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第一話 変わったけど変わらない日常

第一話 変わったけど変わらない日常


サイド 矢橋 孝太


 一夜明け、翌日になってもテレビでは謎の使い魔とステータスの話題で持ち切りだった。

 あの後、どうにか母をなだめた後、紅蓮には一度消えてもらってから自分に知りえる範囲で説明した。父が帰宅した後にはそちらにも。

 両親には一度病院(頭のではない)に診てもらった方がいいのではないかと言われたが、それは断った。正直病院はテレビやネットを見たところ人でごったがえしているらしい。

 それも当然といえば当然だろう。昨日まで見えなかったものが見えたり、変な力が使えたりしたのだから。

 両親との話し合いが終わった後、自分のステータスとスマホの画面を交互に見て色々確認をしていた。

 ネットで知りえた範囲だと、両親の様に使い魔が出ない人の方が多く、出たのは三十人に一人ほどの割合。ステータスは皆出せるがレベルは一。使い魔にもステータスがありそちらとは表記が違う。スキルを使ったり使い魔を呼び出すと倦怠感におそわれる。スキルを持っていない人の方が多い。魔力の生成は一分間に作られる魔力量、貯蔵は最大MP、放出は魔法威力。使い魔を出しているとその間受けたダメージは使い魔が肩代わりする。

 以上がネットから得られた知識だ。皆この状態に熱狂し早速色々試しているのか、様々な情報が飛び交っている。もっとも、あくまでネット情報なのでどこまで信用していいのかわからないが。

 そして、ステータスのスキルの項目を試しに触れてみると、詳しい説明が現れた。そして、自分がどれだけ恵まれているのかもよく分かった。

 魔眼(予知)はその名の通り自分や味方の危機を予知する能力。見るからに使い勝手がいい戦闘用スキルだ。日常生活でも通り魔や事故を未然に察知できるだけでだいぶありがたい。

 次に世界樹の枝。これはなんか色々書いてあったが要は、常に万全の状態を維持する、状態異常無効、特殊攻撃無効、即死無効、常にエリクサー的なものを飲んでいる状態。といった具合だろう。もしゲームで出てくるとしたらラスボスや裏ボス専用スキルみたいだ。

 最後に、世界樹の加護。これは先のスキルの影響で発現したと思われる。詠唱『ブーステッドツリー』を唱えると発動。効果はバフと回復。かけた相手のあらゆる傷・病・毒・呪いを治癒、その上頑丈さと魔力を一段階上昇させる。

 どのスキルも当たりなうえに、三つも持っているのはかなり少ないらしい。そして、自分のスキルの確認をした後、紅蓮を召喚してみた。

 何をしたかというと、紅蓮のステータスを確認したのだ。

 ネットでの情報だが、使い魔のステータスも契約者(まだ呼び方は定まっていない)には見ることができるらしいので早速確認してみたのだ。


エレメントナイト 個体名:紅蓮

筋力:A 耐久:A 敏捷:A

器用:C 特殊:C

スキル パッシブ

・炎熱無効・全耐性

スキル アクティブ

・魔力変換(炎)(中)

コスト:5


 このステータスはかなりの破格らしい。掲示板には高くてもB、たいていがFやEらしいのだ。しかも紅蓮もスキルが三つある。といっても、信憑性は微妙だがステータスオールAだったり部分的にA+のものもいるらしいので、絶対的ではないようだが。

