表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/61

寝たふり

いつもありがとうございます。

「俺はずっとシャンを見ていたから、シャンが誰を好きなのかはよくわかっていますよ。だからクリス殿下、恐ろしいほどまでの嫉妬心を俺に向けてくるのはやめてください」

 ラスティが苦笑いをしている。

 俺はさっき、そんなに恐ろしい表情をしていたのだろうか。

 顔に手を当てて考え込んでしまう。


「本当に自覚ないんですか?」

 ラスティが力なく笑った。


「本当にクリス殿下もシャンディもいつまで拗らせているんですか?俺にとってはこのまま拗らせておいたほうが都合がよかったんですよ」

 ラスティが呆れたように言う。

 そして、俺を真剣な眼差しで見据えた。


「でもね、昨夜のあのシャンの言葉の意味を知っていると知っていないではフェアじゃないから、いまお伝えしました。あとはシャンから真意を聞いてください。シャンがちゃんと言葉の意味まで貴方に伝える意思があるのかどうなのかはわかりませんが」


 もう、驚き過ぎて言葉が出ない。


 そして、ラスティに「ありがとう」しか言えなかった。




 この人達は、人の頭の上でなんという話をしているんだ。


 人の話し声が頭の上で聞こえるなと、目が覚めた。

 まだ寝ぼけているのか、食堂の壁際の床で寝たはずなのに、どうして寝台で寝ているのか、ここの部屋は誰の部屋なのか理解ができない。


 人の話し声はどうやらクリス殿下とラスティのようだ。

 聞き耳を立てれば、クリス殿下とラスティはわたしのことでとんでもない話をしていた。

 

 おかげで微動だに出来ないし、目を開けることもできない。

 ふたりの話している内容がわたしがクリス殿下に一世一代の決心で伝えた「わたしの死体をよろしく」なので、恥ずかし過ぎるので絶対に起きていることはバレたくない。


 いま、どんな顔をして、ふたりを見たらいいのかわからないのだ。


 とりあえず、聞かなかったことにしよう。

 よくわからないけど、左腕がひどく熱くて痛い。


 平和っていい。

 こんなに心穏やかにゆっくり眠るのは久しぶりかも知れない。

 もう隣国が攻めてくることはない。

 

 そんなことをゆっくり考えていたら、寝台の心地良さに再び眠気が襲ってきて意識が遠のいた。




 ♢


 翌朝、わたしが目を覚ますと部屋がすごい状態だった。


 床の上で散乱した食べ物と酒と一緒にクリス殿下とラスティとそして師匠のシャムロックが折り重なるようにして寝ている。


 これはなにが起こったのだ。

 

 とりあえず、からだが重くて起き上がれないのでじっとしていたら、クリス殿下が起き出して、ふたりを揺すって起こし出した。


 ようやく起きたラスティとシャムロックはふたりでフラフラしながら、扉に向かい出ていった。


 ちょっと、わたしがまだ残っているんですけど。ラスティも師匠もわたしを連れて帰ってくれないの?


 慌てて起きあがろうとするが、からだに力が入らない。


 クリス殿下とふたりきりになった。

 とりあえず、寝ているフリを続ける。


 クリス殿下がツカツカと寝台に近づいてきた。


「シャンディ、寝たふりはもういいよ。起き上がれる?」

 バレてましたか?


 仕方なく、ソロリと目を開ける。


 目に飛び込んできたのは、あの綺麗な青い瞳だった。

 クリス殿下が寝台に腰を下ろし、寝ているわたしの頭を優しく撫でてくれる。


 そして、額で手を止めた。


「まだ、熱はあるね」


 そう言うと、わたしをゆっくり起こしてくれた。

 そして、寝台の横のナイトテーブルに置いてあった水差しからグラスに水を注ぎ、薬らしいものも持ってきた。


「シャンディに言いたいことがたくさんあるけど、いまは痛み止めの薬を飲もう」

 なぜか、クリス殿下が薬をポイってご自分の口に入れて、グラスの水を口に含む。


 えっ?わたしの薬じゃなかったけ?


 呆気に取られ、ボゥ〜とクリス殿下を見ていたら、わたしの両頬をクリス殿下の手が包み込む。


 そして、クリス殿下の顔が近づいたと思ったら、柔らかい唇の感触がして、水が流し込まれた。


 ゴクンッ

 わたしは大きく目を見開いたままで口移しで薬を飲まされた。


 突然のことに耳まで熱く真っ赤にしながら、クリス殿下を見つめた。


読んでいただき、ありがとうございました。



★「続きが早く読みたい」と思われた方や面白いと思われた方、ブックマークや下記の評価をどうぞよろしくお願いします!

作者のモチベーションが上がります。



☆お知らせ☆

コミカライズされました。

「幼馴染は隣国の殿下!?〜訳アリな2人の王都事件簿〜」

まんが王国さん他で電子配信中。

作画は実力派の渡部サキ先生!

溺愛&事件&ほっこり系です。

原作はなろう、ノベルバで投稿中。

(現在、第2章真っ只中です)

マンガも原作もお楽しみ頂ければ、幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