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打算から始まった恋 ①

 17歳一人暮らし、熱中症寸前の身体を水道水で冷やし、夕食に8枚切りの食パンを焼くこともなく食べ、汗だくになった布団に大の字で寝転がった熱帯夜の日、脳裏に過ったのは何とも最低な、そして私の人生を大きく変える考えだった。


『あ~あ、誰か養ってくれないかな。ヒモになりてぇ』


 はい、最低です。そもそもネットスラングでいうところの陰キャでクラスの女子ともロクに話せていない、何なら友達も数えるほどしかいないようなわたしが何でこんなよく解らない思考に陥ったのか今考えても不可思議です。


 しかし即決即断、わたしはその日から【ダメ男でも好かれるための方法】を手探りで学び始めました。


 まず最初におこなったのは自分のアセスメントです。眉目秀麗の対義語みたいな容姿、前ならえでは常に腰に手を当てる係だったくらいの身長、17歳一人暮らしという明らかに訳アリそうな環境と、普通の女性ならば絶対に手を出さないだろうことは即日わかりました。


 なのでわたしに残された武器はトークだけです。話していて楽しいと思われたい、一緒に居て楽しいと思われたい。……ここだけ切り取るとピュアな男子高校生ですが、残念ながらこの時点で脳内に〝お金〟がチラついているあたり凄まじいクズです。


 その日以来、わたしは訓練のため高校の女子以外の女性と積極的に話をするようにしました(クラスの女子だと何だかいきなり性格変わって気持ち悪がられるのが怖かった)


 コンビニに行けばコンビニ店員の女性と新商品やおススメの商品について、本屋に行けば本屋の女性と、道が解らないふりをして街中で手芸道具店はどこにあるか?(札幌の人ならある程度誰でも知っている場所で、かつ「今手芸をはじめている(嘘)」と言うと会話が盛り上がる)


 店員で仲が深まり店内に誰もいないならばどんな理由でバイトしているのか、街中で誰かと連絡先を交換で来たならばその先に……。何事も試してみるもので、最初は10人いれば1人反応してくれれば御の字だった上記の作戦も、成功率が半分を超えようになってきました。


 とにかく母親以外としゃべったこともねーような人間が女性に慣れるため試行錯誤を繰り返しました。


 また、トークという事ではお笑いも勉強しました。当時放送されていたバラエティー番組を録画して、パソコンのメモ帳に書き写し、誰がどのタイミングで何のトークをしてどのような反応を示したかを分析したりしていました。


 そんな努力が実を結んだのか、わたしに念願の初彼女が出来ました。相手は22歳、わたしより5歳年上の保育士さんで、出会いは上記の試行錯誤で女友達となった方からの紹介です。


 最初の3か月ほどは恋人同士を楽しんでいました。しかし、わたくしの夢は【恋人を作る】がゴールではありません。そしてわたしは、遂に今後の人生で何度も発することになる台詞を当時の彼女に吐きました。


「ごめん!電気代が払えないんだ!5000円貸して!」

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