 パッシブのスキルはどちらも名前のままらしい。炎や熱は効かず、物理攻撃や魔法攻撃、呪いなど全ての攻撃に対して耐性を持っている。正直強い。

 アクティブの方は試そうとは思わなかった。火事になられたら怖い。

 コストは、おそらく召喚している間最大MPがその分削られるのだろうことが、体感としてわかった。

 昨日調べた内容を思い出しながら、眠気に負けそうになっている目でテレビを見る。どこかの大学の先生や芸能人がああでもないこうでもないと話し合いを続けている。

 ふと、寝る直前にみかけたネットの記事を思い出す。


『ダンジョンが現れた』


 正直、普段なら鼻で嗤うようなことだし、現在でもあまり信じられない。しかし、このファンタジーな状況なら、あるいは………


「本当に大丈夫?吐き気とか眩暈とか」

「大丈夫だって。行ってきまーす」

「いってらっしゃい……」


 昨日から心配そうな母を背に、学校へ向かう。ずる休みしようかと考えたが、本気で心配する両親を前にそれはあまりにもあんまりだろうと理性をフル動員して学校を選んだ。

 学校に向かう途中、一瞬先の未来が見えて咄嗟に横に跳ぶ。

 すると、足元に鳥の糞が落ちてきた。あのまま直進していたら肩にあたっていただろう。危なかった。学ランに鳥の糞はかなりダメージがでかい。


「ふっ」


 勝ち誇った笑みで飛んでいくカラスを見送る。もはやカラスの爆撃など恐るるに足らず。

 そうこうしているうちに学校に到着し、自分のクラスに到着する。


「おはよう」


 ぼそりと、一応礼儀かと思って教室に入る際挨拶する。もっとも、誰にも聞こえないぐらい小声だが。

 そのまま自分の机にカバンを置くと、友人たちの席へ向かう。


「おはよ」

「おう、はよぉ」

「よ。あれ、なんか痩せた?」


 友人二人、眼鏡をかけている方が佐藤優サトウ スグルで、痩せたと聞いてきた細身の方が滝沢武タキザワ タケシである。


「ああ、まあダイエットを」

「マジか。昨日までと違くね?」

「お前、無理なダイエットしてないだろうな」

「大丈夫だって。それより、なんの話してたんだ?」


 そう問いかけるが、昨日のことを考えれば内容は察しが付く。


「もちろん、使い魔やスキルの事だ」

「むしろそれ以外ないわな」

「だよなぁ」


 クラスの喧騒もいつもより大きい。誰もがファンタジーな異変に興奮しているのだ。ニュースではどこぞの国では宗教家がデモ行進をしているぐらいにはパニックになっている。


「なあ!誰かスキルとか使い魔持っているやついる!?」


 突然、なんの脈絡もなくそんな声が教室中に響く。声の発生元を見てみれば、Aグループのお調子者があげたものだった。

 クラスのあちらこちらで確認しあう声がする。それに対し、自分はそっと目をふせる。

 自分達はクラスの日陰者だ。そんな奴がスキルや使い魔を持っているといって日の目にでたらどういう扱いを受けるかわからない。正直に名乗り出る気など毛頭ない。

 ふと、二人の様子を横目で確認すると、佐藤と滝沢も自分と同じような対応だ。

 それに対し小さく違和感を覚えるが、それを遮るように声が響く。


「俺、もってるぜ」


 そう名乗りを上げたのはAグループのサッカー部だった。


「マジで!?どんなの?」


 わざとらしいぐらい驚いた様子のお調子者に、サッカー部は見せつけるように右手の人差し指をたてる。


「『アイス』」


 たった一言唱えるだけで、指先にゴルフボール大の氷が出来上がる。


「すげぇ!?魔法だ!」


 お調子者の声に続くように教室中から羨望の声が聞こえる。それに合わせて自分たちも称賛の声を送るのも忘れない。とにかくこちらは目立つわけにはいかないのだ。

