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出来損ない皇子の成り上がり~聖痕のない第三皇子に転生したけど、今度こそ家族を守るために最強を目指す~  作者: おとら@7シリーズ商業化
一章

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新たな友達と父の気持ち

 それから幾日か過ぎ、母上のお腹も目立つようになってきた。


 カエラは付きっきりになり、お世話をしている。


 カイゼルは、なおさらのこと警戒を強めている。


 最近は襲撃もないみたいだけど、こういう時が一番危ないことを知っているのだろう。


 俺も注意を払いつつ、生活を送っている。


 何より、俺自身が強くなることで皆の負担が減る。


 なので、鍛錬にもさらに身が入るということだ。


 剣技も褒められるようになってきたし、魔力の総量も上がってきた。


 それに新しい魔法も覚えたし……今日は、その解禁日を迎える。





「ここなら平気かな……?」


 俺は1人で、ひと気のない場所に来ていた。

 闇の衣をまとい、誰にもつけられないように。

 ここは捨てられた廃墟で、近くに人が住んでいないことは確認済みだ。


「……よし……気配もなし……」


(出ておいで)


(キュイ?)


(外には出たくないの?)


(キュイ……キュイ!)


(出たくないけど、仕方ないって感じかな?)


(キュイキュイ!)


 すると……影から飛び出してくる!


「うわっ!?」


 そのまま胸に飛び込んできたが……。


「……おっきくなってない?」


「クゥー?」


 20センチくらいだったのに、30センチくらいになっている。

 やはり、俺の魔力を吸っているからか?

 それに、相当俺の影の中が気に入ったようだな。


「さて……君は、僕のなんだい?」


 嫌悪感や敵意も全く感じないし……。

 むしろ、親愛を覚えるし……どう見ても好かれている……。

 これのどこが……悪魔の化身なのだろうか?

 可愛いじゃないか……!


「キュイ?」


「……わかるわけがないよね。うーんと……僕のこと好きなのかい?」


「キュイー!!」


「そ、そうか……じゃあ、これからも一緒にいるかい?」


「キュイ!!」


「じゃあ、万が一の時のために魔法をかけておくね……ディスガイズ」


「クゥー?」


「窓を見てごらん」


「クゥー……キュイ!?」


「ハハ……どうだい?それなら、万が一バレても平気でしょ?」


 変装の闇魔法により、犬の姿に変えた。

 僕以外には犬に見えてるし、声もそうなっているはずだ。

 これなら街を歩いても問題ないし、万が一見つかっても問題ない。

 影に入るところや、出るところは見られちゃいけないけどね……。

 あと、僕の魔力次第だし……。


「キュイ!」


「よし!外に出て遊ぶか!」


「キュイーン!」




 廃墟を出て、皇都を走り回る。

 ほんとに、犬の散歩のようだな。


「楽しいかい?」


「キュン!」


「たまになら出してあげるからね」


「キュイー!」


 ……まあ、ほとんど寝てるみたいだし。

 俺の影が気に入ってるなら、そんなに気にしなくて良いかもな。




 散歩を終えて、人波から外れる。


「よし……人の気配はなし。だけど、念のために……闇の衣……」


 俺が意識して生き物に触ると、その対象も闇の衣に包まれる。


「キュイ?」


「さて……名前はどうする?僕がつけるかい?」


「キュイーン!!」


「うーん……何がいいかな……?ドラゴン、リュウ、タツ……色で言うと、クロ、コク……アレスと同じ三文字がいいかな……クロスとか……?」


「キュイー!」


「え!?それでいいの!?」


「キュイ!」


「じゃあ、今日から君の名はクロスだ。よろしくね、クロス」


「キュイーン!」


 新たな友達?が出来たな。

 いつまでかわからないけど、しばらくはお世話することにしよう。




 ———————————————



 ~皇帝陛下視点~


 アレスが部屋から去った後、俺はブリューナグ家からの手紙を読んでいた。


「さて……クロイスからの手紙は……アレスを褒め称えてるな……文にこそしないが、継がせないのか?と聞かれているようだ。アレスめ……奴ほどの男にそう思わせるとは……まあ、気持ちはわからんでもない……」


 アレスは優秀だ。


 他の兄弟とは、立ち振る舞いも何もかもが違う。


 俺とて皇帝として、父として、他の子供達を愛していないわけではない。


 ただ……母親が、というより、その父親の貴族が関わるのを意図的に阻止している。


 だから、中々教育に口を出せることがなく……ああなってしまった。


 俺も突然皇帝になったことで、そんな余裕もなかったということもあるが……。


 アレスは母親が良かったのか、真っ直ぐで良い子に育ってくれた。


 愛するエリナとの子だ。

 可愛くないわけがない……出来れば、人柄的にも皇帝を継いで欲しいが……。

 それは、この国では叶わぬこと……。




 ただ、今はそれでいいと思えるようになった。

 皇帝なんかロクでもない……ただのお飾りにすぎん。

 もちろん、俺とて踏ん張ってはいるが……。

 国を離れて継ぐ気もなかった俺には、味方が少ないからなぁ。


「ハァ——どうしたもんかね……」


「如何しましたか?」


「ゼノ、アレスをどう思う?」


 誰にも聞かれる心配のない執務室で問いかける。


「……人柄、実力共に——皇の器かと存じます」


「やはりか……だが、その場合……」


「ええ、間違いなく争いになります。国内にて……長い歴史の中では、聖痕が持たない人が皇帝になったこともありますが、そんなことは奴らは許しませんな……」


「だよなぁー……まあ、継がせないから良いけどな」


「おや?どういう心境の変化ですかな?」


「結界の揺らぎがある以上、国内で争ってる場合じゃないからな」


「そうですな……あと20年あれば違ったのでしょうが……」


「それもあるが……アレスには皇帝は勿体ないかと思ってな。そんなのに収まる器とも思えん」


「……クハハ!いや、失礼しました……しかし……そういう面もありますね」


 ……アレス、お前にはロクなこともしてやれない弱い父ですまない。


 だが、せめて……お前が強くなり、自分の意思で将来を決めて大人になる頃まで……。


 お前が不自由な生活を送らずにすむように、このろくでもない俺がなんとかしよう。


 あの大臣や侯爵家が何を言ってこようとも……。




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