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No.S 〜数字が刻まれた部隊〜  作者: 鬼子
No.2 『闇に潜む者』
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6 『豪脚と暗視2』

 自身の手元すら見えない暗闇、現在立っている場所も、相手の立ち位置すら把握できない。

 服の擦れる音と、水の音だけが静寂に響く。


「湊さん、一歩下がって!」


 静寂を切り裂くように皇の声が響いた瞬間、右の脇腹に鋭い痛みが走る。


 ナイフ。

 おそらく、御堂筋の攻撃だろう。

 だが、見えないから反応ができない。

 それに加え、御堂筋は小音の心得があるらしい。

 足音は聞こえず、服が擦れる音でさえ最少と言っても過言ではない。


 裂傷は再生が終わり、傷口が塞がる。

 皇はやはり音が聞こえているのだろう。


 瞬間、場所の特定はできない大きな音がなる。


「いって・・・」


 男がそう呟いた。


「おい!お前、ところ構わず攻撃する奴があるか!もっと頭使わんかい!」


 御堂筋の声が響く。

 なるほど、今の音は男が適当に動いただけか・・・


 背後から息遣いが聞こえる。


「了解・・・」


 そう呟いた後に何かが横を通り抜ける。

 誰だ?


「皇?」


「湊さん、動き続けて!音をくださいっス!」


 その時、ある事を思い出す。

 戦闘訓練でのワンシーンだ。


 有栖川が皇は音で場所を、障害物を把握する。

 だから音を出し続ければ、皇のサポートになる。


「わかった!」


 俺は叫び、銃をホルダーから抜く。

 天井に向け、数秒に一回の感覚で引き金を引く。


 パァンと銃声が鳴り響き、それがソナーの役割を果たす。

 化け物じみた聴力はホログラムで地形を読み取るように音の波長を感じ取る。


「やれ!皇!」


 瞬間、金属音がひびき、一瞬だけ火花が散る。

 その火花は輝き、極小の光となる。


「やってやる・・・」


 俺は走り出し、距離を詰める。

 視界は闇、仲間を攻撃する可能性もある。

 だが、戦わない選択肢は選べない!


「皇、俺に合わせてくれ!」


「おぉ!その言葉仲間っぽいっス!任せてくださいっス!」


 走りながら刀の柄に手をかけ、思い切り振る。

 キンキンと金属音を発しながら刀身が姿を現す。


 大きく振りかぶると、金属音と共に火花が散り、御堂筋の顔が一瞬だけ照らされる。

 目は細く、口は大きい。

 第一印象は・・・詐欺師だった。


「なにしとんねん!これだけ音が鳴ってるんやから、無理矢理にでも攻撃せんかい!」


 御堂筋の怒号が館内に響く。

 瞬間、視界の外、闇の中から風を切る音がする。

 

 パイプか?石?瓦礫か?


 予想はどれも外れ、正解は男本体だ。


 銀色の靴が軌跡を描くように、大きく振られる。

 俺は耐えられる。

 でも、皇は!


「皇!」


 見えない闇に手を伸ばし、何かを掴む。

 布だ。服。どの部位かはわからない。

 材質は軍服に似ているからおそらく皇で間違いない、思い切り力を入れて後ろに投げる。


 我々ナンバーズは身体能力が強化されている。

 わかりやすく言うと、ナンバーズだけレベルキャップが存在しないイメージだ。

 例えば、一般人の最高レベルを100と仮定すると、ナンバーズはレベルの上限が200.300に底上げされる。

 さらに、いくらレベルが低くてもナンバーズになった瞬間、150レベルなどに自動的に調整される。


 そのステータスを基盤に、特化した能力が付与されるイメージだ。

 つまり、何が言いたいかと言うと、ナンバーズになった瞬間、ナンバーズではない人間の身体能力を遥かに凌駕する。


 高校生一人の体重くらいなら、片手で投げられる。


「ぐぁぁぁぁぁ!」


 叫びながら服から手を離す。

 

 瞬間、左半身に激痛が走り、身体が飛ぶ。

 骨が砕ける音が頭蓋骨まで響く。

 人間の体からなってはいけない音がひびき、体が何かに打ち付けられる。


 床に倒れ、呼吸を整える。


 痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


 でも、傷はない!


 立ち上がり、闇を見つめると背後からピシッと音が鳴る。

 奇妙な音に視線を向けるが、闇の世界だ。何があるか確認ができない。


 恐る恐る手を伸ばし、ピッタリと手のひらをつける。

 ツルツルとした素材だ。

 少しだけ振動している。それに、ひんやりと冷たい。


「・・・水槽か?」


 見えないが、嫌な予感がする。

 触れた感じ、かなりでかい水槽だ。

 手に何かがかかり、肘まで垂れる。


「冗談だろ・・・」


 ピシピシッと音が大きくなり、ガラスが割れる。

 大量の水が流れ出て、体が浮遊感に包まれる。

 どのくらいの量だ?

 息ができない。

 身体が流された。


 背中が壁に打ち付けられる。

 立ち上がると、足元からビシャビシャと音が鳴る。

 靴の重み的に、靴底全体は浸水していない。

 2センチくらいか?


 水の逃げ場がないのか、勢いが足りず出ていけなかった水だけ残ったのか?


 だが、以前として目は見えない

 闇の世界じゃ不利だ。

 まぁ、音で場所の特定を頑張るしかない。

 歩けば水の音が・・・音?


「ははははは!」


 瞬間、皇の笑い声が響き渡る。

 

「闇の世界?・・・いいや、俺の世界っスよ、水の流れは、音は消せない!ここからは、俺のターンっス!」


 瞬間、水を思い切り打ち付ける音が響いた。

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