3 『現場』
飛行機に乗り、席に着く。
「俺、飛行機乗るの初めてなんスよ・・・」
「そうか、良かったな」
どうやら皇は飛行機に乗るのが初めてらしい。
俺は小さい頃に一回だけだ。
任務だと言うが、ワクワクするのは抑えられない。
ちなみに、白銀は窓の外を見ている。空港だからね、滑走路見ても面白くないだろ
飛行機のエンジンがかかり、機体がブルブルと小刻みに震える。
「墜落しないっスか⁉︎」
「墜落はしないし、とんでもないから、静かにしろよ」
皇は背もたれにがっつりと体重を乗せ、飛ばされまいと力を入れる。
こう言う部分は子供だな。
飛行機が走り出し、すぐに離陸をした。
簡単に言えばフライト中は何もなかった。
ただ、皇がブツブツと何かを言っていたが、小さい声だったために何言ってたか聞こえなかった。
白銀に関しては、結構飛行機に乗るらしく、皇を見ながら笑っていた。
〜大阪国際空港〜
俺たちは飛行機を降りて、空港を出る。
「ついたぁ・・・時間だと・・・1時間ちょいか。遠いな」
まさか友人助けるために飛行機乗るとは・・・
俺と白銀の後ろをフラフラと皇がついてくる。
「もう・・・嫌っス・・・」
「帰る時も乗るけどな」
かなりグロッキーの皇を見ながら言う。
事件発生から約5時間・・・無事でいてくれているだろうか。
皇は膝に手を置き、荒い息を整える。
パチパチと瞬きをする皇がピタリと止まった。
「皇?どうした? 白銀さん、ちょっと待って」
先に進もうとする白銀を止め、皇に注目する。
皇は数回深呼吸をしたあと、体を起こして何もない壁を見る。
「・・・どうした?」
「パトカーの音がするっス、結構台数ありますね・・・ 湊さん、友人の住所は?」
知らんな。
以前、大阪に美味しいご飯やがあると言う会話で、大阪に住んでるって話をしただけだ。
「知らない・・・」
「なら、目的地もないんですね。行ってみるスか?」
皇の言う通り、場所がわからない以上探しようがない。実名を知っていれば調べられたりしたかもな・・・だが、インターネットで実名を聞くのはマナー違反だ。出来るわけがない。
「そうだな。白銀さん、皇がパトカーの音がする方向に行くってさ、場所もわからないですし、もしかしたらも考えると行ったほうがいいかと」
「別にいいですけど・・・パトカーの・・・音?」
白銀が首を傾げながら皇が見ていた方向をみる。
そう。パトカーのサイレンは、俺と白銀には一切聴こえていない。これは『聴力』の能力を所持する皇だけがもつ索敵方法だ。
「じゃあ、ついてきてください」
歩いて約1時間分程度、空港から3キロちょいくらいか?
走ったり止まったり、迷ったりしていたから実際の距離はもっとあるかもしれない。
車が4台ほど止まってるアパートの前に来た。
近くて主婦が何やら話している。
「すいません、何かあったんですか?」
「いやぁね、そこのアパートの一部屋がね?扉を破壊されて住んでた人が見つからないんだって!」
ビンゴ。
皇がいてくれたおかげで簡単に現場を見つけられた。
あとは警察か・・・
鑑識とかはまだ来てないのか?
アパートの2階、扉が破壊された部屋だ。
「すいません、危ないので近づかないでください」
警官の一人が俺たちに声をかけてきた。
現場に一般人は立ち入れないと、まぁ常識だわな。
そうすると、皇が俺たちの前に一歩出る。
警官に身分証を見せ、スマホを手渡す。
相手は神宮寺だろう。
警官は俺たちを見るなり
「ナンバーズ特化調査班?」
警官がそんなことを言いながら俺たちに視線を送る。
それに気づいた俺たちは警官に番号を見せる。
警官は目を大きく開き、何度か頷き頭をペコペコ下げた後に電話を切ってスマホを皇に返す。
「すいません、確認は取れましたので、どうぞ」
警官に案内されて2階に上がる。
想像通り、扉は外から引かれるようにひしゃげている。
「ドアノブを引きちぎって取手がなくなったから、扉に指突っ込んで引いたな・・・脳筋が」
確認した扉は、指のあとで穴が空いている。
指を穴に入れ、引っ掛けるようにして扉を引き抜いたのがわかる。
「どうスか?何かわかりました?」
「取り敢えず、怪力の能力は確実だな・・・類似した能力でもあるのか?」
刹那、ポケットのスマホが震える。
「はい・・・」
「聞こえるか?」
相手は神宮寺だ。
「あぁ、大丈夫。聞こえてる」
なんかあるのだろうか?
向こうから連絡なんて珍しい。
「よく聞け、近くに水族館がある。ジンベイザメが収容されてる水族館だ」
「水族館?・・・それがなんだ」
俺がそういうと、向こう側からガサガサと何か資料を漁る音がする。
「そこがな・・・飼育も行き届いているが、従業員が数日前から姿が見えない。全員消えたんだ。それと同時に、営業を停止している。そこを拠点に何かしらがいるかもしれん、行ってみる価値はあると思うが?」
確かに・・・行ってみるしかないな。
「了解・・・行ってみる」
「気をつけるんだぞ」
取り敢えず、近くの水族館とやらに向かうことにした。