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No.S 〜数字が刻まれた部隊〜  作者: 鬼子
No.2 『闇に潜む者』
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7 『人殺し』

 音の世界。

 それは皇が支配する世界と言っても過言ではなかった。


 どこからか足音が響く。


「音だと?それがどうした!」


 瞬間、大きな水音がバシャバシャと聞こえ、何やら近づいてくる。


 風を切る音が耳を刺し、その数秒後、大きな水音が一回響いて、再度静寂に包まれた。


「まず一人」


 皇が呟いた。


「クソっ! あの男、大して役にも立たずに死にやがった!」


 皇と御堂筋の言動から男が死んだことが読み取れる。

 なら、後一人。


 暗闇と水の世界。

 水がなければ音はわからないが、暗闇が残っていては何もわからない。


 御堂筋が動いたのか、水音が響いた。

 瞬間、確かな足取り、迷いない足で水を踏む音が聞こえる。

 金属音が響き、火花が散る。


「クソっ!」


 それと同時に館内の明かりが突如として動作する。

 見渡すと白銀達の姿がない。

 きっと、彼らがつけてくれたのだろう。


「なんで、なんでや!」


 御堂筋が明かりを見ながら驚く。

 なんでついたんだと言わんばかりだ。


 水は自身の位置を知らせ、俺に見られていると察した御堂筋はやばいと思ったのだろう、持っているナイフにどこからか姿を現した爆竹を巻きつけ、火をつけて天井に幾つもさす。


「お前ら!全員!」


 何かを言おうとした御堂筋を遮るように爆竹が鳴り響き、あまりの爆音に皇が耳を塞ぐ。

 この一個の選択がミスを招く。


 その隙を見逃さなかった御堂筋は走り出し、皇の頭を掴みながら水面に落とす。

 その衝撃で武器を落とした皇は、御堂筋の腕を掴み、抗おうとする。


「皇!」


「動くなぁ! 動いたらコイツを殺す・・・一歩も動くなよ・・・」


 御堂筋が低い声で唸った。

 

「お前・・・!」


「手ぇ上げんかい!こっちは仲間の首にナイフ置いとんねん!テメェがチャカ抜く前に、喉掻っ切るぞ!」


 持った刀ではどうしようもできない。

 一歩、いや少しでも変な動きをしようものなら、皇の命はここで途絶える。


 刀を持ったままゆっくりと手を上げる。

 

「武器を置け、信用できへん」


「何が信用だ、犯罪者が」


 俺の言った言葉にカチンと来たのか、御堂筋がこちらを睨む。


「なんやて?」


「いや、別に?」


 刀を握った右手を前に出し、よく見えるように床に落とす。

 上半身から下半身、膝の高さまで来た瞬間に俺は刀を蹴り上げる。


 刀に集中していた御堂筋は反応が少し遅れ、喉を切るより早く刀が眼前に迫る。


 それを回避しようと体をそらせた御堂筋の隙を見逃さずに銃を抜き、肩に一発。


「初めて実銃使ったけど、当たった!」


 嬉しさのあまり声に出てしまったが、痛みでさらにのけ反った御堂筋に瞬時に距離を詰める。


 御堂筋の服を掴もうとした瞬間、ナイフが視界に入る。 それを手のひらで受け止める。

 ナイフは手を貫通し、赤い飛沫をあげた。


 銃を持つ方の手で腹部に2発。

 そこで御堂筋は倒れた。


「ぐぅぁぁぁぁ・・・」


 痛みに小さく呻く御堂筋を見つめ、穴の空いた腹部に足を乗せる。


「あぁぁぁぁ!」


 傷口がさらに開いたのか、水に赤色が混じる。


「俺も一人。 これで戻れない」


 パァンと大きな銃声が数発館内に響いた。

 

 息をしなくなった御堂筋を見つめ、端末を取り出す。


「あ、俺だ。 あんたの言った通り、犯人は水族館にいた。 これから従業員を探す。生存者がいたりしたら回収して欲しい。合流してくれ」


「あぁ、分かった。湊、少し変わったか?」


 電話の向こうにいる神宮寺にそう言われた。

 変わった。 なんだろう。


「ん?そうか?」


「いや、なんでもない。すぐに救護班を向かわせる。大阪にある病院にもいくつか連絡済みだ。よろしく頼む」


 通話を切り、皇を起こす。


「大丈夫か?」


 俺の言葉に皇はこっちを見ながら答えた。


「大丈夫っスよ、よく勝ちましたね」


「やぶれかぶれ、ガタガタ戦術だけどな」


 そう言いながら笑う。


「これから生存者を探す。手伝ってくれ」


「了解っス」


 バシャバシャと水を踏みながら散策を開始した。


 

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