 サッカー部の少年はその整った顔をクールなものに抑えようとしているが、口元や目元が愉悦に歪んでいる。だが、その表情を観察するよりも優先すべき事があった。

 それはこちらを観察している友人二人の、何かを言いたげな表情だ。なんせ、きっと自分も同じような顔をしているだろうから。


 放課後、三人で帰路につきながら、佐藤が声を上げる。


「な、なあ。ちょっと寄ってかないか?」


 少しどもり気味な声に緊張がうかがえる。


「寄るって、どこに?」

「西の神社の裏手」


 そこは人通りがないことで有名で、たまに教師から近寄らないよう注意されるところだった。

 普段なら理由をきくところだが、滝沢も自分もためらいなく頷いた。確かに、お互いが教室では言えなかったこともそこなら言えるだろう。

 歩いて十分ほどの距離を、数分でたどり着く。気づかないうちに皆早歩きになっていたのだ。


「お前らさ、教室でスキルとか使い魔とか聞かれたとき、ちょっと変な反応したよな」


 そう切り出したのは滝沢だった。その頬に汗が伝っているのは、疲れからではないだろう。


「そういうお前も、なにか隠してますってかんじだったよな」

「全員、事情は同じぽいな」


 三人で頷きあい、ほぼ同時に声を上げる。


「紅蓮」

「マリー」

「リザ」


 それぞれの背後に、異形が現れる。自分の背後には燃える鎧が、佐藤の後ろには膝から下が鳥の老婆『キキーモラ』が、滝沢の背には漫画に出てくる『リザードマン』が現れた。


「やっぱお前らも使い魔いたのか」


 気が抜けたようにそう声をもらす。ここまできて予想が外れていたら気まずいなんてものじゃない。

 それは二人も同じらしく、半笑いをうかべていた。


「にしても、矢橋の使い魔強そうだな。こう見るからに火属性的な」

「確かに、ゲームの中ボスとかにいそう」


 二人の発言に紅蓮は微動だにせず、ハルバートを持ったまま仁王立ちしている。なんとなく、他二体の使い魔を警戒している気がした。


「てか、滝沢の使い魔ってリザードマン?よくアニメに出てくる」

「正確にはリザードウーマンだな。よく見たら胸があるんだよこいつ」


 いわれてみれば、胸元を覆う革鎧が膨らんでいる気がする。

 リザードウーマン、リザと呼ばれた使い魔は小さく「ぐぇ」と鳴きながら、紅蓮を注視している。


「ほほ、お二人とも強そうな使い魔を連れていらっしゃいますな」


 そう言ったのは、なんと佐藤の使い魔だった。


「「しゃべった!?」」


 思わず滝沢と驚きの声を上げる。しかし、よく考えれば昨日テレビで見たろくろ首も流暢に日本語を話していたのだから、ありえないことではないだろう。


「ああ、俺のマリーは意思疎通ができるんだ」


 佐藤が自慢げに言って、老婆、マリーの肩をだく。


「ご主人様、私のようなものにそのような事は」

「そういうなよ、俺とお前の仲だろう」


 なんかやけに距離が近い佐藤とマリーに、冷や汗が浮かぶ。


「なあ、そういえば佐藤って熟女好きって言ってたよな……」

「ああ。『女は五十過ぎてから』とか言ってたけど……」


 二人して独自の世界に入っている佐藤から、半歩距離をとる。まさかガチの人だとは思っていなかったのだ。キャラ付け的なものだと。


「悪いな二人とも。俺たちもう『そういう』仲なんだ」

「恥ずかしゅうございます、ご主人様」


 まさか、すでに行くところまで行ってしまったのか。昨日の今日で。

 申し訳なさそうにしつつも勝ち誇った顔をする佐藤に、滝沢と自分はなんと返していいかわからなかった。

 これが美少女相手なら『羨ましい』『裏切者め』と罵るなり嫉妬するなりできたのだが、びっくりするほど羨ましくない。というかドン引きしている。心なしか紅蓮もひいている気がする。


