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出来損ない皇子の成り上がり~聖痕のない第三皇子に転生したけど、今度こそ家族を守るために最強を目指す~  作者: おとら@7シリーズ商業化
二章

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成長

父上が帰った後は、鍛錬の時間となる。


「カイゼル、今日もよろしく頼む」


「御意」


いつも通り母上達が見守る中、激しい打ち合いが始まる。


「シッ!」


「ハッ!」


剣と剣がかち合い、庭に音が響く。


「むっ……力が増してきましたな」


「成長期だからね。ただ、少し慣れるまで大変かも」


「ならば、ひたすらに鍛錬に励むことです。そして、身体で覚えてまいりましょう」


「ああ、それしかないよな」


俺に忠誠を誓ったカイゼルだが、特にこれといって変わりはない。

相変わらず稽古は熾烈を極めるし、歳をとって鈍るということもない。

ただ、一つだけ変わったことがある……。


「じいたん! おにぃちゃんをいじめちゃめなのっ!」


「い、いや、これはですな……」


「むぅ〜!」


「エリカ様……じゃあ、手加減を……」


「おい? カイゼル?」


「はっ!? ……エリナ様」


「はいはい、わかりました。エリカ〜、お昼寝の時間ですよ〜」


「イヤ! わたしはおにぃちゃんを見てるの!」


「あら〜、残念ねぇ……お母さんが一緒に寝てあげようかと思ったけど……」


「うぅー……ねるゅ……ママと寝るもん!」


葛藤したが、母上とお昼寝が勝ったようだ。

それはそれで、少々複雑である。


「ほっ……行きましたか」


「カイゼルは、エリカには甘いよなー」


「う、うむ……仕方ないのです。あんなに愛らしくては……」


「いや、気持ちはわかる。母上譲りの容姿に、父上からの金髪——間違いなく可愛い」


「それに関しては同意ですな。さて……続きといきますぞ?」


「ああ、よろしく頼む」


再び、剣と剣が激しくぶつかるが……。


「ここっ!」


隙をついて、左手に炎を纏い殴りかかる。


「むっ!?」


「受け止めるか……でも——下がったな!」


左腕で受け止めたことにより、そっちの動きが鈍るはず!

そこを、左側から攻撃する!


「むっ? やりますな……申し分ない魔法拳の威力、鈍った方からの攻撃……いやはや……楽しいですな」


「その割に、随分と余裕に見えるけど?」


攻撃を繰り出すが……決定打が入らない。


「ふむ、戦場では片腕が使えなくなることはよくありましたから。では——防御の方を試しましょう」


カイゼルから剣気が溢れ出す!


「……こい!」


「その意気は良し……一刀斬馬!」


馬を兵士こと斬るカイゼルの技だ!

……が、慌ててはいけない。


「明鏡止水……」


剣と剣が触れ合う瞬間、力の流れに逆らわずに、下へと受け流す。


「むっ!?」


そして、そのまま手首を返し、剣を叩き込む。

これが剣道の技である返し技だ。

俺の受け流す剣技とも相性が良い。


「どうだ!?」


「防御だけでなく、そこからの返し技……お見事です。合格点を差し上げましょう」


「よし!」


これは滅多にないことで、一ヶ月に数回しかない。

ただ、段々と比率は高くなってはいる。

なので、最近は俺自身も成長を感じている。


「アレス様!」


「おっ、セレナか。おはよう」


「お、おはようございます……」


何やら、最近のセレナはおかしい。

俺を見るとモジモジする。

いや、わかってはいるつもりだ。

俺は鈍感系主人公ではないし。

ただ、まだ十二歳の子にどう反応して良いかわからないだけで……。

あと、俺も少々戸惑っている……己の身体に。


「セレナ、ちょうど良かった。カイゼルを治してくれるかい?」


「別に平気ですが……」


「セレナの練習にもなるから」


「そういうことでしたら……」


「は、はい! かの者を癒したまえ——ヒール」


火傷の痕が消えていく……うん、スムーズな魔力の流れだ。

それに伴い、説唱スピードも上がってきたし。

何より……身体の成長が著しい……。


「アレス様?」


「ん?」


「カイゼルさん、行っちゃいましたよ?」


「あれ?いつの間に……」


「ぼっーとして、何を考えていたんですか?」


「いや、セレナのことをね」


「ふえっ!? わ、わたしですか……?」


言葉遣いや仕草に変わりはないが……。

まあ、端的に言うと——発育が良い。

身長こそ150程度だが、年齢の割に胸も大きいしお尻も……。

なので、全体的に女性らしい体型になっている。

これが、俺が戸惑っている原因だ。

和馬としては発育がいいとはいえ、十二歳に反応することには抵抗がある。

しかし、精通もしたアレスとしては抵抗がない。


「成長したね、セレナは。魔法の腕前も、風と水が中級クラスになったし」


「アレス様こそすごいです! 火属性のコントロールが出来てますもん! あの魔法の拳って、相当コントロールが難しいと思いますし」


「まあね、あれは苦労したなぁー」


自分の火で焼かれるわけにいかないし。

なので薄い膜を作り、その上で炎を纏う形になる。

その調整に、二年かかってしまった。


「わたしも負けられないですっ! フンスッ!」


身体と中身がアンバランスな感じだよな……。

いや、それもセレナの魅力の一つだ。


「いやいや、セレナは宮廷魔法士にも選ばれそうだし」


我が国の魔法を司る宮廷魔法士。

その審査は厳しく、最低でも中級クラスを使えることが条件だ。

さらには高い教養に、礼儀作法まで必要となる。

その宮廷魔法士長から、セレナはスカウトを受けたらしい。

もちろん、試験に合格する必要はあるが。


「えへへー、頑張った甲斐がありましたねっ!」


「魔法試験でトップだったもんなー。俺も負けたし」


「剣も極めようとしているアレス様に負けるわけにはいきません。これだけは、わたしの譲れないものです!」


「そうか……うん、俺も負けられないね。それで、ヒルダ姉さんは元気かい?」


貴族の礼儀作法や暗黙のルールは、ヒルダ姉さんが教えている。

当たり前だが、一流の教育を受けてきているからね。


「はいっ! 少し厳しいですけど……アレス様のこともよく聞かれますよ? 本当にこのままでいいんですか?」


俺と姉上は、とある事情により二年ほどまともに会っていない。

もちろん顔を合わせることはあるが、お互いに会釈程度で済ませている。


「良いんだよ、これで。寂しいけれど縁を切ったわけでもないし。今でも視線が合えばわかる、お互いを大事に思う気持ちに変わりはないと」


「むぅ……嫉妬しちゃいますね」


「クク……可愛いな、セレナは」


「ふえっ!?」


「心も強くなったし、単純に強くもなった」


「はいっ! 私がアレス様を守るんですっ!」


「おいおい、それはいくらなんでも……でも、ありがとう」


本当に強くなった……色々な意味で。


俺にも意見をはっきり言うようになったし、貴族達にも臆することもなくなってきた。


更には、クロイス侯爵家がセレナの後ろ盾になってくれるそうだ。


もちろん、セレナの家族も含めてだ。


最早、俺が守ってあげるなんていうのは……セレナに失礼だな。


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