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7話。2週目限定の隠しクラスをゲット

「あっあ~ん? 地獄を見るだって? ヒャハハハハ! バカが! 最強のクラスである勇者に、黒魔術師ごときが、かなうと思っていやがるのか!?」


 アレスは腹を抱えて爆笑した。


「土下座しろ、兄貴ぃいいいい! 『勇者アレス様に楯突いたことをお詫びします』と言え、ブヒャヒャヒャ!」

「こやつ……ッ!」


 聖剣から放たれる膨大な力に、グリゼルダが怯えた声を出した。


「ハッ、クソ吸血鬼のグリゼルダちゃんよぉおおお! てめぇは、もう必要ねぇ。兄貴の次は、お前らをズタズタ斬り刻んでやるぜ。正義の使者である勇者に逆らったことを、たっぷり後悔させてやるからな!」

「……言いたいことは、それだけか? ごたくはいいから、かかってこい」


 俺は手招きして挑発する。思い切りアレスを怒らせて、術中にはめるためだ。


「その自慢の聖剣を、へし折ってやる。最弱クラスの黒魔術師に完膚無きまでに負けたとなれば、恥ずかしくて、もう2度と勇者なんて名乗れないだろう?」

「なんだとッ!? おもしれぇ。もう兄貴なんざ、俺様の敵じゃねぇってことを、思い知らせてやるぜぇえええ!」


 アレスは怒りに顔を歪めた。

 実力者ほど、相手の力量を正確に推し量れるモノだが──どうやらアレスは俺の実力が、まるで理解できていないらしい。

 勇者と言っても、しょせんはレベル1だ。


 その時、突然、頭の中に無機質な声が響いた。


『2週目限定の隠しクラス【黒魔術師ダーク・スター】を獲得しました。1周目で【黒魔術師】を極めた者に贈られるクラスです』

「なに……ッ?」


 驚きに思考が止まる。

 これは世界の声、システムボイスだ。魔法やスキルを獲得したり、レベルが上がった時にそれを知らせてくれる。


「死ねぇやぁああああッ!」


 アレスが雄叫びと共に突撃してくる。

 俺はそれを闘牛士のようにヒラリとかわしながら、ステータスボードを確認した。

 【黒魔術師】のクラスにルビが振られて、【黒魔術師ダーク・スター】となっていた。


「【黒魔術師ダーク・スター】……?」


 俺が疑問を口にすると、システムボイスが答えてくれる。


『【黒魔術師ダーク・スター】は、あらゆる闇属性クラスのスキルが覚えられる隠しクラスです。

 闇属性クラスにふさわしい悪事を行うと、【イヴィル・ポイント】が貯まります。この【イヴィル・ポイント】と引き換えに、スキルを修得できます』


『魔族を助けて、勇者と敵対しました。おめでとうございます、すばらしい悪事です。【イヴィル・ポイント】1000ポイントを獲得しました! 現在、修得可能なスキル一覧を表示します』


 ステータスボードに現在修得可能なスキルが、必要な【イヴィル・ポイント】とセットで表示された。

 突然のことに戸惑うが、すばやく目を走らせる。強力なスキル順に並んでおり、最上位にあるのは…… 


 【魔剣召喚】……? 魔王の使う最強の魔剣ティルフィングを喚び出すスキルだって?


「なに、よそ見してやがるんだ、コラァアアア!?」


 アレスが怒鳴りながら、やたらめったに聖剣を振るう。

 ……遅い。まるで、問題にならない速度だ。

 俺はそれを余裕で、ひょいひょいとかわしながら、【魔剣召喚】スキルについて考察する。

 

 これはまさか、勇者の【聖剣召喚】の魔王バージョンか?

 【魔剣召喚】の 解説テキストには『使い手の闇の魔力に比例して、魔剣の攻撃力が増す』とあった。

 黒魔術師レベル999の俺にとって、相性抜群の武器じゃないか?


 なんだか良くわからないが、ものは試しだ。

 よし、こいつを修得してみるか。


『【イヴィル・ポイント】1000ポイントを消費し、【魔剣召喚】を修得しました。このスキルを発動するには、魔剣の名を喚んでください』


 身体が熱くなって、高揚を感じる。

 おおっ……これがスキルを得るという感覚か。いい気分だ。


「よし……来い、魔剣ティルフィング!」


 叫ぶと、手元に黒い炎をまとった魔剣が出現した。

 間違いない。これは魔王グリゼルダが愛用していた剣だ。


 地獄から噴き上がる業火を宿し、その一撃は破城槌にも勝る最強の武器。魔王の一振りで、数百もの屈強な騎士が生命を刈り取られていた。

 それが今、俺の手元に……


「ア、アレは……間違いない、父上の魔剣ティルフィング!?」

「なっ、まさかカイ様は、魔王様!?」


 グリゼルダとサーシャは仰天し、口をパクパクさせていた。


「なっ、なななんだ、その剣は……!?」


 魔剣の放つ魔力の強大さに、アレスも腰を抜かした。

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