ける。

 そして、腰に携えたホルダーから銃を抜く。


「仕掛けがあるのは銃じゃなく弾だ。 それも超能力的ではなく化学的。 まぁ、私は化学は苦手でな、よくわからないんだが、打ち込んだ傷は火傷が続くらしい。最も、お前には効かないみたいだがな」


 マガジンを抜いて、弾丸を指差し、軽く説明した後マガジンをセットしてホルダーに挿す。


「傷が治るなら、傷をつけ続ければいいじゃない。いわば毒を塗った矢のような感じだな。単純な作戦だが、案外ハマるものだな」


 神宮寺は苦笑しながら言った。


「なるほど、それであの溶鉱炉。 俺たちの武器には全部その加工が?」


「そうだ」


 だが、俺の最初の質問にはまだ答えていない。

 それなら、一般の兵士に弾丸を利用させれば解決する話だ。


「なぁ、なんでその弾丸を使わない?取り囲んでやればいけるだろ」


「そんな事をしたら、国とナンバーズの戦争が始まる。 それに、その構図になるまでに何人の兵士が死ぬか考えたくもない。逃げられた日には、弾薬と命を無駄に浪費しただけになってしまう」


 そうか・・・豪脚の能力を持っていた奴がいたな。

 簡単に言えば高速に移動ができた。瞬間移動という奴だ。 あれだと、一人を取り囲む間に何人か、何十人かは犠牲になるかもな・・・


 俺は顎に手を当てながら少し考える。

 その思考を遮るように、神宮寺が口を開いた。


「あぁそうだ。新しい情報だ」


 俺が視線を少し上げ、神宮寺を見つめると、話を続けた。


「ナンバーズはあくまでも人間だ。まぁかなり強化されてはいるが、死と言う概念から逃れられないように、人間にある別の機能もしっかり備わっている」


「別の機能?」


 なんのことを言っているのかわからない。

 聞き返すと、ため息をつきながら神宮寺は言った。


「弦楽器を触る人間は、指の皮を切る。再生すれば分厚くなり、硬くなる。 スポーツ選手は骨折をする。骨は折れれば硬くなる」


 まて、嫌な予感がする。


「筋繊維は再生して、太くなる。他にも、暑さや寒さは慣れもある。全て能力には敵わないが、ある程度の強化ができる」


「冗談だろ!?身体能力の強化が可能なのか?」


 冗談じゃない。

 ただでさえかなりの能力が備わっているのに、さらに強化ができるのか!?

 確かに、これからの戦闘は苛烈化しそうだな・・・


 刹那、基地全体に警報が鳴る。

 

「警報発令。 秋葉原にてナンバーズを確認。入手した情報から、敵対対象ではないと判断。おそらく、ナンバーズになりたて、突然変異の可能性あり、スレイヤーズは直ちに出撃して、対象を保護してください。繰り返します・・・」


 警報が情報を羅列しながら話す。

 神宮寺は手をヒラヒラとさせていった。


「行きたまえ、お前らの初任務だ。 気をつけろよ」


「了解」


 警報を聞き、走り出す。

 途中で不動らと合流する。


「湊くん、初任務は秋葉原かぁ。 あ、君は大阪か」


「大阪のはノーカンですね、チームでの初任務はこれです」


 そう言うと、勢いよく扉を開け、皇が入ってきた。


「いやぁ、初任務!ワクワクするっス! いや、大阪に行ったから初任務じゃないかな」


「皇、それはノーカンだ」


 俺がそう言うと、皇はなるほどぉ。と言いながら軍服に袖を通した。

 着替えが終わり、更衣室を出ると、透華がすでに待機していた


「遅い!」


「悪いな、透華。行くぞ!」


 不動が運転する車に乗り込み、移動を始める。


「渋滞にハマったらどうするんスか!?」


「その時は走る!」


 えぇーー! と仰け反る皇を横目に、目的を確認する。

 対象の保護・・・ なんだが一番難しそうな任務だ。。

 目的地は秋葉原。

 安全な任務であってくれ

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