貧困と精神病は、わたしの友人だった。
わたしの生まれた家庭が異常だと気が付いたのは何時だっただろう。
父親が『もう一家心中しかない』と呟きながら、虚ろな目で断崖絶壁にむかい、車のアクセルベタ踏みしたときだろうか?
母親が『あんたを殺して私も死ぬ』と父親に包丁を突き付けたときだろうか?
弟が高熱で肺炎寸前の時に新興宗教にハマった母親が怪しい薬を投与しようとして、初めて自分の親を殴った時だろうか?
わたしの父親は健常者ではない。しかし健常者を詐称して定年まで働き、現在も就労している。疾患名は【双極性障害】。解りやすい言い方をすると躁うつ病ともいう。
自分の感情を自分でコントロールできなくなる厄介極まる精神疾患であり、躁状態のときは易怒性が強まり散財と浮気を繰り返し、鬱になれば布団から身動きもとれなくなり思考が自死に向かう。
そんな家庭であったため、家には常に金が無く、浮気に怒り果てた母親に連れられ10歳のわたしと4歳の弟ふたりをつれ家出をしたこともある。幼少期ながら鮮明に記憶が残っており、真冬の北海道で車中泊をしたため、弟と「寒いね」と抱き合っていたことを思い出す。
当時のわたしは兎に角、家が嫌いだった。そんなわたしは15歳、高校進学を機に、一人暮らしを始める決意をした。