豪華な船旅からの非日常なる冒険:島に流れ着いた付き人とお嬢様の物語
この小説は、豪華な船旅から始まる非日常な冒険物語です。主人公の付き人アレンとお嬢様メイが、海難事故に遭い目覚めた島で、恐ろしい儀式や謎に巻き込まれる様子を描いています。果たして2人は、謎を解き明かし生還することができるのでしょうか。ぜひご一読ください。
「メイ様、こちらにどうぞ」
金に縁取られた派手な装飾のテーブルには、いい香りを漂わせるディナーが並んでいる。
付き人のアレンは、メイの前の椅子を引き、座るように促した。
メイが椅子に腰掛けると、アレンはメイから離れ後ろに立ち、すぐ指示があってもいいようにメイを見つめていた。
「メイ、この船旅はどうだ?今日はお前の誕生日だろう?豪華にしたんだ。」
メイが腰掛けた途端に早口で捲し立てるのはメイの父トーマスである。
「素晴らしい船旅です。お昼に楽しい劇も見れて、このディナーもすごく美味しそう。わたしの大好きな子羊のステーキも...感謝します」
トーマスは満足そうにすると、
「では、食事を始めよう。たまに揺れることがあるだろうが、気にすることはない。なんせ、世界一豪華な船のスイートルームだからな!」
そう笑って食事を始めた。トーマスが食べ始めたのをみて、となりでただ微笑んでいメイの母アンナも食事を始めた。
メイも、アレンも食事を取るよう退室を促したあと、真っ先に好物のステーキを口に運んだ。
食事が終わると、メイはアレンを呼びつけ船の中にある小さな図書室に2人きりでいた。
「船の中に本が読める場所があるなんて、すごいわよね。」
「メイ様は本当に本がお好きですね。折角のお誕生日なのに、外のパーティにご参加されなくて良いのですか?」
「あとで参加して、今は船酔いしてることにすればいいのよ。そんなことよりも、早速"いつもの"始めるわよ。」
「本当に変わったお方だ。」
アレンは黒髪をさらりと靡かせながらくすりと笑った。
付き人のアレンは、メイと同じくらいの年で、路頭に迷っていたところをメイが見つけ、メイの付き人として雇われた。トーマスは最初反対したが、あまりにもメイがしつこいため、ついに承諾したのだった。
アレンは自分の誕生日も名前もわからぬままだったが、メイに助けられたおかげで名前や食事、居場所を見つけることができた。
隙間の時間で本の読み方をメイがアレンに教えることが"いつもの"ことであり、その時間はメイにとってもアレンにとっても、大事な時間だった。
本来付き人は、ここまで近くにいてはいけない。ましてや、読み書きを教わるなどとんでもないことだったが、メイはアレンが言うように変わっていて、そしてこっそり何かをしたりごまかすのが得意だった。
そうして大事な時間を過ごした後、2人はパーティに遅れて参加した。
「メイ様、お誕生日おめでとうございます」
様々な大人がメイを取り囲み、メイの誕生日を祝った。
メイが一人一人に感謝と世間話を伝えていると、突然船がぐらりと大きく揺れた。
「皆様、落ち着いて船内にお戻りください!」
船員のアナウンスも虚しく、若干のパニックが起きる中、アレンは真っ先にメイを守りに向かった。