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メンヘラさんとの180日間 ②

 何が起こるか解らなかった、何か起こったが、何か解らなかった。


 ……それがわたしの率直な感想だ。


 飲み会帰り、酔っぱらった愛する女性から受けたのは明確な憎悪と殺意のこもった一撃。顔の横をかすめた酒瓶は壁に大穴を開け粉々に砕け散り、わたしを混乱の渦中に叩き落した。最初から壁に向けたとはとても思えない。恐らく運が悪ければ投擲された酒瓶はわたしの頭部か顔面に命中していただろう。


 作品の説明欄に『冗談半分で書いた遺書』なんて入れているくらいなので、恥も外聞も全て犬に食わせて思いつくことをただただ正直に書いていこうと思う。


 こんな訳の解らない爆弾女、サッサと別れた方が良いというのが常識だろうとは解る。それでもわたしは脳裏のどこかで〝この爆弾女と共に歩むメリット〟がチラついていた。実際後のヒモ人生でもこの女性から得た者は大きい。


 女性からお小遣いをもらう方法、嘘のつき方、機嫌の取り方、男女の営みの機微、共同生活を送るうえで如何にルールを自分優位に刷新するか……などなど最低極まるものであるが。

kan

 要するにわたしは命の危険を覚えながらも【この女性と付き合っていた方がメリットが大きい】という判断で別れを切り出すことも無く惰性でお付き合いをすることにした。


 だが彼女の行動はエスカレートするばかりだった。ある時には家から出られないよう靴を隠された。あるときは「携帯の女性情報全部消せ!」と言われた(わたしは看護学生であり、そんなこと不可能)。酔って暴力を振るわれる機会も増えた。


 今思い返せば、そこに恋愛感情があったのか曖昧だ。ひょっとすればわたしは彼女を肉体関係を結べるATMか何かと勘違いして、暴力や暴言に耐えればお金がもらえるくらいにしかおもっていなかったのかもしれない。


 しかしそんな日々はある日終わる。看護学校の先輩に、現在の状況を相談したところマクドナルドで2時間説教を食らった。それは「お前、本当に彼女を愛しているのか?」という質問に小首を傾げてしまったからだ。


 如何に自分が人間として最低なことをしているか。愛しても居ない女性を抱くことの罪。今後も付き合うことの危険性など、様々な角度からある時は感情的に、ある時は理詰めで説教を受け、マクドナルドで号泣している自分が居た。


 このままではお互いが不幸になる。


 そう理解したわたしは意を決して彼女に別れ話を切り出した。


「他に好きな人が出来た。別れて欲しい。」


 とてもありきたりな、ありふれた別れの台詞だ。彼女がどのように爆発するか全く未知数であったが、その反応は……


「あっそ、わかった。」


 という軽いものだった。もしかすれば彼女からしてもわたしといることは苦痛だったのかもしれない。こうして2人目の恋は、わたしが振るという形で幕を閉じた。


 こうしてフリーとなり二十歳になったわたしに、人生を変える一本の電話が鳴った。それは高校時代唯一と言っていい女友達で、自分がオタクであることを隠さず話せる稀有な存在。高校時代は花火大会に行ったり食事をしたりしたが、恋愛対象としては見ておらずm高校卒業と共に疎遠となっていた人物だった。


「おーセパ久しぶり~~。携帯変えたから電話した~。今何してんの?」


「おー久しぶりー!今看護師目指して頑張ってるわ」


「本当?うちのねーちゃんも看護学生なんだよね、ちょっと話してみる?」


 この一本の電話が2人の男女の人生を大きく狂わせるなど、誰が想像できよう

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