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兄弟との関係

あれは、俺が5歳になった時だったな。


初めて皇城へ行くことになったのは……。


母上は来ずに、俺はカイゼルに連れられてきた。


母上が入れないわけではない。


他の連中が母上を入れないと言ったら、そんなことは父上が許さないだろう。


ただ、単純に顔を合わさないのがお互いのためということだ。


母上も皇城には興味ないみたいだしな。


というか権力とかどうでもよくて、単純に父上を愛しているだけだしな。


他の王妃は愛情と権力も欲している。


それが、余計に父上の不興を買うとは知らずにな……。


さらに皇帝ではなく、1人の人間として見てくれる母上にベタ惚れしていくわけだ。


そしてそれを見た王妃達は、嫉妬して母上を貶めようとするわけだ。


それが、更に父上の気持ちを遠ざけるとも思わずにな……。


なんていうか……救いようのないとはこのことだな。





そして俺は、カイゼルに手を引かれ入城をした。


まずは謁見の間に行き、父上に挨拶をする。


「アレスよ、よく来たな。ますますエリナに似てきて、嬉しい限りだ」


「ありがとうございます。父上も、ますます男ぶりが上がり、素敵ですね」


「おお、嬉しいことを言う。しかし、しっかりしているな。まだ5歳だというのにな。これは将来が楽しみだ」


周りの奴らは白けた感じだな……。

なるほど、母上が行きたくないわけだ。

ずっと、このような視線を向けられてはな。


「いえ、とんでもないことです。もし、そう見えたなら、母上の教育の賜物です」


「おお、そうかそうか。うむ、良きことだ」


「陛下、お時間の方が……」


「なんだ?もう、終わりか?……仕方ない。アレス、すまぬな。また、会いに行くからな」


「お気持ちは嬉しいですが、あまりご無理なさらずに。ですが、来てくれるのなら僕も母上も嬉しいです」


「おお……!ああ、わかった。では、下がるといい」


「はい、失礼します」


俺は来た道を戻る。

すると、ヒソヒソと話声が、聞こえてくる。


「媚びを売ってみっともない」


「所詮は出来損ないのくせに……」


「本当に陛下の子か怪しいものだ」


俺が子供だと思って、随分な言い草だな。

意味がわからないと思っているのだろう。


俺は背筋を伸ばし、毅然とした態度で謁見の間を後にした。


「アレス様、お見事でした」


「カイゼル、ありがとう。次は?」


「……王妃達はお会いにならないそうなので、これで終わりかと」


どうやら、顔も見たくないらしいな。

まあ、お互い様だ。


「……そうか。では、居心地悪いし、帰ろうか」


「御意」


その場を去ろうとすると、声をかけられた。


「おい!お前か!出来損ないの皇子は!」


こいつは見た目は6歳ほどで、金髪の少年だな。


「母上が言っていた、偽物の皇子だ!」


こっちは見た目は7歳ほどで、青髪の少年だな。


「お気をつけください。2人の皇子です。金髪の方が第1王妃、青髪の方が第2王妃です」


なるほど、あれがそうなのか。


「初めまして、アレスといいます。長兄のライル兄上と、次兄のヘイゼル兄上でよろしいですか?」


「な、なんだ!?大人みたいな話し方だぞ!?」


「お前みたいな偽物に、兄と呼ばれる筋合いはない!」


はぁ……これは友好関係を築けそうにないな。

適切な距離感で付き合うしかないか……。


「そうですか。それは、失礼しました。では、さようなら」


その場を立ち去り、城を出ようとする。

すると、違う声に呼び止められる。


「待ちなさい!」


はぁ……今度は、一体なんだよ。


「アレス様、第一皇女である、ヒルダ様です。こちらは少々お転婆ですが、まともな方なのでご安心を」


カイゼルがそう言うってことは、良い方なのか?

では、丁寧に対応するべきだな。


「これは、ヒルダ様でよろしいですか?」


「そうよ!ヒルダよ!歳は8歳よ!貴方は!?」


「初めまして。アレスといいます。年齢は5歳です。よろしくお願いします」


「アレスね!可愛い顔してるし、丁寧な話し方で良いわね!やっぱり、自分の目で見て正解だったわ!お母様の言うことなんて、当てにできないもの!」


なんというか、元気な人だな……まあ、でも悪い人ではなさそうだ。


「そうですか。こちらも素敵な姉上様のようで、嬉しいです」


「……なんて、素直で可愛い……!」


「うわっ!!」


いきなり抱きしめられた!


「よし!決めた!これからは可愛くお姉ちゃんと呼びなさい!」


「いや、それはちょっと恥ずかしいですね……。ヒルダ姉さんじゃ駄目ですか?」


「……仕方ないわね、我慢するわ!でも、たまには呼んでほしいわ!」


「……わかりました、善処します。とりあえず、苦しいのですが……」


「あら!ごめんなさい!じゃあ、これから仲良くするわよ!誰がなんと言おうとも、貴方は私の可愛い弟だわ!」


俺は、とても感激した。

なるほど……お転婆だけど、素敵な方……いや、素敵な姉上のようだ。


こうして、俺とヒルダ姉さんは仲良くなり、交流を持つことになった。


いや、懐かしいな……まだ3年くらいだが、俺も心を許してしまったな。


あの言葉に、俺がどれだけ救われたか知らないんだろうな……。


誰がなんと言おうともか……実際、母親から言われているだろうが関係性はそのままだ。


俺は、そんなことを思い出していた。






「あの!アレス様!」


「ん?あれ?皆いないね?」


「もう、終わりましたよ。みんな、教室に移動してますよ」


どうやら、思い出に浸りすぎたようだ。

いつの間にか、終わっていたらしい。


「そうか、わざわざありがとね」


「いえ!あ、あの!ありがとうございました!」


「ん?ああ、さっきのことか。気にしないで、自分が気に食わなかっただけだから」


「それでもありがとうございます!そ、その……こんな方もいるとわかって、嬉しいです」


「そうか、ありがとう。では、行こうか」


「え!?ご一緒しても良いんですか……?」


「ん?良いに決まってるよ。だってクラスメイトでしょ?えーと……」


「あ!ごめんなさい!私の名前は、セレナっていいます!」


「セレナだね。一応言うけど、僕の名前はアレス。これからよろしくね」


「は、はい!よろしくお願いします!」


「そんなに、固くならなくていいから……僕は庶民派の皇子だからね!」


「ふぇ?……えへへ、アレス様って面白い方なんですね」


「そうかな?至って普通だよ。では、行こうか」


その子と共に移動し、Sクラスの教室に向かう。


さて、さっきの連中はともかく……他の子とは、上手くやれるかな?








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