↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/124

第六十話 魔獣大陸

第六十話 魔獣大陸


サイド 矢橋 孝太


『こちらは今フィンランドの国境線近くの街にいます。私は今安全な位置から報道をさせて頂いています』

『次々と戦車が街を走っていきます。街の住民は次々と避難を開始しており、既にほとんど人がいません』

『EUから部隊が送られてきたという情報もあり、あ、あれは戦闘機でしょうか。今上空を――――』


 以上が、モンスターの大軍がフィンランドに攻め込んでくる『一時間前』の映像とされている。


 結論から言うと、フィンランドは勝利した。


 迫りくるオーク、リッチ、ワイバーンの群れ。戦車による集中砲火を受けてもオーク達は突進をやめる事はなく、戦闘機はワイバーンに速度では勝っていても大差はつけられず、数の差で徐々に削られていった。

 その上リッチによる死霊魔法により、倒された兵士達がグールになったのだ。

 今まで死体を動かすだけだったのに、リッチは魔法で人の死体をモンスターに変えてしまった。

 あげく、そのグールの強さもダンジョンで見られるものとは段違いで、走る上に武器まで使ってきた。

 戦線は当然混乱した。

 戦車隊は半数以上が破壊され、戦闘機の部隊もワイバーンによる弾幕に思うように戦えず、遠くからミサイルを撃ってもリッチ達によって迎撃される。


 だが、そんな中戦果を挙げる者達がいた。


 EUの軍隊から送られてきたハンドラーによる特殊部隊である。

 彼らはAランクダンジョンの攻略もした精鋭部隊であり、EU全土から集められた選りすぐりだ。

 だが、数が足りなかった。彼らの総数は三十人弱。この場で戦力に数えられる使い魔もほぼ同数。

 彼らの周辺だけはモンスター達の死体であふれたが、それ以外までは手が回らなかった。

 だが、救世主が現れたのだ。


 突如として黄金の光がモンスターの群れと人間軍の間に、まるで境界線を作るように放たれた。それは、戦場を照らしてみせたのだ。

 放ったのは、白銀の騎士であった。全身に銀色の甲冑を身に纏い、手には黄金に輝く両手剣。

 金色の王冠を兜に融合させたその姿は、まさに『王』だった。

 そして、続々と王の周りに騎士たちが集まっていく。その数十一騎。

 騎士達が集うのを確認すると、王は剣を手にモンスターの群れめがけて突撃した。騎士たちもそれに続き、各々武器を振るっていく。


 圧倒的だった。


 おそらく騎士の一人一人がAランクかそれ以上。王に至っては霜の巨人やゴルゴーンに匹敵するかもしれない。

 彼らの活躍により、戦況は一気に人類へと傾いた。いや、むしろ彼らのみでモンスターの群れを追い散らしたと言っても過言ではない。

 そういった光景が、こっそり忍び込んだという戦場カメラマンが世界に発信した事によって日本にまで伝わってきた。

 フィンランドを守るため散った兵士達へテレビでは黙禱がされる中、あの王は、騎士達は何者なのかとネット上ではお祭り騒ぎになっていた。

 少し遅れて発信された情報から、あの王はEUを脱退したはずのイギリスに所属するハンドラーの使い魔である事が判明した。

 色々な目撃情報を集めると、イギリスから一筋の光が戦場まで飛んで行ったとか。偶然とらえたカメラには、白馬に跨った王が空を駆ける姿が映っている。

 これに対し、イギリス政府は『調査中』の一点張りで押し通し、フィンランドは好意的なものの、EU全体としては『これは明らかな恣意行為である。EUからのハンドラー部隊だけでもモンスターの群れを撃退する事はできた』と発表している。

 ネット上ではあの王の正体が噂されている。まあ、『イギリス』『王』『騎士』『輝く剣』という情報から連想されるのは、たった一人しかいない。


 アーサー王。まさか彼の王が使い魔として現れているとは、一体誰が予想できたというのか。


 フィンランドは守られた。だが、またいつモンスターの大群がやってくるかわからない。

 ロシア、中国だけでなく、いくつもの小国がモンスターを溢れさせている。日本は両国に近い上に、韓国なども溢れてしまっているので、いつモンスターが海を越えてくるかわからないのだ。