「そ、そうか。えっとおめでとう」

「よ、よかったな。好みの相手に出会えて」

「ああ。二人ともありがとう!正直、両親に伝えても祝福はしてもらえないと思うからさ」


 その自覚はあったのか。


「さすがに初めての恋人が使い魔って、ひかれるかなって」


 違う、そうじゃない。


「そ、そういえば二人はスキルとかもっているのか?」


 なんとかしてこの話題から逃げねばならない。それを察してくれたのか、滝沢も大きく頷く。


「俺は『鑑定』ってスキルを持っているな。かわりにリザは持ってないけど」


 そのスキルの名前に目を見開く。自分もたいがい大当たりだったと思うが、まさか友人も当たりを引いているとは思っていなかった。


「まじかよ、俺はスキルもってないな。まあ、俺のマリーは『生活魔法』と『治癒魔法』つかえるけど」

「「魔法!?」」


 思わずその胸躍るワードに反応する。しかし、佐藤はそれについて今語る気はないようで、苦笑いで流す。

 二人の視線がこちらに向く。自分の番だ。だが、自慢をするような形になってしまうのが少々心苦しい。


「じつは、僕も紅蓮も三つずつスキルもってるわ」

「「マジで!?」」


 あの後、お互いスキルの説明をしたり、滝沢の鑑定を試したり、マリーの魔法をみせてもらったりしているうちに、すっかり日が暮れてしまっていた。

 いつもと違う非日常の産物であるスキルや使い魔。それに様々な感情をもって多種多様な反応をする人々。

 だがしかし、それでもいつも通り学校はあるし、クラスのパワーバランスは変わらず、友達と内々に騒ぐだけの時間。

 大騒ぎをし、世界の終わりだとか現代社会への光明だとか叫ぶのは、テレビの向こう側での話しだ。自分にもその周りにも大した影響はではしない。

 今はまだ、いつも通りの日常が続いていく。


 強いて変化をいうのならば、ペットのような存在だ。

 自室の隅で、マシュマロを頬張る紅蓮を特に何をするでもなく眺める。

 家についてから紅蓮に「そういえば何も食べてないけどおなか減ってたりする?」ときいたのが始まりだ。このあたりになると紅蓮とはだいぶ打ち解けた気がしていたのだ。普段ならこんな早く距離を詰めたりしないが、不思議となにかつながりのようなものを感じていた。

 その質問に対し、紅蓮は静かに首をふる。ネットやマリーとの会話で、使い魔に三大欲求はないにひとしく、せいぜい娯楽的な意味しかないという事は知っていたが、それでも気になったのだ。


「というか、紅蓮って物食べれるの……?」


 よく考えれば紅蓮の鎧のなかはどうなっているのか。漫画やアニメなら美女や美少女が入っているが、今まで喋らないことから、案外空洞ではと考えた。

 それに対し、紅蓮は兜の口のあたりをカパリと開くことで答える。


「開くの!?」


 予想外の対応に驚きながら、口の中をのぞくと、そこは頭の炎と同じ紅く燃えていた。

 どうやら、鎧の中身は炎で満たされているらしい。


「それで、食べられるの?」


 口を閉じながら紅蓮が頷く。それならばと思い、リビングに置いてあるマシュマロの袋を持ってきて、その中から一つ紅蓮に差し出してみた。

 紅蓮はそれを大きな手で器用につまむと、口の中へ放り込んだ。

 その次の瞬間、両手で頬らしき部分を押さえてその場でくねくねと動いたのだ。ちょっと怖い。

 その後マシュマロの袋ごと渡して様子を見てみると、マシュマロをつまんで頭の火であぶったあと、口のなかへ入れ始めた。焼きマシュマロが好きらしい。

 十個ほど食べた後、紅蓮は袋を返して消えた。見た目に合わず小食らしい。


「なんというか……うん。ペットを飼うとこんな気持ちなのかな……」


 紅蓮にマシュマロを買ってきて与えるのが日常の一部になった。




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佐藤ガチすぎわろた
この作品をある程度書き換えたのがバケツヘルムかな? 向こうの方が友達の変態さが異常だったけど・・
[一言] おかしい、友人がTSしていない。 さてはたろっぺさんの偽物だな?
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