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出来損ない皇子の成り上がり~聖痕のない第三皇子に転生したけど、今度こそ家族を守るために最強を目指す~  作者: おとら@7シリーズ商業化
一章

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母上とカエラの事情

 妹が生まれてから、早くも1ヶ月が過ぎていた。


 日々の成長や、お世話で忙しない日々。


 自主勉強やカイゼルとの稽古、セレナとの交流や魔法の修行。


 そんな日々を過ごしていたら、既に長期休暇も残りわずかとなっていた……。


 そんな時、帰郷しているオルガから手紙が届いたのだった……。





「長期休暇が終わる前に、うちに来ませんか……か」


「あら、良いじゃない。アレス、行ってきなさい」


「そうですよ!良いところですから」


「母上とカエラの故郷が近いんだよね。そりゃ——行ってみたいけど……」


「あー、うー」


 俺の横ではエリカが笑っている……可愛い。

 結衣の小さい頃を思い出す……。

 そういや……前世でも、俺が子供の時に結衣が生まれたんだった……。

 まさか……また、こんな幸せな気持ちを味わえるとはな……。


「エリカが心配だし……」


 この子は聖痕持ちだ。

 女の子だから継承権はないが、色々と面倒なことになるかもしれない……。

 もちろん、聖痕がないよりはいい。

 不貞を疑われる心配がなくなったということなのだから。

 あとは……俺が跳ね除ければいい話だ……!


「ふふ……兄バカね、アレスは。大丈夫よ、この子のことは。健康だし、元気な子で手間もかかる子ではないから」


「私にお任せください!カイゼルさんもいますし!」


「……そうだね、行ってこようかな。約束したし、一度は行っておきたいし……」


 そういえば……二人から親の話は聞いたことがない……。

 何となく聞き辛い空気を感じ、今まで聞くことはなかった……。


「ふふ……優しい子」


「え?」


「私達に、故郷について聞いていいのか迷っているのね?」


「あっ——アレス様には、話していませんでしたね……」


「あまり、楽しいお話ではないものね……もちろん、不幸な話でもないのよ?カエラが良ければ……聞かせてあげるわ」


「カエラ、無理はしなくて良いからね」


「お気遣いありがとうございます。アレス様は、この短期間で立派になられまして……私も、いつまでも卑屈ではいけませんね……エレナ様、大丈夫です」


「そう……まず初めに、私とカエラには親がいないわ」


「……それはどういう意味で……?」


「私は幼い頃、商人だった両親を魔物に殺されたわ。これは、特別珍しいことではないの。もちろん、悲しかったけれど……今は平気だわ。理由はわかるわよね?」


「僕や、エリカに父上。カエラや、カイゼルがいるからですね?」


「ええ、そうよ。両親が、私を逃してくれたけど……子供の私には、どこに行って良いかわからなかった……当てもなく彷徨っていたところを、旅の一座に拾われたわ」


「旅の一座……芸を披露するような方々ですか?」


「ええ、それで合っているわ。私はそこでお世話になり、雑用やお手伝いをしながら稽古をして、大人になる頃には踊り子として活躍していたの。そんな時、魔物に襲われてる旅人を発見したわ」


「それが、私なのですよ。父と旅をしていたのですが……突然魔物に囲まれてしまい、危ないところを助けて頂きました……その際に、父は亡くなりましたが……」


「そうなのか……それで、母上が面倒を?」


「ええ、そうよ。同じような境遇で、どうしても放って置けなかったから……」


「私は母を知りません。父もよくわからない方でしたし……」


「よくわからないとは……?」


「父は刀という特殊な剣を作っていました。代々受け継がれる秘中の秘の製法により……いつか神を殺す刀を作ると……そのために、人々から迫害を受けてきたそうです……」


「神を殺す……?女神をか……?」


 それは……異端だろうな。

 しかし……刀だと?

 あるのか、この世界に……。

 俺も図書館などで調べていたが、全く見つからなくて諦めていたものが。

 俺の身体や知識は、刀の方が圧倒的に向いているからな。


「ええ、そうだと思います。理由はわかりませんが、恨みがあると……エレナ様は、そんな得体の知れない私を可愛がってくださいました。私にとって……その、姉のような存在です」


「この子は、私の妹よ。得体の知れない人じゃなくて、私の大事な妹。アレスは?」


 なるほど……俺に黙っていたのは、それが原因か……。

 ならば、俺の言うことは決まっている。


「カエラ」


「は、はぃ……」


「君が何者かなど——どうでもいい。僕にとって、君は姉であり大事な家族だ」


「あ、アレス様……」


「ほら、言ったでしょ?うちのアレスは、そんなことで嫌いになったりしないわよ」


「はい……アレス様、ありがとうございます……」


「礼はいらないよ。だって——当たり前のことだから」


 それに……俺にも隠してることはある。

 今はまだ言えないが……覚悟が決まったら、いずれ伝えるとしよう。

 闇魔法やドラゴンのことを……そして——転生のことを。




 その後、暗い話を振り払うように、母上が話し出した。


「それでねっ!その旅の一座の公演をしていた時に、ラグナに出逢ったのよ!」


 まるで少女のようにキラキラした瞳で、母上は興奮している……。


「そ、そうなんですか」


「アレス様、お覚悟を決めてください。これは長くなりますから。今までは、私にしか言いませんでしたが、これからはアレス様も一緒ですよ?」


「ハハ……頑張るよ」


「あの人ったらね——私を見るなり……結婚してくれって!君しかいないって!キャーー!」


 ……結局、母上のノロケ話は延々と続いたのだった……。






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