 そういった状態だからか、自衛隊は今まで以上に自衛官の募集をしている。テレビや駅前のポスター、自衛隊のCMを見ない日はない。

 自分は、どうしようか。

 そう思う時がある。天岩戸作戦の時は参加したが、自衛隊に入りたいかと言うとそれは違う。

 正直、今の自衛隊はかなり怖い所になっている。除隊を望む人が続出しているとか。

 モンスターが現れる前は、どちらかと言えば『災害で困っている人を助けたい』という理由で入る人も多かった。

 だが、今はいつ戦場に、モンスターとの最前線に立たされるかわからない。

 そして、そのモンスターの強さが、紅蓮以上という可能性すらありえるのだ。

 自分には、自主的に命を懸けて国を守ろうとは思えない。死ぬのが怖い。天岩戸作戦の時は、本当に例外だ。

 だから、自衛隊のCMにはいったテレビを、そっと消した。


 外国で大変な事が起きていても、自分はいつも通り学校にいく。

 ただ、変わった事もあった。


「なあ……」

「なんだ……」

「言わなくてもわかる」

「いや、それでも言わせてくれ」


 教室で滝沢と佐藤と集まり、小声で話す。


「滅茶苦茶居心地が悪い……!」


 教室中の視線がチラチラとこちらに向いているのだ。

 今、自分達はクラスの中心にいる。物理的な話ではない。そういう空気になっているのだ。

 最初、自分は部を立ち上げる事で伊藤や冒険者部と対等な状態を作り出し、いじめを回避しようと思った。

 だが、現状は思っていたのと違う。

 いつの間にか、伊藤のグループは教室の端に。そして自分達はこうして教室の中心みたいな空気になってしまった。

 当初の目的であるいじめの標的にされない。というのは達成できているだろう。だが、これは予想外だ。

 いや、本当は予想できたはずだ。部の力がここまで大きくなってしまうのも。

 勉強ができる奴、スポーツが得意な奴、金持ちな奴、顔がいい奴、話が上手い奴。人気者になる奴は色々いる。

 だが、今の人気者になる条件は『ダンジョンで活躍できる奴』だ。

 モンスターという脅威が前よりも身近になった社会。目に見えて力のある奴はそれだけで注目される。

 そして、ダンジョンを探索できる奴は金も持っている。その金で更に戦力を増していくのだ。

 気づいたら学校という狭い社会でも、冒険者というのは圧倒的なステータスであり、その中で一、二を争う実力を持っているのは自分とされている。

 そして、もう一人は正樹さんだ。彼と自分は同じ部活であり、仲がいい事も知られている。

 結果として、自分は学校内の派閥争いで決して無視できない存在になってしまった。


「いや、ほぼお前が原因だからな」

「俺らとかおまけだぞ」

「マジですまん」

「「ええんやで」」


 二人には申し訳なく思う。高校に入学する頃は、『冒険者アピールでAグループとはいかずとも人気者になるんだ』と思っていたが、いざAグループになったらこの有り様だ。

 AグループはAグループで大変なんだなと、教室中から感じる視線にため息をつきそうになる。


 今日は部活の報告もないので、まっすぐ家に帰る。


「じゃ、また明日な」

「おう、じゃ」

「グッバイ!」

「お前学校終わるとテンションが変になるよな……」


 変顔で手を上げる佐藤に呆れた視線を送りながら、十字路で二人と別れる。その直後、物陰から一人の女性が出てきた。


「すみません、矢橋孝太さんですか?」

「え?」


 綺麗な人だった。

 綺麗な長い黒髪を頭の後ろで束ね、優しそうで整った顔立ち。厚めの唇の近くにある黒子が色っぽい。

 スタイルも抜群で、スーツに強引に押し込まれた乳房に、キュっとくびれた腰。そして安産型のお尻がスーツのズボンを押し上げ、すらりとした長い脚も色っぽい。

 はっきり言おう。薄い本に出て来そうな美人さんが目の前にいた。


「少し、お話しいいでしょうか?」





読んでいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。


『異世界にチート転生して成り上がったら日本が来た件について』も小説家になろうで連載させて頂いておりますので、宜しければお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] また大人の都合に振り回されるのだろうか。力があるのだから助けてくれ的な。
[一言]  声をかけられただけでめちゃ観察するなぁ。ハニトラかわかんないのにそうみえてしまうやん
[一言] こんな状況なのに戦車の出撃に非難の声が上がるとかイカれてるなーと思ったらただの誤字だったw ハニトラかな? まぁ強くてお金持ちなんだから近付こうとする女の十人や二十人いてもおかしくないけど…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。