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8話。魔王の剣で、勇者の聖剣を叩き壊す

「これは魔王の剣──魔剣ティルフィングだ」


 試しに魔剣を一振りすると、ほとばしった黒炎により、倉庫の天井が吹っ飛んだ。

 

「ハァアアアア!? なんだ、そのデタラメな力は!?」

「なんとッ!? これは本物であるぞ、サーシャよ!」


 青空を見上げて、アレスたちは驚愕する。

 俺は軽い疲労感を覚えた。

 なるほど……魔剣と呼ばれる訳だ。この剣は使い手の魔力を吸収して、黒炎の破壊力に変換している。手にしているだけで、魔力が異常な速度で吸われるぞ。


 今の俺でも、これを手にして戦えるのは、せいぜい15分というところか。

 どうやら、いきなりピーキーなスキルを選択してしまったらしい。


 こういったリスクの高いスキルを活用するためには、【魔力量アップ】などの基本スキルを修得する必要があるのだが、俺はその過程をすっ飛ばしてしまった。


 【黒魔術師ダーク・スター】は……なるほど1週目からのステータス引き継ぎを前提とした、玄人向けクラスのようだ。


 もしレベル1の状態で、【魔剣召喚】などしたら、魔剣にあっという間にすべての魔力を奪われて自滅していただろう。

 それにしても……


「……しまった。加減がわからなくて、いきなり天井を吹っ飛ばしてしまったのは失敗だったな」


 すぐにここに父上たちが、やって来るだろう。

 屋敷は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。


「父上が来る前に幕引きにしてやる」

「じょ、上等だ! 闇属性の弱点は、光属性だ! ブヒャヒャヒ、それがもし本物の魔王の剣だとしても、光属性最強の聖剣デュランダルには絶対に勝てねぇ!」


 アレスは高笑いして強がった。

 光属性と闇属性の力がぶつかり合った場合、光属性は、通常の2倍の威力を発揮する。これを【属性相克】と言い、神の定めた絶対の法則だった。


 勇者に代表される光属性クラスが、魔族や闇属性クラスに対して圧倒的有利なのは、このためだ。


「くたばれ兄貴! これが勇者の力だぁあああッ!」


 追い詰められたアレスは、聖剣を振りかざして奥の手を出した。


「【ファイナルストライク】!」


 聖剣の光属性力を全開で放出し、邪悪な者を討ち滅ぼす必殺技だ。


「ああっ、カイ!?」

「カイ様!?」


 グリゼルダたちが、悲鳴を上げた。 

 視界を白く塗りつぶす圧倒的な光が放たれ、倉庫の壁に大穴が開く。


「悪いな……それは残像だ」

「はぁッ!?」


 俺はアレスの背後に立っていた。

 闇の魔法には、【瞬間移動】がある。半径500メートル以内を瞬時に移動する魔法で、魔王軍の幹部などはコレを使って、負けそうになると捨て台詞を吐いて逃げた。


 使用には少々時間がかかるので戦闘に応用するのは難しいが、俺は小声で密かに【瞬間移動】詠唱していたのだ。

 すべては、この瞬間のために……


「この世から消えろ、勇者の剣!」


 呆気に取られるアレスの聖剣に、俺は魔剣ティルフィングを叩きつけた。


 バッキキキキキン!


 その瞬間、聖剣が砕け散った。

 必殺技を使った直後は、聖剣に宿った光属性力が、一瞬ではあるがゼロになるのだ。

 1周目の人生で、何度か間近で【ファイナルストライク】を見て、知ったことだった。


 こうなれば、【属性相克】の効果も及ばない。

 ここを狙って最大の攻撃を仕掛ければ、聖剣を破壊できると踏んだのだ。


 俺の闇魔法でも同じことができただろうが、魔剣の攻撃力は、やはりすばらしいな。

 魔剣がまとう黒炎が、聖剣の破片を残らず消滅させる。

 

「俺様の聖剣、ぎゃああああッ!?」


 アレスは衝撃に吹っ飛ばされた。

 倉庫の壁を突き破り、地面を何度もバウンドして転がって行く。

 

「やったのじゃあああッ!?」

「グリゼルダ様!?」


 グリゼルダの歓声は途中で、悲鳴に変わった。倉庫が崩壊したのだ。

 俺は魔剣の一振りで、頭上に落ちてきた壁や木材を残らず消滅させる。


「ぬぁッ!? す、すごいのじゃ……」

「狙った物だけを消滅させる。早くもカイ様は、魔剣を使いこなしておられる!?」


 グリゼルダたちは、目をパチクリさせていた。

 魔剣は戦いを終えると、俺の手から消え去った。ずっと持っていなくて済むのは、ありがたいな。

 俺はアレスに近づいて見下ろす。

 さすがに勇者というべきか、アレスは死にはしなかったが、気絶していた。


 アレスが俺に危害を加えたために、呪いが発動し、ヤツの【光の紋章】は【暗黒の紋章】へと変化していた。


「これで勇者としてのアレスは、死んだも同然だな」


 勇者のクラスは、聖剣を使うことを前提にしたスキルを覚える。

 肝心な聖剣を破壊されてしまえば、ありふれた光属性クラスである【聖騎士】と、同程度の戦闘能力に成り下るだろう。


 例えアレスが俺たちを追って来たとしても、もはや脅威にはなり得ない。

 アレスは勇者としての特権も力も失ってしまったのだ。あとは勝手に苦しんで自滅していくだろう。


「聖剣を破壊して、勇者に勝ったのじゃ! 間違いない! カイ……いやカイ様こそ、新たなる魔王、わらわたち魔族の救世主なのじゃ!」


 グリゼルダが素っ頓狂な声を上げて、駆け寄ってくる。

 彼女の目は掛け値なしの尊敬に輝いていた。


「はぁ、俺が魔王……?」


 そもそも俺は人間だし、魔王はグリゼルダじゃないか?


『聖剣を破壊し、勇者を倒しました。おめでとうございます。歴代魔王の誰も成し遂げられなかった偉業です! 【イヴィル・ポイント】3000を獲得しました!』


 さらにシステムボイスが、ポイント獲得を伝えてきた。

●読者の皆様に大切なお願い●


「5秒程度」で終わりますので、ぜひよろしくお願いします。


ここまでのお話が、


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